温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

毒沢鉱泉 沢乃湯

2009年05月11日 | 長野県


甲州や信州には「信玄の隠し湯」なる温泉が点在していますが、どういう訳かどこでも冷鉱泉である場合が多いような気がします。信玄は薬効に気づいて冷鉱泉を沸かして利用していたのでしょうか。それとも時代を経るうちに泉質が変わって湯温が下がってしまったのでしょうか。下諏訪から中山道を和田峠へ向かって数キロほど北上したところにある毒沢温泉もやはり「信玄の隠し湯」のひとつでありながら、冷鉱泉であります。

毒沢とは何とも物騒な名前ですが、辺りは至ってのどかな田園地帯で、今回紹介する「沢乃湯」は看板が無ければ単なる古ぼけた民家と見紛えてしまいそうな建物です。ちなみにこの恐ろしい名前の由来は、武田信玄が外敵にこの温泉の存在を知られないようにするためのカモフラージュなんだとか。それならばわざわざ奇を衒う名前にしなくてもよさそうなものですが。

かなり草臥れている「沢乃湯」の浴室(男女別)には小さな浴槽がひとつあるのみですが、ここに張られているお湯がすごい。とても濃いのです。タオルを中に入れると染色されてしまうほど赤錆由来と思われるオレンジ色に強く濁っており、浴槽の縁や周囲はこってりと同じ色に染まっています。湧出時には無色透明で、加温するとこのように強く濁るそうです。浴槽の横には冷たい源泉が出る蛇口があって、そこから出ている鉱泉は確かに無色透明です。オレンジ色のお湯に身を沈めると、肌をさすると引っかかりを感じ、お湯の成分の濃さゆえか体が重くなる感触をおぼえました。

色や浴感から来るインパクトに負けず劣らず味の方も個性的で、強い鉄の味とレモン味、そして苦味や渋みと炭酸のような味が混然一体となって口の中に広がり、酸っぱさとそれを追いかける渋みで口の中がきゅーっと収斂しちゃいます。おそらくアルミニウムがこのような作用をもたらしているのでしょう。思わず顔がくしゃくしゃになってしまうこと間違いありません。毒沢の「毒」とは敵の目を欺くためではなく、この味が毒を思わせることに由来しているのではないかと思いたくなるほど、かなり衝撃的な味でした。しかし「毒を以て毒を制する」の言葉通りこの鉱泉には薬効があり、源泉から採取した湯の花はかつては医薬品として利用されていたそうです。現在もアトピーに悩む患者さんが多く足を運んでいます。

アルカリ性単純泉の穏やかさに慣れてパンチの利いたお湯が恋しくなったら、是非ここを訪れてみてください。年季の入った秘湯めいた建物といい、特徴的なお湯といい、きっと五感の欲求不満を解決してくれるに違いありません。




含鉄(Ⅱ)-アルミニウム-硫酸塩冷鉱泉
2℃(加温) pH2.6 7.5L/min(自然湧出) 成分総計2273mg/kg 

長野県諏訪郡下諏訪町星ヶ丘7075 地図
0266-27-2670

10:00~16:00
500円

私の好み:★★
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