
唐橋の東詰め、橋の袂に
白い大きな鯉が、一匹住んでいる。
去年の秋口、顔なじみのジャックのおとうさんと、
黒いレトリバーを連れた女性が橋の袂で、川を覗きながら
話し込んでいるところに出会った。
「最近は、見ないねぇ。」
「餌をやる人もいるけど、そっとしておくのが一番なのに」
「ずっと見てないなぁ。。。あんたは、最近見たかい?」
「へ?」
尋ねられても、目を見開いて薄笑いのわたし。
お二人が、かわるがわる教えてくれるところによると
大きな白い鯉が時折姿を見せるという。
「主のような、立派な鯉なんだわ。」
まれな出会いを楽しみにしていて、鯉釣りの仕掛けや
釣り人をハラハラしてみながら、時折、
目撃情報を確認しあって、白い鯉の安否を
気遣っているようすだった。
以来、私も意識して川面を毎朝のぞく。
そうして、かなりな頻度で、その姿を見かけている。
大きめな魚が川岸に打ち捨てられているたびに
朝からひやりとし、多きさや色、背中の黒い柄
など特徴の差異を見て胸をなでおろす。
最近、私はこの鯉を『乙姫』と名づけた。