温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

阿武川温泉

2017年07月06日 | 山口県
 
毛利の城下町である萩から山へ入った旧川上村に掛け流しの温泉施設「阿武川温泉」があると知ったので、どんなお湯に巡り会えるのか確かめるべく、実際に行ってみることにしました。場所は阿武川ダムの下流にあり、ダムに向かう一本道を車で走ってダムの手前で看板に従い左手に逸れると、容易にたどり着きことができました。


 
施設前のロータリーの真ん中に泉源があり、石碑の裏に小さな屋根がかけられたポンプがお湯を汲み上げられています。ダム工事の際、このあたりだけ雪が積もらなかったので、試掘したら温泉が見つかったんだとか。つまりダム工事の副産物と言えそうですね。


 
施設の裏手には阿武川が流れており、山の緑を川面に写した静かな川では、太公望たちが釣竿を垂らしていました。山の空気も川の水も綺麗で清々しい環境です。


 
玄関を入って左手にある受付で料金を支払い、湯銭と引き換えに脱衣室のロッカーキーを受け取ります。
館内には大・中・小という3つの浴場があり、「小浴場」は貸切専用ですが、「大浴場」と「中浴場」は曜日によって男女が入れ替わり、私が訪れた日は「中浴場」が男湯になっていました。このため、今回の記事では「中浴場」のみのレポートとなりますので、あしからず。


 
「中浴場」という名称なので、それなりの狭さを覚悟していましたが、決して中規模ではなく、むしろ一般的な大浴場と比べても遜色ないほど、広くて立派なお風呂でした。お風呂は内湯と露天に分かれており、内湯にはL字を逆さにしたような形状の浴槽がひとつ据えられ、その反対側に洗い場が配置されていました。洗い場にはシャワー付きカランが計5基並んでいます。浴槽は壁側および窓側の最長辺で5m弱ある大きなもので、赤系の御影石で縁取られ、槽内は水色のタイル張り。壁側にはゴツゴツとした岩が積み上げられており、川の上流にある長門峡をイメージしていると思われます。浴槽のお湯は40〜41℃という長湯仕様。窓に面した浴槽側面からはジェットバスがブクブク噴射されており、ちょっとぬるめの湯加減とジェットバスの気持ち良さが相まっているためか、内湯ではお爺さんたちが「あれ?昇天なさった?」と周囲を勘違いさせてしまうほど時間を忘れて延々と長湯していました。



浴槽のお湯は無色透明で、加温循環消毒の各処理が実施されており、浴槽内でしっかり吸引され、また一定時間毎に浴槽内から加温されたお湯が投入されています。この影響を受け、湯船のお湯からは特にこれといった特徴を得ることができませんでした。
しかし、これのみならず、非加温の生源泉も同時に投入されているのが素晴らしいところ。壁側に積み上げられている岩の間から石樋が突き出ており、そこからほんのりヒヤッとする源泉が注がれていました。この源泉からはゆで卵の卵黄を思わせる匂いと味が感じられ、ツルスベの滑らかなフィーリングも伝わってきました。繊細なお湯なので何らかの手を加えてしまうと途端に個性が失われてしまうのでしょうけど、生のままですとアルカリ性単純泉らしい個性がはっきりと確認できるのですね。


 

つづいて露天風呂へ。
露天ゾーンも「中」とは思えないほど広く、石材が多用された日本庭園風の落ち着いた設えで、内湯側にサウナと水風呂、ゾーンの中央に加温浴槽、そして最奧に非加温浴槽といったように、複数の浴槽類が設けられています。加温・非加温両浴槽とも10人サイズの岩風呂ですが、単に岩で囲われた非加温浴槽に対して、加温浴槽の真ん中には島のような岩が置かれており、これを背もたれ代わりにして入ると、丁度良い姿勢で湯浴みすることができました。
加温浴槽は内湯と同じく加温循環消毒が行われているとともに非加温の生源泉も注がれており、お湯の状態も内湯とほぼ同様で、湯加減は良いのですが、浴感は正直なところ掴みどころに欠け、温泉マニア的にはあまり面白くありません。その一方、奥の非加温浴槽はまさに源泉のありのままの浴感を体感できる貴重な浴槽です。湯口の時点で30℃前後のぬるいお湯であり、しかも浴槽の表面積が広いため、湯船のお湯はすっかり熱を奪われて水風呂状態になっていましたが、実際に入ってみますとアルカリ性泉らしいツルスベ浴感がしっかりと肌に伝わり、湯口ではタマゴ感もはっきりと得られました。尤も、生源泉のありがたみが理解できないと、この非加温浴槽は単なる水風呂にすぎませんから、私が訪れた時でもこの非加温浴槽に入ろうとする人は私以外にいませんでしたが、浴感はこの非加温槽の方が良いので、マニア的には白眉の浴槽と言っても過言ではないかと思います。暑い日に入れば爽快なこと間違いなし。わざわざ手を加えない源泉の浴槽を用意してくれている施設側の姿勢に感謝です。


アルカリ性単純温泉 32.3℃ pH9.4 溶存物質0.6004g/kg 成分総計0.6004g/kg
Na+:208.4mg, Ca++:14.6mg,,
F-:8.5mg, Cl-:296.1mg, Br-:0.7mg, HS-:0.9mg, S2O3--:0.8mg, OH-:0.4mg, CO3--:12.1mg,
H2SiO3:40.4mg,
(平成26年9月29日)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環ろ過あり(衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため、塩素系薬剤及び光触媒装置を併用)

萩バスセンターより防長バスの阿武川温泉行もしくは惣良台入口行の路線バスで「阿武川温泉」バス停下車すぐ
山口県萩市川上4892-1  地図
0838-54-2619

10:00~21:00(受付終了20:30) 火曜定休 (祝日の場合は営業)
410円(サウナ別料金)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント
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