温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

勝浦温泉 シーハウス熊野灘

2014年06月18日 | 和歌山県
 
一口で勝浦温泉といっても、「ホテル中の島」や「ホテル浦島」のような白濁湯もあれば、前回取り上げた「はまゆ」のように濁らないけど硫黄感が強いものもあり、そして硫黄っ気が全くない食塩泉もあったりして、その泉質は実に様々なのですが、今回取り上げる勝浦温泉の湯は、硫黄ッ気が全くないタイプの源泉を自家所有している宿泊施設「シーハウス熊野灘」です。マグロの水揚げで有名な勝浦漁港の目の前に位置しており、日帰り入浴の受け入れも積極的ですので、今回は日帰り入浴で利用させていただきました。



路地を挟んだ隣の駐車場には源泉小屋がありました。今から入るお湯はここから引かれているんですね。


 
訪問時の館内にはスタッフが誰もおらず、フロントで何度も声をかけたのですが全然応答が無かったので、カウンターの上に湯銭を置いて中へと入らせてもらい、ロビーの左手に進んでお風呂へ向かいました。場所柄、漁業関係者の利用が多いのか、館内ではいかにもそれらしい風情を漂わせるお客さんの姿が見られます。脱衣室は一見すると広くて明るく快適のようなのですが、そうした荒々しい男達が汗を流した後だったのか、室内はタイルなどが散乱していました。私の訪問したタイミングが悪かったのでしょうけど、お宿の方は散らかしっぱなしにされるお風呂をその都度片付けなきゃいけないんですから大変ですね。


 
壁紙の「漁師さん 勝浦入港ありがとうございます」という文言が、この土地およびこの施設の特徴を端的に言い表していますね。またその隣にはインドネシア語で書かれた注意書きも掲示されていました。現在の水産業界では外国人漁船員が貴重な労働力となっており、研修名目で東南アジアからたくさんの人材を受け入れているわけですが、この勝浦でも遠く離れた東南アジアからやってきて漁業に携わる方々が生活しており、風呂上がりに勝浦漁港の界隈を散歩していたら、漁港前のバスターミナルにあるWi-Fiのフリースポットでは、故郷と連絡をとりあうべく、モバイルツールを片手に夜な夜な彼らが集まってきていました。彼らは異国の地で異国の風習に従い異国の湯で一日の汗を洗い落としているんですね。島崎藤村の「椰子の実」を想わずにはいられません。


 
実用的な造りの浴室はベージュやオフホワイト系の色合いで統一されており、温泉風情というより合宿場の大浴場のような雰囲気です。洗い場にはシャワー付き混合水栓が6基並んでいます。


 
浴室の手前側にはこのようなデッドスペースがあり、入浴客が使えるような設備は何にも無いのですが、その代わりに掃除用具や消毒用薬剤が置きっぱなしになっていました。


 
浴槽はタイル貼りで16~7人は一緒に入れそうなほど余裕のある大きさです。その右隅に取り付けられている湯口には、青いネットが被せられていました。源泉温度が40℃に満たないため、加温されたお湯が供給されているのですが、私が訪問した時の投入量はやや絞り気味でした(窓からは灯油の臭いがお風呂へ流れこんできたのですが、これはボイラー用なのかな?)。それでも縁からは静々とお湯が溢れ出ており、私が湯船に浸かると勢い良くオーバーフローしました。槽内では循環されているような気配がありませんので、放流式の湯使いかと思われます。

お湯はほぼ無色透明ですが、少々貝汁濁りを呈しているようにも見えます(漁師さん達が一斉に上がった後だったので、お湯が鈍っていただけかも)。湯口のお湯を掬ってテイスティングしてみますと、甘塩味と少々のニガリ味、えぐみ、そして硬水によくあるような石灰っぽい味が感じられ、軟式テニスボールのような劣化した硫黄の存在を臭わせる風味も僅かながら確認できました。勝浦温泉のお湯といえば硫黄感を伴うイメージがありますが、こちらのお湯の分析表を見る限りでは総硫黄がゼロであり、周辺のお湯と比べると特異な存在でありますが、私が感じた僅かな硫黄感は「俺だって勝浦のお湯なんだよ」と懸命に主張する源泉のささやかな訴えだったのかもしれません。
今回はお湯や浴室の状況が宜しくないタイミングで伺ってしまったのですが、次回訪問する機会があれば、混雑する前の時間帯を狙ってみたいものです。


