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引き続き豊富温泉をめぐります。前回記事の「ニュー温泉閣ホテル」はアットホームな雰囲気でしたが、今回取り上げる「ホテル豊富」は小さな温泉街の集落からちょっと離れたところにあり、当温泉地では最も大きな宿泊施設です。日帰り入浴も受け付けているので、立ち寄ってみることにしました。
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現在全面改築中の「川島旅館」は和洋の両面を取り込んだモダンデザインのお宿に生まれ変わるようですが、少なくとも現時点で、豊富温泉において洋風のホテルを希望するなら、こちらを選択することになるかと思います。エントランスを入ると、館内は瀟洒で明るい雰囲気に満ちており、女性客もきっと満足できるはずです。フロントで日帰り入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。
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フロントからお土産コーナーを通り抜けた奥が浴場入口です。
脱衣室にはロッカーなどひと通りの備品が用意されており、清掃も行き届いていました。
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浴室はカタツムリの殻のような丸い形状をしており、高い天井を数本の太い柱が支え、外側に広がる大きな局面ガラス窓によって、開放的な入浴環境となっていました。私が訪れたのは夜間でしたが、日中はさぞ明るいことでしょう。男湯の場合、浴室入口にサウナがあり、中央には岩のオブジェが埋め込まれた腰掛けが設けられ、右手に洗い場が配置されていました。洗い場にはシャワー付きカランが9基並んでいます。
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すっかり陽が暮れた後に訪れたため、窓の外を眺めても、室内照明に照らされた雪と、目の前の枯れ木程度しか目に入ってきませんでしたが、けだし日中は良い景色が眺められるのでしょうね。
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曲線のガラス窓に沿って円弧状に3つの浴槽が並んでいます。手前側の2つは水風呂と真湯槽で、特に青いタイルの真湯槽はかなり大きく、その存在感ゆえ浴室内で最も目立っています。また、所々に石を配することによって、タイルのお風呂にありがちな短調で実用的な雰囲気を排し、温泉浴場らしい非日常的な風情を醸成しようとしていました。なお館内表示によれば、真湯槽で張られているお湯は「殺菌し放流と循環を併用」とのこと。
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奥でオリーブグリーンの濁り湯を湛えている浴槽は温泉槽。真湯槽の半分ほどの大きさで、足を伸ばして湯槽に入った場合で考えますと、そのキャパは9~10人サイズといったところでしょうか。湯船のお湯は後述する湯口より供給され、窓下の溝へと溢れ出ていました。館内表示によれば、温泉槽のお湯は加温しているものの、放流式の湯つかいとのこと。
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小さな石の段々になっている湯口から注がれるお湯はR11号井という源泉。投入量は決して多くないのですが、やや過多気味に加温することにより、湯船ではちょうど良い加減の湯温となるよう、調整されていました。公式サイトによれば「当ホテルの大浴場に注ぐ湯は、専用の源泉から油分をろ過して引いている」とのことで、たしかに豊富温泉の他のお風呂と比べると、石油感がかなりマイルドに抑えられており、油のギラつきも少ないのですが、それでも室内には石油臭がふんわりと充満しており、匂いだけでも豊富温泉のお湯であることを実感できます。
強い石油臭を放つ湯口のお湯を口に含んでみますと、とっても塩辛く、苦味もはっきりと感じられ、湯船に入るとヌルヌルを伴うツルスベの滑らか浴感が肌に伝わりました。前回記事の「ニュー温泉閣ホテル」で使われているR4号井・R1A号井混合と比べますと、陽イオンに関しては圧倒的にナトリウムイオンの比率が高い一方で他の陽イオンがかなり少なく、陰イオンに関しては塩化物イオンの他、炭酸水素イオンもそこそこ含まれており、それゆえ、R4号井・R1A号井混合泉の泉質名はナトリウム-塩化物泉(食塩泉)でしたが、こちらのR11号井ではナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(含重曹・食塩泉)というように重曹の存在感も前面に出ていました。重曹の多さに起因するのか、ツルスベ感はR4号井・R1A号井混合よりこちらの源泉の方が若干強いように思われます。一口に豊富温泉といっても、源泉によって個性が微妙に異なるんですね。
当温泉地の他のお湯と比べると、ややマイルドな感を受けますが、それでもパワフルであることには変わらず、大して長湯しなかったにもかかわらず、しばらくは体が強烈に火照って汗が止まりませんでした。さすが豊富の湯はすごいですね。
R11号井
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 28.0℃ pH8.0 溶存物質13.99g/kg 成分総計13.99g/kg
Na+:4690mg(98.99mval%), NH4+:13.5mg, Mg++:5.5mg, Ca++:7.5mg,
Cl-:4988mg(68.39mval%), HCO3-:3942mg(31.40mval%), CO3--:12.0mg,
H2SiO3:48.2mg, HBO2:258.6mg,
(平成21年3月25日)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
JR宗谷本線・豊富駅もしくは幌延駅から沿岸バスの豊富留萌線で「豊富温泉」下車
北海道天塩郡豊富町字上サロベツ1510-2 地図
0162-82-1055
ホームページ
日帰り入浴11:00~21:30
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★