映画「戦争と人間」には、「戦争を食い物にする死の商人」として伍代財閥が出てくるのだが、現在の日産自動車や日立に繋がる長州財閥系の「日産コンチェルン」がモデルだそう。
「日産コンチェルン」の創業者は鮎川義介。長州閥の大物の井上馨の甥。
「日産コンチェルン」を深掘りしたら、ナチスドイツが迫害したユダヤ人難民を満州に移住させる計画の中心にいたことがわかった。その理由は「満州事変」により独立国家「満州」をつくったが、日本の傀儡政権であると世界中から批判されて運営資金がままならず、ユダヤ系金融家からの融資を取り付けるためだったそうだ。これは陰謀論などではなく史実。
日露戦争で破産しかけた日本が、アメリカのユダヤ系資本家のヤコブ・シフ(ジェイコブ・シフ)から戦時外債の50%を引き受けもらい、辛うじて戦費調達できて勝利した史実の二匹目のドジョウをねらったものであるらしい。
日露戦争時の日銀副総裁だった高橋是清は、破産寸前の国家財政から戦費調達のために欧米の金融家を東奔西走して融資を持ち掛けたが、どこも日本の敗戦を予想して相手にされなかった。しかしロシア国内で弾圧されていたユダヤ人に救うために打倒ロシアを目論むヤコブ・シフとロンドンで出逢い、利害が一致してタッグを組んだ訳ですね。
ヨセフ・シフさんは、日露戦争に貢献した功績で勲一等旭日大綬章を叙勲している。
ユダヤ系金融家から融資を受けるこれら一連の活動は鮎川義介が発案し、内閣で承認もされた国策となり、俗に「河豚計画」と呼ばれる。この時は陸海軍にもユダヤ問題専門班が設置され、陸軍の通訳が戦後にトンデモ説の大物として有名になる酒井勝軍だったようだ。この辺りの事情から、日露戦争~昭和初期までの間にふってわいたように出てくる日ユ同租論や、酒井の青森のキリストの墓の発見となるようだ。
イスラエル人の知人から「イスラエル人とは国籍を表し、ユダヤ人とはユダヤ教の信者」と定義を教えられたのだが、日本人の祖先がユダヤ人とするならば、八百万の神がおわす多神教の日本の宗教観に一神教のユダヤ教が矛盾なく存在できるのか?
明治期はそれほどでもなかった天皇の神格化が進み、八紘一宇や神武皇紀といった皇国史観により、民族優越思想に彩られた全体主義国家になっていくのが昭和初期で、八紘一宇を実現するために関東軍の参謀の石原莞爾が中心となり自作自演でおこしたのが昭和6年の満州事変。
その二年後の1933年(昭和8年)に日本は国際連盟脱退をして孤立化していくが、長州系財閥と軍拡の関係や、国家神道と日ユ同租論が満州事変から太平洋戦争に至る「15年戦争」に果たした役割などを深掘りしたら面白そうだ。
そういえばロシアのウクライナ侵攻でも、ユダヤ金融家の陰謀論やネオナチがどうのというプロパガンダが拡散されているが、本当のことは後年の歴史家が調べてくれるでしょう。
振興財閥の満州の出先機関には、三国連太郎さん演じる得体のしれない粗暴で冷酷な男がいるのだけど、この人物の説明が一切ないのに「なにがしかの犯罪がらみで日本にいられなくなった満州浪人・金のためならなんでもする・正社員ではなく金で雇われている鉄砲玉的存在」といった人物像が自然と浮かんでくるから恐れ入る。ロン毛の三国さんは息子の佐藤浩市さんに似ているのネ。
ちなみにこの映画ではロシア人スパイが三国さんに「黄色い豚」と呼んでピストルを突き付けているが、日本人を「黄色い猿」と侮蔑した最初は、日露戦争時のロシア皇帝ニコライ二世であったと、「坂の上の雲」に書いてあったような?
今時の日本映画なら、顔に力を入れて憎々し気な表情と大声を張り上げたセリフで悪事を働くところだが、三国さんも軍人たちも淡々と残虐なリアリティさが流石の山本薩男監督。
この映画、軍人などは実在の人物がたくさん出てくるが、他の登場人物もモデルがいそうだし、原作者の五味川順平は日産コンチェルン傘下の満州の鉄工所で働いていたことがあるそうで、原作を読む必要が出てきた。
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