去来潟温泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 36.7℃ pH7.6 50L/min(動力揚湯) 溶存物質5.23g/kg 成分総計5.24g/kg
Na+:1285mg(60.96mval%), Mg++:136.7mg(12.27mval%), Ca++:473.8mg(25.78mval%),
Cl-:2837mg(89.98mval%), Br-:12.6mg, SO4--:383.5mg(8.97mval%),
H2SiO3:23.5mg,

JR紀勢本線・紀伊勝浦駅より徒歩5分(500m)
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町築地8-5-5  地図
0735-52-6677

日帰り入浴7:00~21:00
300円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (2)
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勝浦温泉 はまゆ 2013年12月再訪

2014年06月17日 | 和歌山県
 
拙ブログを立ち上げた頃に勝浦温泉の公衆浴場「はまゆ」を取り上げたことがありますが、久しぶりにあのビターで濃厚な硫黄臭に包まれたくなり、某日の夜9時過ぎに再訪しました。勝浦漁港の船だまりの前にあり、周囲は漁師町らしく庭がなくて玄関と路地が直接接しているような民家が蝟集しており、正面の岸壁の角っこに打ち寄せるさざ波がチャポンチャポンと小さな音を立てています。男女別に分かれた入口には牛乳石鹸の暖簾がかかっていました。牛乳石鹸が全国の温泉に配っている社名入りの暖簾には、地域によってタイプが異なっており、年度によっても意匠が違っているのですが、私の訪問時にかかっていたのは、おそらく2001年冬バージョンの京都型ではないかと思われます。



「はまゆ」は地域の方々から人気を集める銭湯ですから、夕方以降は混雑していることが多く、それゆえ今回は時間をズラしてクローズに近い時間帯を狙って暖簾を潜ったのですが、その読みは見事に当たり、番台のおばちゃんにお金を払って脱衣室に上がると、皆さんお風呂から上がって体の露を拭いながら服を着ている最中で、浴室には誰もいませんでした。

ウッディーな脱衣室内には、昭和の銭湯らしいアルミ板の鍵が付いたロッカーが設置されており、その上には常連さんの風呂道具が並んでいます。洗面台の水栓は浴室から漂ってくる硫黄の影響で黒く硫化していました。なお脱衣室内にドライヤーは無く、もし持ち込みで使う場合は40円を要するとのこと。


 
浴室の上半分は脱衣室同様にウッディーですが、水がかかる下半分はタイル貼り。一つの大きな浴槽と、一列に並んだ洗い場が左右に配置されています。


 
洗い場にはお湯と水の水栓がペアとなって7組並んでおり、カランから出てくるお湯は硫黄臭をプンプン漂わせる源泉です。水栓金具は一応防食コーティングされているのでしょうけど、それでも部分的に硫化して黒く変色していました。


 
浴槽は縁がワインレッドで槽内は水色のタイル貼り、8~9人は同時に入れそうな容量を擁し、一般的な浴槽に較べてかなり深く、身長165cmの私が槽内で直立すると、臍下まで浸かるほどの深さがあります。女湯側の仕切り塀には昔の陶器製石鹸置きみたいな形状をした湯口が設けられ、そこから湯船へ投入されたお湯は、脱衣室側の縁より惜しげも無くしっかりとオーバーフローしています。

浴槽のお湯は、青森県屈指の名湯「新屋温泉」を彷彿とさせるような美しいエメラルドグリーンを帯びています(はじめからお湯がこの色を有しているというより、槽内タイルの水色の影響で、黄色いお湯が緑に変色して見えるのかもしれません)。加温加水循環消毒の一切ない完全掛け流しであり、温度調節していないにもかかわらず、湯船では42~3℃と絶妙な湯加減が保たれていました。

浴室内には燻されたようなビターな感じの硫黄臭が充満しており、お湯を口に含むと僅かな塩味の他、喉の粘膜に苦味がこびりつくような焦げ渋系の苦味が強く感じられます。そして体を湯船に沈めると、優しいツルスベ浴感に包まれました。とにかく苦みと焦げたような感覚を伴う硫黄感が強く、じっくり入っていたくなるような湯加減であるにもかかわらず、硫黄の血管拡張作用が覿面に現れるのか、比較的短時間で逆上せてしまいました。ここのお湯は見た目は美しいにもかかわらず、強力なボディーブローを食らわせてくる、美女プロボクサーみたいな性格です。
さすがに和歌山県屈指の名湯だけあり、素晴らしいお湯です。


