「アースダイバー神社編」がトンデモ本だと投稿したら、予想外の反響があり、さる研究紙から寄稿をとのお声がけ。
そこで資料集めとして、海にむかって現地を撮影したのが最初の写真。
中沢氏が「胎児の形をした渚の配石遺構」と書いている場所が中央に4本の短い柱が建っているところ。500m先にある海の手前に標高18mの海岸段丘がそびえており、ここが渚だろうか?
青い勾玉は、縄文晩期の胎児形勾玉モデルで、これを中沢氏は「生々しい生き物の形」と書いている・・・。
こちらは弥生中期の北部九州の定形勾玉モデルで、こっちをイズモでつくられた定形勾玉として、キティちゃんのようにかわいいと書いているが、縄文の胎児形と弥生の定形のどっちがキティちゃんだろう?これは個人の価値観によるが・・・。
そして下段右端が、間延びしたコの字をした古墳時代の山陰系の勾玉モデルで、こちらは玉類243点をつなげた「大首飾り」のなかの赤瑪瑙勾玉。前期の勾玉らしく丸みがあるが、中期以降は扁平で雑なつくりになるので、私は博物館からの注文でもなければつくらない。素材も赤メノウや青碧玉であってヒスイではない。
以上をみても、中沢氏が「アースダイバー神社編」で書いていることは、脳内イメージに都合よく史実を切り張りしてつくった夢物語だとわかってもらえるだろう。
誤解してほしくないのは、私は歴史解釈は自由でも歴史と個人の歴史観を混同してはいけない、と思っている。事実を歪曲した創作を史実のように書いては、歴史修正主義ではないか?
中沢氏がトンデモ説をひろめるスピリチュアルおじさんの類いであろうが、私の知ったことではない。ただアメリカ大統領選のあとに、「選挙が盗まれた」と大衆を扇動して国民に分断をつくったポピュリズム政治に似た危うさを感じるのだ。
あるいは戦前の八紘一宇を旗印にした侵略戦争を、アジア解放の聖戦であり、アメリカの陰謀でやむにやまれず始めた戦争だったとひろめる人々。そして戦時中に大本営発表を信じた人々。
こういった歴史修正主義の言説を真に受けていると、今が戦前になる危険が高まるのではないか?そのことを杞憂して、史実と違うぞ!と言っているのである。中沢氏の著作が面白いと思ったら自分で調べればいいのだ。その態度が戦前にならない訓練になるのだから。
*定形勾玉の写真は、丁子頭勾玉になっていますが、注文主の意向で後から定形勾玉の頭部に刻みをいれて丁子頭勾玉にした結果です。
勾玉も世界中に類型はありますが、解釈の元になる史実がデタラメなのが「アースダイバー神社編」と思います。
勾玉の頭に顔がついています。
おそらく蛇(竜?)の顔でしょう。
https://baike.baidu.com/item/%E7%BA%A2%E5%B1%B1%E6%96%87%E5%8C%96/1034250
――稲作文化の伝来を中心に――
」2021年5月、https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/5/51836/20220118162656347852/k8658_3.pdf)
によれば、勾玉の形の原型は『山海経』に説かれる「珥蛇」にルーツがあり、「蛇」の形を模したものだということです。以下引用。
「前述したように、定形勾玉は玦状耳飾りから変形してきたものである。そ
して玦状耳飾りは蛇と関わり、蛇信仰を表している。中国にも玦状耳飾りが
あり、『山海経』では耳に蛇を飾ること、つまり「珥蛇」に関しては十箇所
に書かれている。その蛇飾りはおそらく玦状耳飾りを指しているのであろ
う。
」(上記論文p.110)参照。
胎児の形だという記述はありません。
最新の研究であり、しかも参照先行研究も多く、興味深いです。ぜひご一読ください。
中沢氏のような「想像に基づいた研究」ではないことに好感が持てます。