経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

初めての 難問 : イラン原油の禁輸 (下)

2018-07-05 07:47:05 | 原油
◇ 問われる安倍首相の外交力 = イラン原油の禁輸は、オバマ前大統領が成立させた国防授権法にもとずく政策だ。その中核は「イランの銀行と取り引きした金融機関は、アメリカ国内での活動を禁じる」という点。イランの銀行に原油の代金を振り込めば、アメリカ市場から締め出されることになる。この法律について、一部の新聞は「この措置の結果、原油価格が高騰すれば執行できない」と解説しているが、真偽のほどは不明だ。

実はオバマ前大統領も、この政策を発動した。このとき日本はイラン原油の輸入量を削減して、難局を乗り越えている。したがって安倍内閣も、まずは削減によってアメリカの理解を得ようと考えるに違いない。しかし今回は、うまく行くかどうか。ダメなら輸入を全面停止する代わりに、自動車関税の適用除外などの条件交渉に戦術転換するしかない。

トランプ大統領の貿易戦争第1弾は、鉄鋼・アルミに対する輸入関税の引き上げだった。だが日本製の鉄鋼に関しては適用除外が多く、被害はごく小さい。第2弾の中国製品に対する輸入制限は、まだ影響が表われていない。第3弾といわれる自動車の関税引き上げも実施されれば影響は大きいが、まだアメリカ政府が検討している段階。だが第4弾とも言えるイラン原油の禁輸は、すぐに対応を迫られる日本にとっての最初の難問だ。

安倍首相は、トランプ大統領といちばん仲がいいリーダーだと言われる。大統領就任直後に挨拶に出かけ、何度もゴルフをともにした。その努力は認められていい。しかし今回のイラン原油問題は、中途半端な対応では決着しないだろう。夏が終わるまでに、どのような方策を練り上げるか。安倍首相の真の外交力が問われることになる。

      ≪4日の日経平均 = 下げ -68.50円≫

      ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ


初めての 難問 : イラン原油の禁輸 (上)

2018-07-04 07:41:02 | 原油
◇ 日本の輸入量は1000万キロ・リットル = トランプ政権は先週26日、イラン産原油の輸入を停止するよう主要各国に要請した。11月4日までに禁輸するよう求めており、従わない企業はアメリカ市場から締め出すことを示唆している。アメリカ国務省の高官は「適用の除外はない」と言明。特に日本に対しても「大半の国は支持しており、日本が他の国と特段の差異があるとは思わない」とクギを刺している。

ことし5月、トランプ大統領は突如としてイランを巡る7か国の核合意から離脱した。オバマ時代に作られたこの合意は不完全で、イランの核武装化を阻止できないというのが理由。その後はイランを敵性国と位置づけ、経済制裁を続けてきた。今回の禁輸要請はその一環であり、アメリカ政府の意志は相当に強そうだ。

中国は直ちに反発。外務省は「イランは友好国であり、エネルギーを買っても非難される覚えはない」と声明した。あとはまだ様子見だが、EUは困惑している。というのもイランとの核合意は維持しており、逆にトランプ政権の離脱を非難してきたからである。日本は核合意とは無関係。しかしイランから年間1000万キロ・リットルの原油を輸入しているだけに、友好関係の維持に努力してきたことは間違いない。

この新たなトランプ・ショックで、原油の国際価格が急騰した。ニューヨーク商品取引所のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は27日、3年7か月ぶりに1バレル=73ドル台に上昇。つれて株式取引所ではダウ平均が急落した。アメリカの金利上昇、米中間の貿易戦争などに加えて、また新しい不透明要素が出現した形となっている。

                             (続きは明日)

       ≪3日の日経平均 = 下げ -26.39円≫

       ≪4日の日経平均は? 予想 = 下げ


まだ反応が鈍い 日銀短観

2018-07-03 07:09:34 | 景気
◇ 消化できない貿易戦争の影響 = 日銀は2日、6月の企業短期経済観測調査を発表した。それによると、最も注目される大企業・製造業の業況判断指数はプラス21で、前回3月調査の結果を3ポイント下回った。この判断指数は、業況が「良い」と回答した割合から「悪い」と回答した割合を差し引いて作成する。前々回までは8四半期連続で上昇していたが、ことしに入って2期連続で低下したことになる。

このため一部の新聞やテレビ・ニュースは「2期連続で下降」と、大々的に報道した。しかし数字だけから判断すると、大騒ぎするような内容ではない。プラス21という水準はまだかなり高いし、たとえば大企業・非製造業はプラス24で、前回より1ポイント上昇している。全規模・全産業でみても、判断指数は16で前回を1ポイント下回るだけだった。