 
湯上がりに番台のおばちゃんへビン牛乳をお願いすると、おばちゃんは一旦番台から表へ出て、わざわざ裏手に回って冷蔵庫から牛乳を持ってきてくれました。この天満牧場の牛乳は地元産なんだそうでして、キンキンに冷えた牛乳は実に美味しく、あっという間に瓶を空にしてしまいました。瓶の裏側に描かれたムッチムチの子供の絵が微笑ましいですね。地方の温泉めぐりをしているとき、ご当地でしか販売されていない(大手業者ではない)牛乳があると、つい嬉しくなってしまい、有無を言わずに飲んでしまう癖が、私にはあります。


勝浦温泉はまゆ源泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 46.3℃ pH8.4 106L/min(動力揚湯) 溶存物質1.587g/kg 成分総計1.588g/kg
Na+:380.4mg(67.28mval%), Ca++:152.7mg(30.98mval%),
Cl-:828.2mg(87.52mval%), HS-:12.4mg, S2O3--:1.1mg, SO4--:60.1mg(4.68mval%), HCO3-:41.2mg(2.55mval%),
H2SiO3:44.5mg, H2S:0.5mg,
夏場のみ温度を下げるためわずかに加水することあり

JR紀勢本線・紀伊勝浦駅より徒歩12分(1.0km)
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町勝浦970
0735-52-1201
和歌山県温泉協会公式HP内の紹介ページ

13:00~22:00 毎月7日・22日休業
320円
ロッカーあり・他備品類なし(基本的な風呂道具の販売あり)

私の好み:★★★

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紀伊半島某所 即席露天風呂

2014年06月15日 | 和歌山県

紀伊半島南部の某所へとやってまいりました。今回は敢えて場所の特定を控えさせていただきますが、本来この場所には建築物が存在していました。しかし、ご覧のように今は何もなく、荒涼とした景色の中に水たまりがポツンをあるばかりです。
紀伊半島では数年前に台風による大水害が発生し、多くの河川が大氾濫して各地に甚大な被害がもたらされましたが、この付近の集落でも犠牲者が出てしまうほど被害が生まれ、濁流に呑み込まれてしまったこの一帯では、数年経った今でも水害の爪痕が残っているのです。



河川では護岸の改修工事が行われており、重機が唸っている工事現場の脇をかすめながら、荒れてしまった土地を横切って崖の下へ歩いてゆくと、眼前に不思議な物体が現れました。なんじゃ、ありゃ?


 
黒いホースからオレンジ色の丸い即席プールへ水が注がれており、その下にはご丁寧に足場用のコンパネが敷かれています。また脇には園芸用のトロ舟が置かれ、中には桶が入っていました。お風呂が大好きな私には正にお誂え向きなセッティングでして、期待に胸を膨らませながらホース先の水を触ってみると、期待を裏切らないどころか、予想以上の素晴らしい加減のお湯が吐出されていました。

ホースの上流を辿ってみるとコンクリの源泉小屋があるので、そこで湧出してこちらまで流れてくるのでしょう。水害に見舞われるまでこの場所では温泉入浴施設が営業していたのですが、濁流に呑み込まれて現在ではすっかり廃墟になっております。しかしながら、そこで使われていた源泉はいまでもしっかりと生きており、絶えることなく逞しく自噴し続けていたのです。


 
どうですか、このロケーション。尤も、視界が開けているのは水害の影響であるために、諸手を挙げて喜ぶわけいはいきませんが、でも、野湯同然のワイルドな環境でありながら、ここまで開放的な露天風呂というのも珍しいかと思います。
オレンジ色の樹脂板で造られたハンドメイド感溢れる一人サイズの丸い即席槽には、無色澄明の温泉がドバドバと大量に注がれており、流入量があまりに多いため、槽内ではグルグルと渦が発生していました。


 
特筆すべきは湯中で乱れ舞う夥しい数の気泡であり、その多さゆえにお湯がボンヤリと白く霞んでいるようにも見え、入浴すると全身が忽ち気泡だらけになってしまいました。お湯に元々含まれる泡の他、投入時の勢いによって更に気泡が発生して、その相乗効果でこのような泡付きになるのかと察せられますが、それにしてもここまで激しい泡付きは滅多にお目にかかれないでしょう。

湯口での温度は35.5℃でちょっとぬるめ。お湯からは茹でタマゴ的な匂いや味が明瞭に感じられますが、この手の温泉にありがちな苦味は控えめで、比較的マイルドなフィーリングです。



