温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台東県 台東紅葉温泉の野湯 その1(松楓橋付近)

2017年07月22日 | 台湾
今回から連続で台湾・台東県の温泉を取り上げます。

自然豊かな台東県には温泉地が数多くあるため、移動手段を確保して上手く計画を立てれば、野湯をいくつもハシゴすることができます。今年(2017年)3月某日、私はその台東県でレンタカーを借り、1日で野湯を4ヶ所もハシゴしちゃいましたので、その時に訪ねた野湯を順に紹介させていただきます。なお記事で紹介する各温泉(野湯)は訪問当時(2017年3月時点)の様子です。夏季を迎えた台湾では川の増水などにより、この記事で取りあげた野湯が消えている場合がありますので、あらかじめご了承ください。


 
朝8時に台東駅前でレンタカーをピックアップ。台9線を北上し、鹿野の手前で左折。鹿野渓を遡って台東紅葉温泉方面へと向かいます。台湾東部には紅葉という名前を冠する温泉が2ヶ所あり、ひとつは花蓮県瑞穂温泉の奥にある紅葉温泉、もうひとつは台東県延平郷のブヌン族が多く住むエリアにある台東紅葉温泉ですが、今回訪ねるのは後者です。
台東の紅葉温泉は2009年の台風により壊滅的な被害を受け、それ以来温泉公園が閉鎖されたままなのですが、温泉だけはその後も湧き続けており、最近は大規模な湯溜まりができてアウトドアスポットになっているという情報を得たので、実際に行ってみることにしたのです。

鹿野渓の左岸と並行に伸びる道を走っていると、途中で「松楓橋」という橋を渡ります。この橋の付け根にはちょっとした展望台が設けられているので、そこから川の上流を眺めてみますと、川の左岸(上の画像ですと向かって右側)の礫が広がる河原にテントがいくつか立っており、複数の人影も確認できました。どうやらそのあたりに温泉の湯だまりがあるようです。


 
「松楓橋」からさらに進むと、左手に路地が分かれており、その丁字路に面する擁壁には少年野球を描いた壁絵が施されていました。後日調べたところによると、この紅葉地区に住んでいる原住民ブヌン族の子供達によって結成された少年野球チームが、1968年台湾へ招聘した日本のチーム(関西地区リトルリーグの混成チーム)に連勝したことをきっかけにして、台湾では野球熱が高まり、それ以来台湾の野球人気が続いているんだとか。つまり、現在の台湾の野球人気や実力の根源は、この台東県紅葉の地にあったと言っても過言ではないのでしょうね。この壁絵はそんな経緯を伝えるべく描かれたのでしょう。
当時のリトルリーグの少年たちに経緯を払いつつ、路地へと入っていきます。


 
狭いながらもコンクリ舗装されている道を進んで河原の方へ坂道を下ってゆくと・・・


 
坂道を下りきったあたりで舗装が途切れるので、その手前の広場に車をとめて、さらに川へ向かって歩いてゆきます。


 
歩き始めて3〜4分で川に出られます。河原には野営しているテントをいくつか発見。4駆車ならば川の前まで入って来られるのですね。みなさん、河原でアウトドアを楽しんでいらっしゃるらしく、歓談の声が聞こえてきました。
なお上画像の奥に写っているアーチ状の構造物は、先ほど河原を上から眺めた「松楓橋」です。


 
4駆車がとまっているすぐ後ろに、コンクリの擁壁で堰き止められている白濁の湯溜まりを発見。でもさすがにこの湯溜まりは小さすぎて、入浴には不向きです。


 
小さな湯溜まりのそばにテントが立てられており、テントの真下にはちょっとした湯溜まりができていて、そのテントを立てたと思しき中高年グループが賑やかに湯浴みに興じていました。


 
テント横の湯溜まりを横目に下流方向へ進むと、断崖の真下に巨大な湯溜まりができあがっていました。画像ではその大きさが伝わりにくいので・・・


 
実際に私が入ってみました。大きいでしょ! 大きいだけではなく、最も深いところでは(身長165cmの私の場合)胸の下まで浸かるほどの深さもある、立派な温泉プールなのです。


 
大きな湯溜まりは緑色を帯びながら白く濁っていますが、上流側の一部は石が積まれて仕切られており、その部分だけお湯の透明度が高くなっていました。温泉が自然湧出することによって常時流れが生まれるため、お湯の濁る暇がないのでしょうね。また湯溜まり自体が浅いため、濁りや色が視覚的に伝わりにくいだけなのかもしれません。浅いため全身浴は難しく、横になって寝湯にすると丁度良い感じです。


 
その透明な湯溜まりに計器類を突っ込んでみますと、温度は39.0℃で、pH=7.06でした。お湯は薄い塩味とゴムテニスボールのようなイオウ感、そして少々の金気を有しています。


 
温泉は上流側の小さく透明な箇所のみならず、白濁している大きな湯溜まりのあちこちからも湧出しており、湯溜まりの中を歩いていると、いろんなところから気泡が上がり、また足裏に熱いものを感じました。また湯溜まりと崖が接する箇所はその一部が赤く染まっており、お湯から感じられた金気の原因はこれなのか、と妙に納得しました。
この大きな温泉プールは、場所によって温度が異なり、湧出ポイントが集まる上流側ほど熱くなる傾向にあるのですが、それでも湯温はせいぜい40℃前後であり、のんびり浸かるには丁度良い湯加減と言って良いかと思います。


 
温泉プール(大きな湯溜まり)と川の本流の間には、高さ2メートルほどの礫の山が、堤防のように築かれていました。大きな湯溜まりの隣に高い堤防があるだなんて、ちょっと不自然ですよね。あくまで私の推測ですが、この温泉プールは重機で砂利の河原を掘ってつくられ、自然湧出している温泉がそこへ溜まることによって温泉プールが出来上がったものと思われます。そして掘ったときの礫が堤防のような形で川側に積まれたのでしょう。このため完全な野湯とは言えないのかもしれませんが、でもワイルドな環境で湯浴みできることには違いありませんし、一般的な野湯よりはるかにアクセスが容易ですから、手軽に野湯気分を楽しむにはもってこいの場所です。

台東紅葉温泉エリアにはお手軽な野湯がもう一ヶ所あるらしいので、続いてその場所へ向かうことにしました。
次回に続く



台東県延平郷
GPS座標:22.89725, 121.07243
24時間アクセス可能。無料。

私の好み:★★+0.5
コメント
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