三人の社会学者による、中国論。刊行は2013年2月なので、まだ賞味期限内である。
時事問題をあつかっている著作は、その国の政治方針や元首や政治的な指導者が変わると、著作物としての意味がたちまち薄れてしまうことが多い。
本書は時事的なネタをあつかってはいるけれど、社会学的な観点から「中国とはどんな国家なのか」に照準を合わせて、本質論を展開しようとする、なかなか野心的な鼎談となっている。
日本人はお隣の大国なのに、中国を誤解していたり、必要以上に脅威を感じていたりする。
それに対し、現在の日本をリードしている俊英社会学者三人が、長時間討論を繰り広げていてなかなか読ませる。
鼎談は4部構成。
1. 中国とはそもそも何か
2. 近代中国と毛沢東の謎
3. 日中の歴史問題をどう考えるか
4. 中国のいま・日本のこれから
この見出しを見ただけで、どんな本なのか、見当がつこうというものである。
小平の改革開放路線が見事に軌道にのり、21世紀に入って、中国は世界NO.2の経済大国に躍り出た。首位のアメリカを抜くのは、時間の問題とみられている。
そういうお隣の中国に対し、日本人はあまりに無理解である。
そのことは、わたしも痛感するところであったが、本書からは数々の貴重な示唆をいただくことができた。
座談をリードしているのは、年長の橋爪さん。妻が中国人ということもあって、かなり以前から中国社会への、社会学者としての関心をもちつづけていたという。この三人は個人的にも親しく、中国問題に関し、ある意味、師弟関係にあるようである。
ごく大雑把にいって、19世紀は大英帝国が世界の覇権国に地位にあった。そして20世紀はアメリカが、その地位を継承。
そういった意味で、GDPが数年後にアメリカを抜き、世界NO.1となる中国が、21世紀の覇権国家となるのかどうか?
わたしだけでなく、多くの日本人が、それを恐れているのではないだろうか。ソ連が消えたいま、日本の国防はこの中国と、北朝鮮を「仮想敵国」として構築されている。
現在は沈静化しているが、尖閣諸島に対する対応をあやまると、反日デモが再燃する懸念がある。「歴史問題」は、依然として片付いてはいないし、安倍首相の靖国公式参拝によって、あらたな火種となって、日中関係は政治レベルでは冷え込んだまま。
その両国が、どうしたら理解しあえるのか?
本書にはいろいろな提言とヒントが盛り込まれてあり、かなり踏み込んだ論議がなされ、興味深いものがあった。
社会主義的市場経済というのは、いわゆる西洋型社会モデルの定義からははみ出してしまう。中国にいずれ民主主義革命が起こり、米国や日本が期待するような国家へと脱皮していくのかというと、この三人の学者の意見は否定的。
近代化に乗り遅れ、列強の餌食となっていた大帝国、中国が空前の経済成長をとげたことに対する率直なおどろき! しかも共産党の一党支配なのが、なんともふしぎなのだが、それが中国の特異性なのである。
そういうことを理解したうえで、より円滑な、国政レベルでの条約が、いつかむすばれるのだろうが、もしかしたら、米中交渉が、機先を制する可能性だってなくはない。もたもたしていると、日本はおいてきぼりを食わされるかもしれない。
しかし、安倍総理も、彼をささえている中道右派の政治家も、そして多くの一般民衆(わたし自身もふくめ)も、自国のプライドにこだわっている。
現在が21世紀の日中関係の重要な過渡期であることは疑いない。
本書を読んで、わたし自身も、これらの諸問題をもう一度考え直したくなった。それだけの充実した内容をもった鼎談である。
☆☆☆☆(5点満点)
時事問題をあつかっている著作は、その国の政治方針や元首や政治的な指導者が変わると、著作物としての意味がたちまち薄れてしまうことが多い。
本書は時事的なネタをあつかってはいるけれど、社会学的な観点から「中国とはどんな国家なのか」に照準を合わせて、本質論を展開しようとする、なかなか野心的な鼎談となっている。
日本人はお隣の大国なのに、中国を誤解していたり、必要以上に脅威を感じていたりする。
それに対し、現在の日本をリードしている俊英社会学者三人が、長時間討論を繰り広げていてなかなか読ませる。
鼎談は4部構成。
1. 中国とはそもそも何か
2. 近代中国と毛沢東の謎
3. 日中の歴史問題をどう考えるか
4. 中国のいま・日本のこれから
この見出しを見ただけで、どんな本なのか、見当がつこうというものである。
小平の改革開放路線が見事に軌道にのり、21世紀に入って、中国は世界NO.2の経済大国に躍り出た。首位のアメリカを抜くのは、時間の問題とみられている。
そういうお隣の中国に対し、日本人はあまりに無理解である。
そのことは、わたしも痛感するところであったが、本書からは数々の貴重な示唆をいただくことができた。
座談をリードしているのは、年長の橋爪さん。妻が中国人ということもあって、かなり以前から中国社会への、社会学者としての関心をもちつづけていたという。この三人は個人的にも親しく、中国問題に関し、ある意味、師弟関係にあるようである。
ごく大雑把にいって、19世紀は大英帝国が世界の覇権国に地位にあった。そして20世紀はアメリカが、その地位を継承。
そういった意味で、GDPが数年後にアメリカを抜き、世界NO.1となる中国が、21世紀の覇権国家となるのかどうか?
わたしだけでなく、多くの日本人が、それを恐れているのではないだろうか。ソ連が消えたいま、日本の国防はこの中国と、北朝鮮を「仮想敵国」として構築されている。
現在は沈静化しているが、尖閣諸島に対する対応をあやまると、反日デモが再燃する懸念がある。「歴史問題」は、依然として片付いてはいないし、安倍首相の靖国公式参拝によって、あらたな火種となって、日中関係は政治レベルでは冷え込んだまま。
その両国が、どうしたら理解しあえるのか?
本書にはいろいろな提言とヒントが盛り込まれてあり、かなり踏み込んだ論議がなされ、興味深いものがあった。
社会主義的市場経済というのは、いわゆる西洋型社会モデルの定義からははみ出してしまう。中国にいずれ民主主義革命が起こり、米国や日本が期待するような国家へと脱皮していくのかというと、この三人の学者の意見は否定的。
近代化に乗り遅れ、列強の餌食となっていた大帝国、中国が空前の経済成長をとげたことに対する率直なおどろき! しかも共産党の一党支配なのが、なんともふしぎなのだが、それが中国の特異性なのである。
そういうことを理解したうえで、より円滑な、国政レベルでの条約が、いつかむすばれるのだろうが、もしかしたら、米中交渉が、機先を制する可能性だってなくはない。もたもたしていると、日本はおいてきぼりを食わされるかもしれない。
しかし、安倍総理も、彼をささえている中道右派の政治家も、そして多くの一般民衆(わたし自身もふくめ)も、自国のプライドにこだわっている。
現在が21世紀の日中関係の重要な過渡期であることは疑いない。
本書を読んで、わたし自身も、これらの諸問題をもう一度考え直したくなった。それだけの充実した内容をもった鼎談である。
☆☆☆☆(5点満点)