あまりに気持ち良いため自分撮りしてしまいました。上述のようにちょっとぬるめですが、ツルスベの浴感が気持ち良いばかりか、ロケーションによる爽快感が半端じゃなく、この即席浴槽に一度体を沈めたら、完全に虜になってしまい、この時の1時間以上浸かり続けてしまいました。



温泉分析書なし

場所の特定は控えさせていただきます。

私の好み:★★★

コメント (6)
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宇久井・岩鼻・井関 源泉垂れ流しの湯

2014年06月14日 | 和歌山県
和歌山県那智勝浦町では海岸に沿う形で勝浦温泉や湯川温泉など多くの温泉が分布していますが、浴用に適した温度に達している源泉はそれほど多くなく、前回および前々回の記事で取り上げた「ゆかし潟」周辺の諸源泉のように、洗濯用に使われたり、あるいはそのまま捨てられちゃっている所も少なくありません。こうした例は「ゆかし潟」のみならず、他地域でも見られますので、今回は勝浦エリアより北側で垂れ流されている源泉を3ヶ所巡ります。
※3回連続で入浴できない温泉を扱ってしまい、申し訳ございません。


●宇久井の湯

小さな半島が熊野灘に突き出ている長閑な漁業集落の宇久井にやってまいりました。この宇久井の半島では「休暇村南紀勝浦」が営業しており、そこで温泉入浴することも可能ですが、今回はそこまで行かずに手前の住宅地を彷徨しました。宇久井漁港を抜けて海岸沿いの道を東へ進んでゆくと、やがて漁協が管理する月極駐車場の前を通過します。


 
上述の駐車場を過ぎると左手には民家が建ち並び、右には空き地が広がります。そして空き地の向こうは宇久井漁港です。なお、この道を真っ直ぐ進んで前方のこんもりとした森の中へ入ってゆくと「休暇村南紀勝浦」へつながります。逆光で見難い画像ですが、画像左(上)で輝いている太陽のハレーションの他、右下の側溝でも小さい輝きが確認できるかと思います。その小さな輝きに近寄って撮ったものが画像右(下)です。配管から側溝に水が落とされているところなんて、全国に腐るほどありますが…


 
配管下の側溝は、単なる地下水や湧水ではありえないほど白く染まっており、その水は茹でタマゴのような匂いを辺りに放っています。またボロボロに腐食したパイプの上にはデッキブラシのブラシ部分のみが放置されていました。この水を使って何らかをゴシゴシと洗っていたのかな?


 
パイプからの吐出量はかなり多く、温度計を突っ込んでみたら27.4℃と表示されました。温泉法の第2条第1項で規定されている条件をしっかりクリアしていますので、立派な温泉であります。お湯は無色透明で、配管下の湯溜まりのみならず、お湯が流下する側溝など、あちこちにイオウによる白いユラユラが付着しています。手で掬ってテイスティングしてみますと、茹でタマゴのような味や匂いがかなり強く、薄い塩味やイガイガとした苦味も伴っていました。那智勝浦町内で見られる同じタイプの他源泉(湯川温泉など)より匂いや味の主張がかなり強く、また腕にお湯を当てて撫でてみますと、明瞭なツルスベ感も得られました。さすがに30℃にも満たないお湯ですから、このままで入浴するのは難しいのですが、ご近所の「休暇村南紀勝浦」で使用されている源泉もこれとほぼ同類かと思われますので、休暇村のように加温すると面白いお風呂になりそうです。とはいえ、目の前は民家ですし、公道に面していますので、ここでは見学とテイスティングのみにとどめ、お湯を浴びる等の行為には及んでおりません。


●岩鼻温泉
 
那智の大滝や那智山へ向かう観光ルートの県道43号線沿いには、かつて那智天然温泉というマニア受けする渋い温泉入浴施設がありましたが、平成23年の大水害によって泥流に呑み込まれてしまい、残念ながら廃墟と化してしまいました。その那智天然温泉へアプローチする橋の傍、県道の路肩には、温泉ファンには夙に有名な垂れ流し温泉「岩鼻温泉」があり、こちらは水害の被害を受けずに現存しているらしいので、実際に現地へ行ってみることにしました。温泉の存在を示す看板などは無いのですが、道が左へ急カーブする外側の、ガードレールが切れたところにあるので、初見の私でも容易く見つけることができました。


