温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

渋温泉 外湯めぐり(その2) 竹の湯・松の湯・目洗の湯

2011年03月04日 | 長野県
前回の続きです。


四番湯 竹の湯
 
温泉街のちょっと奥まった場所に位置しています。地獄谷から木管で引湯することに成功した際、その快挙を祝って松竹梅のうちの一文字をとって「竹の湯」と命名されたんだそうです。


浴室はタイル貼りですが、浴槽も源泉が注がれる樋も木造なので、そこはかとなく温もりと風格が伝わってきます。浴槽は4人サイズ。熱い源泉が投入される樋には小さな木板を嵌めこんでお湯止めができるようになっており、湯船が熱すぎたらこれで樋を塞いでお湯をとめて水で薄めればいいわけですが、板の一部に小さな切り欠けが開けられているため、完全にはお湯の流入を止められることが無く、常に新鮮な源泉が投入され続けます。
お湯は無色透明、出汁のような匂いが微かに漂い、わずかに塩味を帯びているようでした。湯中では薄い茶色の湯の華が舞っています。ツルツルする気持ちよい浴感。
湯浴み途中に地元の方が入ってきて、樋の湯止め板を抜いたために、湯船のお湯はたちまち熱くなってしまいましたが、おかげで豪快な溢れ出しが味わえ、熱さもさほど気にならず、気持ちよく湯浴みすることができました。

竹の湯の地図

横湯第一ボーリング・横湯第二ボーリング・熱の湯
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 70.5℃ pH7.6 湧出量不明(自然湧出) 溶存物質1268mg/kg 成分総計1272mg/kg


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五番湯 松の湯
 
渋の外湯の中では最も奥に位置しています。竹の湯と同時期に開湯され、四番が竹ならこちらは松という次第。外観もどことなく似ていますね。男湯女湯の入口の間に、汲み湯用の栓が設けられているのが、いかにも湯量豊富な温泉地の共同湯らしいところです。


浴室は実用本位のタイル貼りで風情に欠けるものの、湯口の樋だけは木造で、ちゃんと湯止めの板も使われていました。
使用源泉は4番湯と同じで無色透明、微かにですが出汁のような香ばしい匂いが漂います。ほぼ無味ですが僅かに芒硝味や塩味が感じられたように思いました。

竹の湯同様、やはりこちらも熱いので、源泉を入れたり止めたり水で薄めたりしながら湯温を調整して入ります。湯口の樋に刺さっている湯止めの木板は、基本的には樋を塞いでおき、必要に応じて外してお湯を湯船に注ぐようです。たしかに源泉温度が非常に高いので、常時投入しっ放しですと、熱くて入れたもんじゃありません。つまり常時放流ではなく溜め湯になってしまうわけですが、誰かが湯止めの板を外さない限り、湯船のお湯は鈍ってしまうわけでして、実際に私の訪問時も暫く前客が入っていなかったらしく、お湯はドヨヨンと鈍っており、底には埃のように沈殿した湯の華が一箇所に固まっていました。だからといってお湯を常時溢れ出しにできにくいのがもどかしいところです。

松の湯の地図

横湯第一ボーリング・横湯第二ボーリング・熱の湯
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 70.5℃ pH7.6 湧出量不明(自然湧出) 溶存物質1268mg/kg 成分総計1272mg/kg


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六番湯 目洗の湯

文字通り昔から眼病に効能があるとされて珍重されてきたお湯です。また美肌効果も期待できるらしく、美人の湯とも呼ばれています。


洗い場の床も浴槽も木造という温泉情緒たっぷりのウッディーな造りで、実にいい雰囲気。鰻の寝床のような縦長の浴室で、当然浴槽も部屋の形に合わせた縦長の5人サイズ。洗い場スペースがやや狭いかも。湯口から樋を通じて浴槽へ直接投入されています。源泉温度が激熱というわけではないので、こちらの樋には湯止めの板は用意されていません。


さて眼病に宜しいというこちらのお湯は、たしかに近所の松の湯や竹の湯とは全く異なっています。無色透明で匂いも味もあまり感じられませんが、神経をよく研ぎ澄ますと、かすかにゴムっぽい匂いが感じられました。山形県置賜地方の白布温泉を思わせる純白で綿状の湯の華が沢山浮遊しており、湯船の底にも沈殿・堆積しているので、ちょっとでもお湯を動かすと忽ちフワっと舞い上がります。湯の華好きな御仁には堪らない光景かと思います。また水で薄めず、源泉投入流量も調整していないため、湯船のお湯は結構熱く、湯船に入ると体にピリっと刺激が走ります。お湯は常時浴槽からオーバーフローしており、清らかに澄んだお湯に入るとこの上なく清々しい気分に浸れます。
ところで「目洗の湯」という名前ですが、あんなに湯の華が舞っていたら、目の中に湯の華が入ってきたりしないもんですかね。そんな下らない疑問はさておき、お湯といい湯屋の雰囲気といい、渋の外湯の中では非常に気に入った施設です。

目洗の湯の地図

目洗の湯・ガニ沢の湯
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 52.5℃ pH7.6 湧出量不明(自然湧出) 溶存物質1125mg/kg 成分総計1133mg/kg 