業況判断が低下したのは、原油などの原材料価格が上昇したこと、それに人手不足の影響によると説明されている。だが同じく人手不足に悩む非製造業の判断指数が上昇するなど、納得しにくい面もある。要するにトランプ大統領が始めた貿易戦争の影響がまだ不透明で、なんとなく不安感が湧いてきたという段階ではないだろうか。

今後の見通しも、そんなに悪くはない。3か月後の予想をみると、大企業・製造業はプラス21で変わらず。全規模・全産業でも3ポイントの低下を予想しているだけだ。問題はこの見通しが当たるかどうか。貿易戦争の影響が明らかになるにつれ、業況判断はもっと下がる可能性が大きい。6月の時点で、経営者はそこまで感知していないということだろう。

       ≪2日の日経平均 = 下げ -492.58円≫

       ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ


今週のポイント

2018-07-02 08:25:52 | 株価
◇ じわっと上がる恐怖指数 = 名は体を表すのか。トランプ大統領が、またまたカードを切った。中国企業によるアメリカ向け投資規制を検討。さらに日本やEUなどに対して、イラン原油の輸入禁止を要請。アメリカの金利上昇が世界経済に及ぼす影響は、まだ判然としない。米中貿易戦争の影響も、まだ計測できない。そこへまた先週、消化しにくいトランプ・カードが2枚投げ込まれた。市場は戸惑うばかりである。

ダウ平均は先週309ドルの値下がり。下げ一色という状況ではなかったが、インテルやキャタピラーなど中国との関係が深い銘柄が売られてズルズルと下げた。特にハイテク銘柄の多いナスダック市場は、20日に付けた史上最高値から3.2%も反落している。当面は中国関連銘柄を敬遠した形だが、その底ではトランプ政策が世界経済に与える影響に対する警戒感が膨らんできているようだ。

日経平均は先週212円の値下がり。海外投資家が売り越しに回るなかで、国内投資家や日銀の買いが入ったようだ。しかし消化難の材料が多いことから、売買高は目立って減少している。あまりいい兆候ではない。こうしたなかで、注目されるのが日経VI(恐怖指数)の動き。警戒ラインといわれる20にまで、じわっと上昇した。

今週は2日に、6月の日銀短観。3日に、6月の新車販売と18年の路線地価。6日に、5月の家計調査、毎月勤労統計、景気動向指数。アメリカでは2日に、6月のISM製造業景況指数。5日に、6月のISM非製造業景況指数。6日に、6月の雇用統計と5月の貿易統計が発表される。

       ≪2日の日経平均は? 予想 = 下げ


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-07-01 08:05:50 | SF
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪39≫ 道路革命 = 帰りの車では、改めて高速道路の状態を観察した。もう何回となく走っているが、これまでは遠くの景色を眺めていたことが多い。車の上半分は強化ガラスで造られているから、外はよく見える。でもスピードが速いので、近くのモノには焦点が合わない。

高速道路は片道3車線で、幅は20メートルほど。両側には高さ1メートルぐらいの壁が続いている。その壁には点滅する小さなライトが、いくつも並んでいた。走る車の真下には鉄道のレールのような黒い線が見え、はるか遠くまで延々と伸びている。これがダーストニウム合金で、車を浮かせて誘導しているに違いない。

ぼくたちを送り出しながら、シュベール博士がつぶやいた言葉は印象的だった。
「100年ぐらい前までは、自動車にカメラや赤外線装置を積み込んで、人や障害物とぶつからないようにする。その技術ばかりを追求していたんじゃ。この自動運転車はかなり進歩したんじゃが、やっぱり人間が運転席におって注意していないと事故が起きてしまう。

そこで技術者たちは、考え方を一変した。自動車ではなく、道路に車をコントロールさせる。この革命的な発想の転換で、いまの交通方式が完成した。人間は全く関与しない完全自動車で、事故は皆無。だが本当は道路革命と呼ぶべきだと、私は常々思っておるんじゃ」

ぼくが地球を飛び出したころ、日本でも自動運転車の開発が進んでいた。車が障害物を感知して、ブレーキをかける。この技術のおかげで事故はかなり減ったが、皆無というわけにはいかなかった。やはり発想を転換して、道路に主導権を持たせた方がいいのかもしれない。

路面を利用した太陽光発電にも、感心せざるをえない。日本では建物の屋上とか、田舎の休耕田に発電パネルが敷き詰められていた。それより道路にパネルを敷いてしまえば、景観も損なわれない。送電線を張る手間もなくなる。日本もそうしたらいいと思ったが、そのためにはダーストニウム合金が必要であることに気が付き、ちょっとがっかりした。

国家機密である新合金の製法は、教えてもらえそうにない。だが、その存在やその弱点を、どうしてぼくに教えたんだろう。いくら考えても判らない。彼らは結局「あの男が地球に戻ることはない」と考えて、安心しているのだろうか。

                             (続きは来週日曜日)


Zenback

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