 
近づいてみると、「岩鼻温泉」とググればパソコンの画面に必ず表示される光景が目の前に展開されました。キラキラ輝くステンレスのバスタブへ、地中から立ち上がっている配管から無色透明のクリアなお湯がドッバドバ大量に落とされています。付近には廃屋があるので、もしかしたらこの家に人が住んでいた頃には、生活用のお湯としてこの岩鼻温泉が活用されていたのかもしれませんね。いや、屋外で放置されているにもかかわらずバスタブは不自然なまでに綺麗なので、今でも誰かしらによってしっかり清掃されて(磨かれて)いるのかもしれません。


 
それにしても、すごい量のお湯が自噴しています。お湯からはこの地域の温泉に典型的な、茹でタマゴ的な匂いと味が感じられ、またマイルドながらビターな味わいも伴っていました。このまま使われずに垂れ流されているだなんて勿体無いのですが、温度が35.4℃しかないので、ぬる湯が好きな御仁じゃないと入浴は厳しそうですね。第一、目の前は那智の大滝などへ向かう車がひっきりなしに通り過ぎますから、ここでの入浴はほとんど羞恥行為に近いものがあります。もちろん私は肝っ玉が小さい臆病者ですから、ここでの入浴は諦めて見学だけにとどめましたが、ネットを調べるとここへ入っている温泉マニアも結構いるみたいですね。温泉マニアってハートが強いんだなぁ…。オイラにゃ敵わないや…。

私が撮影した後には、リタイヤ後にキャンピングカーで全国を巡っているご夫婦が路肩に停車し、ここでお湯を汲んで洗濯していました。温泉ファンに限らず広範囲なアウトドア派の方々にも知れ渡っている温泉のようです。


●井関温泉 たらいの湯
 
続いて、岩鼻温泉から県道43号を更に奥へ進み、井関集落へとやってまいりました。ここも温泉ファンには夙に有名な垂れ流しの温泉があるんだそうです。県道沿いには民家が立ち並んでいますが、民家の裏手(北側)には谷に沿って田んぼが広がっており、その田んぼの向こう側の崖下に温泉があるらしいのです。


 
田んぼを横切るわけにはいきませんから、畦道をグルっと迂回して、山裾を流れる用水路へと向かいます。用水路の河床では青白い繊維上のものが水の流れに身を任せてユラユラしていたのですが、これってもしかして…。


 
温泉マニアにはお馴染みの井関温泉「たらいの湯」に到着です。実はバス停裏からここを目視できちゃいますので、迷うこと無くたどり着けました。
用水路の下流側と上流側の両方から撮ってみましたが、いかにも洗濯場といった趣きで、コンクリでカバーされた一つの源泉から2本のパイプが伸び、それぞれ金盥と木の盥へお湯を注いでいました。まわりには腰掛けがいくつか置かれていましたから、いまでもこのお湯は洗濯等に活用されているのでしょう。


 
盥には自噴する温泉が間断なく注がれています。そのお湯の温度は35.0℃の無色透明で、口に含むとふんわりとしたタマゴ味とタマゴ臭が感じられたのですが、その感覚は近所の岩鼻温泉よりも幾分マイルドであり、岩鼻のような苦味が無い代わりに甘露な味わいが口の中に広がりました。
画像で見る限り、湧出量は大したこと無さそうに思われますが、実際にはかなり多く、岩鼻と匹敵するか上回るほどの量がどんどん湧き出ています。なお、盥の真下の用水路は、ここより上流側では何も流れていませんでしたので、水路に流れる水の全てが温泉であり、先ほど用水路の河床でユラユラしていた白い物体は、言わずもがな湯の華なのであります。

岩鼻温泉同様、マニアな方はここでお湯を浴びていらっしゃるようでして、確かにここなら人目から離れていますから、浴びようと思えば浴びられるのですが、根性なしの私はここでも見学のみにとどめておきました。
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湯川温泉 ゆかし潟周辺の源泉めぐり その2

2014年06月13日 | 和歌山県
前回に引き続き、和歌山県那智勝浦町のゆかし潟周辺で湧く源泉を巡ってまいります。


●ゆかし潟の北岸にある垂れ流しのお湯

ゆかし潟北岸の道路沿いには、コンクリブロックが積まれた小屋の残骸が、湖岸の空き地でポツンと佇んでいます。ゴミ収集場のような感じもしますが、「ゴミを捨てないで」と書かれた札が立てられていますから、その手の施設ではないようです。



