温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

石和温泉 文寿荘

2015年06月27日 | 山梨県
 
 
前回記事では石和温泉でも稀有な自家源泉を有する宿を取り上げましたが、今回は集中管理・配湯されているお湯を放流式にしている「文寿荘」へ立ち寄り、入浴利用してまいりました。2階建ての質素で渋い建物なのですが、温泉街の真ん中を貫く近津用水に沿って位置しており、看板も立っていますので、迷うこと無くたどり着けました。水の潤いと並木の景色が美しい、閑静な環境です。
壁に張られたプレートには「立寄り入浴出来ます(天然温泉)」の文字があるように、日帰り入浴の利用もウェルカム。駐車場も確保されていますので、車でのアクセスも問題ありません。


 
玄関へお邪魔しますと、ちょうどお風呂から上がったばかりの地元のお婆さんがいらっしゃり、タオルで汗を拭いながら「ここのお風呂はよく温まるよ」とにこやかに教えてくださいました。なんともほのぼのとした空気感に、こちらの頬も思わず緩みます。石和温泉って大規模な旅館が多いイメージがありますが、こんな庶民的な佇まいのお宿もあるんですね。女将さんに湯銭を支払い、玄関左側にある暖簾を潜って浴場へ。


 
年季の入った建物ですが、館内はきちんと清掃されており、私が利用した範囲内で特に古さが気になることはありません。脱衣室にはユニットタイプの洗面台が1台置かれ、扇風機も設置されています。私が訪れたのは冬季でしたが、石油ファンヒーターが焚かれ、寒さを気にせず着替えられました。洗面台脇に据え付けられている古い髭剃りの手動販売機は、昭和の温泉に欠かせないグッズであります(現在は使用中止のようです)。


 
お風呂は男女別の内湯のみ。冬の浴室なので湯気が篭っており、しかも私のデジカメが安物ゆえホワイトバランスが上手くいかず、見辛い画像になってしまって恐縮です。中央の楕円形浴槽が印象的な浴室は、天井の低い造りに建築された時代を感じさせますが、壁や床にはオフホワイト系のタイルが貼られており、しかも男湯は駐車場に面して2方向がガラス窓になっているため、訪問した日中にはとっても明るい室内環境が生み出されていました。



洗い場には4基のシャワー付きカランがL字型に配置されています。カランから出てくるお湯を口にしてみますと、水道水とはちょっと毛色の違う、後述する湯口と同じ感触が得られたのですが、源泉使用なのか、ボイラーで沸かした井戸水なのか、はたまた単なる水道水で私の知覚が出鱈目なだけなのか…。


 
楕円形の浴槽は7~8人サイズで、最大幅タテ5m×ヨコ3mといったところ。縁は黒御影石で、槽内はタイル貼りです。縁の御影石表面には白い析出が薄っすらとこびりついているのですが、お湯がオーバーフローする部分(上画像では槽の左下部分)だけは石材本来の黒い輝きが維持されていました。恒常的にこの部分からお湯が溢れ出ているものと推測されます。槽内に吸引口などは確認できず、また帳場脇に掲示されている「温泉の成分等の掲示届」には「掛け流し」と記載されていますので、放流式の湯使いと断定して間違いないでしょう。


 
浴槽縁と同じ石材と思しき黒い御影石の枠組みからお湯が投入されており、私が湯船に入りますとザバーっと音を立てて一気に溢れ出ていきました。ただ、投入量は決して多くないため、一度溢れさせちゃうと嵩がガクッと減ってしまい、暫くはオーバーフローが見られません。
山梨県の温泉浴場では、全国標準よりもややぬるめに設定されている湯船が多いのですが、ご多分に漏れずこちらもややぬるめであり、私の体感で41℃前後でした。上述の掲示届には「入浴に適した温度に保つため加温しています」と記載がありますので、ボイラーなどで適宜温度調整されているのでしょう。
お湯はほぼ無色透明ですが、槽内タイルの影響なのか、僅かにライムグリーンを帯びているようにも見えます。また湯中をじっくり観察しますと、まるでガラス繊維のような白くて細かい浮遊物がチラホラ舞っていました。味としては微塩味+弱芒硝味+ほろ苦味。湯口や浴室内に漂う湯気からは、ふんわりとした芒硝臭が嗅ぎ取れるほか、ツーンと鼻孔を刺激するハロゲン系の臭いも僅かに確認できました。「掲示届」によれば「衛生管理のため塩素系薬剤を使用しています」とのことですから、その消毒薬の臭いなのでしょう。といっても、そんなに気になるほどではなく、指摘されなければ気づかない方もいらっしゃるかと思います。
湯船の中ではアルカリ性泉らしいツルツル感が優しく肌を包んでくれ、長湯仕様の湯加減で滑らかなフィーリングをじっくり味わえるのですが、玄関で声をかけてくれたお婆ちゃんの言葉の通り、意外にも温浴効果が強く、体の芯までしっかり温まって、湯上がりにはいつまでもポカポカ感が持続しました。泉質名こそアルカリ性単純泉ですが、味や匂いからは硫酸塩泉らしい特徴が得られるように、浴感でもアル単の枠を超えた硫酸塩泉的なパワーを有しているのでした。
湯船から上がって脱衣室で服を着ていると、地元のお爺さんがご自分の風呂道具を小脇に抱えて、続々とやってきてきました。どうやら地元からは銭湯のような感じで愛されているのですね。渋い佇まいのお風呂で、石和の湯の実力を実感できる、粋人向けのお宿でした。


石和温泉管理事務所給湯口(源泉貯湯槽)
アルカリ性単純温泉 45.9℃ pH9.1 溶存物質293.7mg/kg 成分総計348.9mg/kg
Na+:94.5mg(89.93mval%), Ca++:7.6mg(8.32mval%),
Cl-:79.5mg(47.66mval%), Br-:0.3mg, OH-:0.2mg, SO4--:61.1mg(27.02mval%), HCO3-:26.8mg(9.36mval%), CO3--:20.4mg(14.47mval%),
H2SiO3:49.6mg,
「温泉の成分等の掲示届」に「衛生管理のため塩素系薬剤を使用しています」「入浴に適した温度に保つため加温しています」との記載あり

JR中央本線・石和温泉駅より徒歩10分(800m)
山梨県笛吹市石和町山崎132-30  地図
055-262-2915

日帰り入浴14:00~20:00
500円
ボディーソープあり、貴重品帳場預かり、ドライヤーなし

私の好み:★★

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする