オクテック ガレージ ブログ OKU-TEC garage

大した人生ではないけれど,それでも読み返せば思い出されるあのときのこと.消えないように,そして生きた証になるように

ZZR-1100のチェンジシャフトの手作りオイルシール抜き(メール質問への回答です)

2012-07-23 00:10:01 | バイク関係の修理
以前に乗っていたカワサキのZZR-1100D

修理について以前HPに記事を書いていたところ質問メールをいただきました.
その回答をこちらでさせていただきます.




カワサキ車には決まって持病と言うのがあって(こんな事書くとカワサキファンに怒られそうですが),
その一つがチェンジシャフトのオイルシールからのオイル漏れ.

オイルシールの材質の問題か環境(ドライブチェーンに付着した泥や石コロといったものが
垂れてきてシール面を傷付ける)かは分かりませんが,ZZR-1100乗りではよく耳にするトラブル.





オイルシールはクランクケースのトランスミッションカバーに圧入してあります.
なのでこのカバーを外せば簡単にシールの交換は可能なのです・・・・が,さすがのカワサキ.

このクランクケースカバーをエンジン(クランクケース)から外そうと思ってもフレームが
邪魔して外せません.

「あかんやん」です.

普通なら数千円の工賃ですむところがエンジンを下ろさない(ずらさない)といけないため
万円単位の工賃が必要になります.

なので皆さんOリングピックアップツールと呼ばれる「せんまいどうし」みたいな先の
尖った細い工具でコジ取るのですが,小さなパーツなので取りにくく,下手をするとシャフトに
傷を付けてしまいます.

なので専用ツールを作ったというわけです.


図面はこんな感じ.
断面図が描き切れてなかったりしていますがそこはご愛敬.
それと寸法値が入っていますがあくまで参考程度にしておいてくださいね.




炭素鋼などで作ればいいのですが適当な材料が無かったのでステンレスの丸棒を旋盤で
図面の通り切削していきます.




こんな感じです.




これをグラインダーで溝を付けます.(手まで削らないように)




溝の幅や深さは「勘」です.




後端面にスライディングハンマーを取り付けるためのナットを溶接しておきます.




先端は「食い込まれる身になって」考えて研いでいます.いわゆるこれも「感」です.
大切なのは「そのモノの気持ちになること」だと思っております.




使い方は簡単
チェンジシャフトに通してハンマーで優しく叩くだけです.
ステンレスなんで工具として強度が足りないので「そっと」叩きます.
これも「ステンレスの気持ちになって」叩きます.




先端形状が「カエリ」になっているのでスライドハンマー(適当な重さのある塊)で引き抜きます.




気持ちよく安心して抜くことができました.




先端が潰れ無いように大切に使うと,まあまだ何回かは使えると思うのですが,バイクがもう無いので
出番はありませ~ん.


手作り工具(治具)のお話でした.

ではまた