四万温泉の中でも奥の方に位置する「御夢想の湯」は当温泉発祥の地です。永延3(989)年に日向守碓氷貞光が越後(現新潟県)から上野(現群馬県)へ越える際に読経していたところ、夜半にいずこからか童子が現れて「私はこの山の神霊だ。汝の読経に対する誠心に感服したから、四万の病悩を治す霊泉を授けよう」と神託をのたまったそうで、目覚めた後に湧出する温泉を見つけた貞光は、その温泉を御夢想の湯と称し、この地を神託に因んで四万と名付けたんだそうです。
この「御夢想の湯」の隣には約400年前(慶長3年)に建立された日向見薬師堂があり、群馬県下唯一の国の重文に指定された寺院建築となっています。三間四方の茅葺き屋根に唐風と和洋を折衷させた建築様式は、こじんまりしていながらも歴史の風格を感じさせてくれます。京都の大原の山の中を歩いていたら偶々出会えた小さな寺院といったような佇まいです。
日向見薬師堂
お堂で手を合わせてから「御夢想の湯」に向かいましょう。2006年に建て直されたばかりで外観も内部もとても綺麗です。無人ですのでくれぐれもマナーにはご留意を。脱衣所と浴室には仕切りがなくひとつの空間となっており、脱衣スペースから階段をちょっと下りて浴槽へと向かいます。浴槽は2人も入ればいっぱいになってしまうほど小さなものですが、無論お湯は少しずつですが源泉掛け流しで、何しろ高級旅館を思わせるような御影石の浴槽が心を躍らせてくれます。お尻を底につけたときの御影石ならではの上品な感触がたまりません。まるで旅館の各室に備え付けられた個室専用のお風呂に入っているかのようです。
お湯はいかにも四万温泉らしい無色透明の硫酸塩泉で、石膏の匂いと味が感じられ、肌をさするとキシキシ感があり、湯中の指を湯面から上げると光の屈折で青白く美しく輝きます。また少量の白色や茶色の湯の華も舞っています。そして湯上りはさっぱりとし、保温も持続するので肌寒い日でも大丈夫。
この「御夢想の湯」と日向見薬師堂の間には足湯も設けられているので、浴槽が狭くて先客が去るのを待つ間はこの足湯で温まるのもよろしいかと思います。私の訪問時(冬)は貸切状態でしたが、情報によれば普段は特に週末になると混雑する程の人気なので、その点は覚悟しておいたほうがよいかもしれません。
「御夢想の湯」の由緒書
傍にある足湯
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉
(湯の泉の湯<掘削自噴>と山鳥の湯<動力揚湯>の混合)
47.0℃ pH8.6 成分総計1.05g/kg
JR吾妻線・中之条駅より関越交通バス四万温泉行で40分
終点で下車し、徒歩25分
群馬県吾妻郡中之条町大字四万日向見 地図
四万温泉ホームページ
関越交通(バス)ホームページ
9:00-15:00 無休
(トイレはありますが、その他の設備はありません)
寸志
私の好み:★★★