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渋温泉 外湯めぐり(その1) 初湯・笹の湯・綿の湯

2011年03月04日 | 長野県
信州・渋温泉の楽しみと言えば外湯巡りです。浴衣を羽織り下駄を鳴らして石畳の温泉街を歩くと、自分がたちまち古の一時へタイムスリップしたかのような錯覚に陥ります。当地にある外湯計9ヶ所のうち、大湯以外はみなこじんまりとした小さな湯屋です。この外湯9ヶ所を全て巡ると、九(苦)労を流して満願成就、厄除けや安産・不老長寿にご利益があるとされています。各浴場とも建前では地元民専用というスタンスを取っており、当地に宿泊している客に限って宿で鍵を借りて無料で利用することができるのですが、実質的には地元の方より観光客の利用の方が多いような気がします。みなさん満願を目指しているんでしょうね。


一番湯 初湯

渋の外湯巡りは一番湯の「初湯」から取り上げていくことにしましょう。
注連縄が掛けられたり入口に幕が提げられたりと、小さな神社を思わせる佇まいです。でも当地の文化には仏教信仰の色が濃いので、この外観は昔ながらの神仏混淆の顕れと捉えたほうが良いんんでしょう。
この初湯は奈良時代の僧侶である行基が最初に発見し、托鉢の鉢を洗ったことに因んで鉢湯と名付けられたものが、いつの間にやら初湯に転じて今に至っているんだそうです。

 
浴室は木造の湯船、簀の子状の洗い場、側壁も羽目板貼りと、木造に拘った造りです。伝統ある湯屋にはやっぱり木造が相応しいですね。湯口から短い筧を通して熱い源泉が投入され、その筧には白い硫酸塩の析出がビッシリこびりついています。お湯は黄土色に濁り、弱い金気臭&石膏臭が漂い、金気味+口腔をちょっと収斂させる弱い酸味が感じられます。お湯の濁り方はその日のコンディションによって異なるようで、あまりはっきり濁らない時もあるようです。

 
訪問時はメチャクチャ熱くて、水で薄めないと入れませんでした。前に誰か入っていれば、その人が水で薄めて適温になっていたはずですが、この時は暫く誰も入っていなかったのでしょう。ま、これも源泉をそのまま投入しているからこそなんですけどね。



(画像クリックで拡大)
脱衣所には木板に記された昭和24年の分析表が掲げられていました。

初湯の地図

荒井河原比良の湯・山ノ内町横湯(温泉寺)
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 75.7℃ pH4.3 溶存物質1145.3mg/kg 成分総計1196.3mg/kg


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二番湯 笹の湯

かつては笹薮の中から湧出していたという話が残っているのが「笹の湯」。
こちらも小さな神社か祠みたいな雰囲気です。小さな建物ながらその前面を覆うかのように構える破風が立派ですね。


表の道路に面したところにはお湯を汲むためのコックが設けられており、早朝にここを通ると、白衣を来た板前さんがお湯を汲んでいました。

 
内部は小さな湯屋の多い渋の外湯の中でも一二を争う狭さかもしれません。
浴槽は3人サイズですが、形状が台形で奥のほうが先細りなので実質的には2人しか入れないでしょう。湯口が樋でなく鉄パイプとバルブで、浴槽や洗い場はタイル貼りというごく普通の共同浴場なので、いまいち風情に欠けてしまいます。
お湯は初湯と同じ源泉(温泉寺源泉)を使っていますが、湯使いが違うのか、初湯のように濁っておらず、かすかに赤みを帯びた笹濁りでした。弱く金気の臭いと石膏臭を帯び、金気味+口腔をちょっぴり収斂させる酸味が感じられます。金気のために湯口や排水溝、そして洗い場のオーバーフロー部分は赤く染まっていました。またお湯の中では小さな白い湯の花も浮遊しています。

笹の湯の地図

荒井河原比良の湯・山ノ内町横湯(温泉寺)
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 75.7℃ pH4.3 溶存物質1145.3mg/kg 成分総計1196.3mg/kg


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三番湯 綿の湯
 
渋温泉の外湯の中では最も西側に位置する浴場。白い湯の花が多く、それが綿花を連想させるために綿の湯と名づけられたんだそうです。破風が連なる立派な玄関に高い天井を湯気抜きを備えた、風格ある湯屋です。でも内部は実用本位のタイル貼り。


3人サイズの浴槽は、側面が水色タイル、縁が御影石、底が石板敷きで、底は成分析出によって赤く染まっています。お湯は樋やバルブなどを経由することなく、直接浴槽へ投入されています。
こちらで使われている源泉は渋温泉総合源泉で、小規模旅館によく配湯されているものです。ほんのり赤みを帯びた弱い貝汁濁りで、白系半透明の小さな湯の華が舞っており、その幾つかは纏まって大きくなっていました。湯の華は目立つほど多くはありませんでしたが、これが綿の湯の名前の由来なんでしょうか(昔と現在とでは使用源泉が違うかと思いますが…)。弱く口腔が収斂するような酸味と金気味を有し、弱い金気臭と石膏臭が感じられ、キシキシとした浴感、トロミのあるお湯でした。


なお洗い場には上がり湯用の小さな槽も用意されています。こちらのお湯はちょっとぬるめでした。

(画像はありませんが、浴室上部には木板に書かれた古い分析表が掲げられていました。でも設置位置が高く、男女浴室の間にあるため、仕切りが邪魔してよく読めませんでした。まぁ分析表としてではなく、古い湯屋のオブジェとして見ればいいんでしょうけど)

綿の湯の地図

渋温泉総合源泉(比良の湯・薬師の湯及びとんびの湯の混合泉)
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 57.7℃ pH4.0 溶存物質1159mg/kg 成分総計1204mg/kg
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