二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

つげ義春と私小説をめぐるよしなし事

2019年03月12日 | 小説(国内)
   (「SPECTATOR」41号の特集ページ)


マンガというと、わたしは手塚治虫、つげ義春あたりしか知らない。
つげさんは「私小説の手法をマンガ表現に取り入れた天才」といわれる。
ちくま文庫、新潮文庫で愛読してきた。先日は本屋の店頭でSPECTATOR(41号)という雑誌がつげさんの特集号を出しているのを“発見”したので買って帰った。

暗くてナイーヴでしかもディープな貧乏生活がつげさんの持ち味。
川崎長太郎なんて作家がいたのはつげさんに教わったようなものだ。

美しい宝石ではないが、ゆがんだ真珠だって、やっぱり真珠なのだ。その輝きをめでるファンは、いまでも存在する。
だから、こういう雑誌で特集が組まれるわけだ(^^)/ 





今年は野鳥撮影には一度も出かけていない。そのかわり、ヒマさえあれば本の世界にひたり込んでいる。
私小説がもっているいわば“負の魅力”。
昭和という時代の陰の部分が、・・・そのあえかな生活実感が、つげ義春や川崎長太郎の世界の持ち味。

葛西善蔵もそういう私小説作家の一人。
私小説なんて、いろいろな人に叩かれてとっくに死滅したと、漠然と思っていた、わたしも。
ところが、車谷長吉さんや西村賢太さんが、その衣鉢を継いでいる。エンタメではない。むしろ、そういう世界に背を向けてとぼとぼ歩いてきた人たちの、“追いつめられた”どんづまりで、かろうじて踏みとどまっている、負け犬の世界なのだ。












その犬が、うなったり吠えたり、うろうろしたり、涙にくれたりしている。そのくせ「生活保護者にはならねえぞ」という意地がある。崖っぷちに立たされている人の眼に映じるもの。
そこから、耳をすますに足るものが聞こえてくる。荷厄介なエゴイストだから、周囲からは断罪される。つらいが、それが彼らのライフスタイルなのだ・・・といえなくはない(・_・?)

不動産屋をしているわたしの生活の周りには、その種の人間がかなりの数、存在している。しかし、彼らの大半は生活保護者。生活保護者になれば、家賃は自治体が負担してくれる。
「取りっぱぐれがなくていいや」といって、彼らを受け入れてくれる大家は多い。
だけど、どーなんだろう? 
そこにある光と陰を、彼らの生活ぶりを、わたしはつぶさに見ている。小説を、10編や20編書くだけの材料がころがっている。

・・・つげさんの特集号をぱらぱらとめくりながら、「何か書いてみようか」と、近ごろ思案にくれている。

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