温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台湾最後の現役サトウキビ列車 虎尾糖廠のトロッコ その4・入換作業

2016年04月19日 | 台湾
前回記事「台湾最後の現役サトウキビ列車 虎尾糖廠のトロッコ その3・積み込み作業」の続編です。

各積込所でサトウキビの積み込みを終えた貨車は、小さなディーゼル機関車に引っ張られて製糖工場へと向かいます。列車は最も遠い13号積込所から出発し、12号、11号、10号、9号の順に止まりながら増結を繰り返し、最終的に1本の長い編成を組成します。


●連結器

貨車同士をつなぎ合わせる連結器がどうなっているのか気になったので、観察してみることにしました。
11号積込所で作業を見学してる時、荷役線の上には、既に積み込みが済んだ貨車群と、いま積み込み作業中の貨車が前後に並んで止まっており、両者の間には1メートルほど隔たりがありました。上画像が正にその時の様子です。いま作業中の貨車群の積み込みが終われば、既に作業済みの貨車と連結されます。


 
11号の詰所にいたおじさんが、連結器について説明してくれました。
左側の連結器は舌をベロっと出したようにクリップ状の輪っか(リンク)が出ており、右側にはそれを受け止める切り込み(穴)、そして上から落とし込む太いピンが取り付けられています。


 
連結する時は、左側の輪っか(リンク)を右側の連結器の穴に差し込み、輪っかの上からピンを落とし込めば、それだけで連結完了。逆に切り離す時は、ピンを抜くだけ。連結も切り離しも至ってイージーです。



上画像は連結している様子。引っ張られる時は、輪っか(リンク)に差し込まれたピンが列車同士に牽引力を伝え、押される時には、緩やかな局面を描くアサガオの花のような形をした受け板がぶつかり合うことによって推進力が伝えられるわけですね。このような原始的な構造の連結器は「ピン・リンク式連結器」と呼ばれているんだそうでして、日本でも黒部峡谷鉄道で現役なんだとか。


●10号積込所における入換(連結)作業
 
冷たい雨が降る10号積込所へとやってきました。積込所の近くには「停看聴」と書かれたシンプルな踏切が線路を横切っており、周囲に広がるサトウキビ畑と相まって、何とも言えないレトロで長閑な光景を生み出していました。


 

その踏切のすぐそばにはポイントがあり、奥へ続く直線の本線と、荷役線である側線を分岐させています。こんなヘロヘロで心細い線路ですが、ポイントにはきちんと転轍器標識が取り付けられており、私がここへ到着したときには、トングレールの向き、そして転轍器標識が示すように、このポイントは定位(本線側)を向いていました。
このポイントが、ここからのお話で重要な役割を果たします。


11号方面から機関車に牽引されたトロッコがやってきました。
既に11号以遠の貨車を連結していますが、ここでさらに増結するわけです。

ここからは、入れ換えの様子を動画でご覧ください。

「虎尾糖廠のサトウキビ列車 10号積込所での入れ換え作業」

(2016年3月9日撮影・8分06秒)

 0:00 奥の方(11号以遠)から、積載済のトロッコを牽引した列車が、直線の本線に入線してきました。左手の側線には既に積み込みを終えているトロッコが待機中です。
 0:41 機関車から作業員が降りる。一旦停止後、ここまで引いてきた貨車と機関車を切り離し、機関車だけが前進。
 1:02 機関車はポイントの先まで移動。
 1:08 作業員がポイントを側線へ切り替え、機関車が後進して側線へ入線。
 1:43 機関車は、10号の側線で待機していた貨車を押して後進。
 1:51 更に後ろで停車していた積載済トロッコとも連結。
 2:25 機関車は警笛を一発鳴らし、10号の側線上にいたトロッコを牽引。
 2:37 遮断機のない踏切を通過するため、警笛を鳴らしまくりながら、10号で積載したトロッコを全て本線上へ引き出す。
 3:39 貨車を全て引き出し、ポイントを通り過ぎたギリギリの位置で停止した後・・・
 3:57 すぐにバックして本線上を後進し、11号以遠から引いてきた貨車と本線上でドッキング。これで長大編成が完成!
 5:26 連結完了後、すぐに出発。ガチャガチャ賑やかな音を響かせながら、工場へ向けてゆっくりと走り去っていった…。

切り離しや連結の手際の良さといい、列車が停止する位置といい、無駄が全くなく、実にスムーズで効率的。職人芸そのものです。長年にわたって継承されてきた技術なのでしょう。



このような流れて、11号以遠からやってきた貨車と、10号で積み込んだ貨車が連結を終え、長編成に組成された列車が10号積込所を出発していきました。満載の貨車が何両も連なっている列車を牽引するディーゼル機関車は、エンジンをフル回転させてエグゾーストノートを畑に響かせていますが、もっさりとした動きといい、苦しそうなエンジン音といい、小さな機関車にとって貨車は相当重いのでしょうね。


 
少しずつ速度を上げながらも、自転車でも追い越せる程度のスピードで加速をやめ、ゆっくりと工場へ向けて走っていきました。

次回記事に続く
コメント
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