(2)2009.1.30(しっかりサインも書けた日)
朝、家を出て車で高速を走る。Wの里に着くとちょうどお昼時になる。
母は食堂にいた。トレーに乗せられた皿やお椀は半分空になっている。
なぜか私が幼少の頃、虚弱で入院した病院の食事を思い出した。
付き添いの母が、私と一緒に病院食を食べていた。私の椀は白粥なのに、母のは白いご飯だった。それが羨ましかった。
母がそっと、箸でご飯をすくって私の椀に入れてくれた。そんな記憶が脳裏をよぎったのだ。
食事が済んで、部屋に帰ってから、
「久しぶりに絵を描いてみるか、おばあちゃん」
私は何気ない感じで母に持ちかけた。
「そうやの」思いがけない、いい返事が返ってきた。
マーカーとスケッチブックを渡すと、すぐに手が動き出した。気持ちが明るいのだ。紙の上にぎこちなく硬い線が震えながら動いていく。
線を引くということにまだなんの意味も見つけられない母の心が伝わってくる。
「分からなくてもええんやで、」
何度もそういい続けてきた。
そして今日、母ははじめて日付と名前をしっかりと書いた。
線を引き始めて、一月目だった。
出来ないことを悔やまずに、出来ることを喜んで、母は今新しい生き方を始めた
私にはそんな風に思えて嬉しい。
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(リハビリお絵かき)はこんなふうでした
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毎週土曜日に養護老人ホームに行って、1時間ほどお絵かきをする。
最初はなかなか手が動かなかったが、少しずつ慣れてくるようでした。
無理に描かせようとはせず、母の手が自然に動くのを待ちました。
ベッドの上で描いたり、
ベッドの縁にすわって描いたり、毎回こんな感じで線を引いていました。
相変わらず無趣味で、毎日自分だけで過ごす時間と言えば、ベッドの上で座っているだけ。この線引きだけが、唯一母の意欲が働く時のように思えました。
意志が動き出すと、顔つきが変わるというのは本当です。
線の中への色付けが「 これは何を表す 」っていうメッセージみたいですね。
お母さまの意欲が働く絵画の世界・・ここに誘導してあげた、のしてんてんさまは凄いと思いました。
確かに人の顔に見えますよね。
本人は何を描いたのか分かりませんけど、ピンクの色が口に思えると、その上に鼻があって、ひょろひょろした垂れ下がる線が目にかかる髪の毛のような
その人から離れて、「ぺ」の横にあるピンクの涙?
私にはあかんべーをしているように見えるんです^よ^