古本屋の100円コーナーで「十五少年漂流記」をみつけ、懐かしさに手に取ったら、表紙絵も気に入って購入。
小学生の時とおなじく、ハラハラドキドキしながら一気に読んだが、おっさんになった今でも面白い。表紙絵の帆船が、原作通りに縦帆帆船「スクーナー」タイプであることも心憎い。少年たちが漂着して2年間を過ごす蝶々形をしたチェアマン島が、「未来少年コナン」の「のこされ島」に酷似していることは気付いていたが、毒虫や毒ヘビも生息しておらず、アメーバ赤痢もデング熱もなく、四季のある高緯度の孤島であるのは、著者のヴェルヌが子供でもサバイバルできる環境を考えた結果ではないかな???
しかし、ロビンソン・クルーソーは何度も映画化されているのに、なんで「十五少年漂流記」は日本以外で映画化されていないんだろ?と思っていたのだけど、後書きを読んで納得。
ヴェルヌの唯一の欠点は、文章に正確を期すあまり、緻密すぎてくどい所があり、主人公が少年たちなのに子供向きの読み物ではなかったと同時に、大人の読者の共感も得られず、また原題の直訳が「二ヶ年の休暇」と読書の興味をひかなかったこともありフランス本国では売れず、英訳版も同様だったので英語圏でも売れなかったので、本書は欧米諸国であまり知られていないのだそう。
ただし、チェコの天才映像作家カレル・ゼマンの「前世紀探検」などの冒険映画などには、アイデアが盛り込まれていると思う。
ところが明治期の日本では、主人公の少年たちを前面にだした「十五少年冒険譚」と冒険心をくすぐる題名をつけ、歯切れのいい漢文調の端的表現で翻訳したことでベストセラーになったのだとか。
「狭い日本にゃ住み飽きた」とばかりに、海外雄飛を夢見初めていた世相も後押ししたのではないか?
版を重ねて「十五少年漂流記」とタイトルが代わり、年少者でも読みやすい文章に手直しをされ、不朽の児童文学作品としてロングセラーとなった。本書はフランスの原書と英語版を対比させながらの、波多野寛治さんの新訳版。
「未来少年コナン」「漂流教室」「機動戦士ガンダム」なども、設定をかえた「十五少年漂流記」ではないか?小学生の頃の自分と対話しているような、楽しい読書であった。