反対側(湖側)に回ると、塩ビのパイプからドバドバと大量の温泉が吐出され、地面に落ちてから、それこそ湯水の如く湖へと捨てられていました。ここは一部のワイルドな温泉ファンに有名な源泉なんだそうです(それだからこそ、私も辿りつけたのですが…)。パイプ吐出口の右下には、タイル貼りの流し台の残骸も残っています。


 
躯体の内部はこんな感じでして、ハンドルや弁が無い外側だけの手押し式井戸の先にパイプが繋がれています。奥の方はパイプの残骸が落ち葉に埋もれており、荒廃がかなり進んでいるのですが、機械類は見当たらないので、ここの温泉は自噴しているのでしょうね(ただ捨てられているだけの源泉に動力を使うはずありませんよね)。


 
パイプ口に温度計を当ててみると、34.2℃と表示されました。見た目は無色透明で、明瞭な茹でタマゴの匂いと味が感じられる、この一帯で湧く温泉に共通してみられるタイプのお湯なのですが、タマゴ感が比較的強く、湯川温泉「きよもん湯」に近いように思われました。35℃に満たないぬるいお湯なので入浴には適さず、このように捨てられているのでしょうけど、ここってそもそもは何を目的に設けられたのでしょう…。タイルの洗面台の残骸は洗濯用であったものと推測されますが、もしかしてかつては浴場があったのかな。
マニアな方はここでしっかりお湯を浴びていらっしゃるようですが、私はそこまで性根がすわっていませんので、見学のみに留めておきました。


●二河地区の洗濯湯

ゆかし潟の南部に位置する二河地区は、湯川駅が至近にあり、病院などもあって、民家が集まるちょっとした集落となっているのですが、この集落にも複数の源泉が存在し、間断なくお湯が湧いています。
国道42号線沿いにある駐車場の奥には、上画像のような青空洗濯場があり、自噴の温泉が用いられています。


 
上画像とは反対側の、国道側からも撮ってみました。四角い槽周りの足場には滑り止めマットが敷かれており、傍の木には桶・雑巾・洗剤などの洗濯用具類が置かれていたので、いまでも現役なのでしょう。


 
コンクリの槽は小さく浅い造りなので、入浴には適さないでしょう。湯口での温度は37.2℃で、無色透明、茹でタマゴのような味と匂いが感じられました。この源泉も周辺の他源泉と同じようなお湯ですね。温度といい、お湯のクリア感といい、夏に入浴できたらとっても爽快であるように思われますが、ここは地元の方々の生活用ですから、入浴はご法度ですね。


●二河地区の地域住民専用浴場 その1

上の洗濯湯の近くから路地に入って集落の中を進んでゆくと、民家の手前にコンクリブロックを積み上げて造られた小屋を発見しました。お察しの通り、これは地元の方の専用共同浴場であります。周囲は民家が並んでいて、他所者が歩いていると明らかに不審者と勘違いされそうな環境ですし、深入りして面倒なことになるのはイヤなので、残念ながら画像はこれだけしかありません。


●二河地区の地域住民専用浴場 その2

集落の外れにある竹やぶの下でも、怪しい小屋を発見しました。


 
小屋の脇では、下から立ち上がっているパイプより、地面に埋め込まれたヒューム管に向かってお湯が落とされていました。洗濯用のお湯として使われているのでしょうね。温度は34.0℃とかなりぬるめです。



小屋は地元の方の専用浴場と思われ、浴室はちゃんと男女別に分かれており、扉は施錠されていましたが、窓が半分開いていたので、そこから中を覗いてみますと上画像のような造りになっていました。モルタル造りの小屋にコンクリの槽という、実に無機的で狭い空間なのですが、そんな無味乾燥とした浴室には清らかに澄み切ったお湯が注がれていました。誰も居ないのにお湯が投入されているなんて勿体無いのですが、自噴源泉だからこれが当たり前なんですね。羨ましい!
ところでこんなプリミティブなお風呂にボイラーなんて無いでしょうけど、上述のように温度は35℃に満たない相当ぬるいお湯ですから、夏は爽快だとしても、冬はどうするんでしょう? 寒い日にこんなぬるいお風呂に入ったら、間違いなく湯冷めしちゃいますよね。

滞在可能時間の関係で、今回はこれだけしか巡れませんでしたが、ゆかし潟の周辺地域は探せばまだまだ多くの源泉がありそうです。
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