勾玉の注文にきた名古屋の女性が、輪島漆器の展示販売を申し出てくれた。
工房でみた勾玉カンザシも「かわいい」から売りたいと言われて、漆器ともども発送完了。展示販売会で初めてヒスイ加工品も売ってもらえる訳で、実物が多くの人の目にふれる機会となるので非常にうれしい。
名古屋は金持ちが多いと聞くw
だから漆器も滅多にでない高級品をおくった。同じ朱色でも高級品は彩度を抑えた朱漆。
木箱からして蓋の把手を黒柿(くろかき)という銘木を扇形にした凝った意匠。
一般の「家具膳」よりシックな色合いで、椀類も通常の漆器よりかなり薄い造りをしている。50年ほど前の輪島を特集したNHK番組が再放送され、塗師の年季明けの祝いで黒い漆器膳がつかわれる場面があり、もしかしたら黒い漆器膳は冠婚葬祭以外の仕事絡みのめでたい席で使われたのかも知れない。
こういった高級品は旦那さんと呼ばれていたような大きな商家からしか出ず、シックで軽量だから年配の方には人気がある。
吸物わんだろうか、蒔絵の図案は外側は竹の葉が見事に描かれていた。葉のうえの銀色の粒は朝露か?
蓋をあけたら内側に松葉と梅が描かれていて、全体で松竹梅を意匠しているらしい。
この椀だけは漆黒ではなく、「溜塗り」という技法だろうか、赤味が透けてみえるような透け感のある黒に塗られていて、こういった情報も販売先には伝える。
ボランティアで輪島漆器に関わるようになり、伝統工芸の深淵を垣間見て怖さを感じる時がある。
ゴミとして捨てるなら売って金にしないともったいないとモノ売りで終わっては唯物論に過ぎる。最も大事な内実が見落とされているのでは?
忘れ去られた輪島漆器をつかった「能登のおもてなし文化」を、復活は叶わなくとも思い出してほしいのだ。「おもてなし」に贅を凝らしたご先祖のモノガタリ、それに応えた漆器職人のモノガタリ。
それらモノガタリが文化や歴史の内実というもの。