経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

波状攻撃を受ける アジア経済 (上)

2018-07-10 08:00:43 | アジア
◇ 第1波はダブル・パンチ = アジア経済が悲鳴を上げ始めた。アメリカの金利上昇と米中貿易戦争。このダブル・パンチを喰らって、ほとんどの国が通貨を防衛するため何回も利上げした。その結果、こんどは景気の下降と物価の上昇に警戒信号が点滅している。まだアルゼンチンのように債務不履行に陥った国はない。しかし時間の経過とともに、世界経済全体の停滞という第2波が襲ってくる可能性は否定できない。

アメリカの長期金利が3%に達したころから、新興国へ投資されていた資金がアメリカへ還流し始めた。特に直撃を受けたのは、銀行業や不動産業。それにドル建て債務が大きい企業だった。そこへ米中貿易戦争の打撃が加わる。主としてアメリカ向け輸出の比重が大きい中国企業、中国向け輸出の比重が大きいアジア各国の企業が影響を受けた。

日経新聞の調査によると、アジア各国に上場する主要325社のうち、株価が年初より下げたのは215社。たとえばアメリカ市場への参入を目指してきた中国の大手自動車メーカー、広州汽車集団は年初比4割を超す下落となっている。また世界最大の豚肉加工業の万州国際。アメリカ向け輸出が多い台湾の鴻海精密工業、韓国の現代自動車、インドのタタ自動車。それにドル債務が大きいマレーシアのエアアジアなどの株価も大幅に下げている。

実は2013年にも、アジア諸国は経済危機に見舞われた。中国の人民元切り下げとアメリカの利上げが、原因となっている。しかし、その当時と比べアジア各国の経済は格段に成長し、抵抗力も増大した。このため現状は、まだ耐え抜いていると言えるだろう。しかし世界経済全体の停滞という第2波、さらにトランプ大統領がちらつかせている自動車の輸入制限という第3波がやってきたとき、どういうことになるか。その予測は不明である。

                             (続きは明日)

       ≪9日の日経平均 = 上げ +264.04円≫

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ


今週のポイント

2018-07-09 07:50:54 | 株価
◇ 恐怖指数がじわり上昇 = ダウ平均株価は先週185ドルの値上がり。4週間ぶりの反発で、ウォール街は一息ついた格好。いぜんとして米中貿易戦争が暗い影を落としているが、6月の雇用統計が予想以上に好調だったこと。政府部内で追加の減税案が検討中のニュースなどを支援材料に、下値を拾う動きが活発になったようだ。しかし今後の見通しについて、市場で楽観論は聞かれない。

日経平均は先週516円の値下がり。こちらは3週連続の下落となった。主たる原因は、やはり米中貿易戦争。中国向けの輸出が多い企業、中国で生産・販売している企業が売り込まれている。さらに上海市場をはじめアジア各国の株価が大幅安を演じたことも、東京市場にはかなり影響した。

米中両国は先週末、関税引き上げ競争を開始した。ともに相手国からの輸入品340億ドル分に、25%の関税を上乗せしている。それが両国の経済、さらに世界経済にどんな影響を及ぼすのか。これから出てくるであろう悪材料に、市場は身を固くしている。日経VI(恐怖指数)も先週は23台にまで上昇した。この夏は熱中症と株安に、厳重注意である。

今週は9日に、5月の国際収支と6月の景気ウォッチャー調査。11日に、6月の企業物価と5月の機械受注、第3次産業活動指数。アメリカでは11日に、6月の生産者物価。12日に、6月の消費者物価。13日に、7月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が10日に、6月の消費者物価と生産者物価。13日に、6月の貿易統計を発表する。

       ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-07-08 06:45:46 | SF
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪40≫ ダーストン人 = それから半年あまり、ぼくは精力的に人々と付き合い、集会などへも積極的に参加した。この国の人たちを、もっと知りたいと考えたからである。まるで世論調査をしているようだと感じながら、毎晩メモしたノートは20冊を超えた。おかげでダーストン人の思考や生活態度も、ずいぶん判ってきたように思う。

エネルギー研究所のシュベール博士から聞いたダーストニウム合金と太陽光発電の話は、ぼくに強烈な印象を与えた。そこで数多くの人に聞いてみたが、驚いたことに知っている人はごく僅かだった。ほとんどの人からは「知りませんね」とか「聞いたことはありますが、あまり関心は持っていない」という答えが返ってきたのである。

電気はいつも十分に供給されている。完全自動車に乗れば、どこへでも安全に行ける。そんなことは当たり前のことであって、その仕組みを知っている必要なんかない。だからダーストニウムなどという名前も知らない。たいていの人は、こんな調子だ。知っていたのはごく僅か、ほとんどが理科系の学者だった。

その学者でさえも「人類は初め木を火種とし、石炭と石油を燃やし、さらには原子力をエネルギー源とした。そして最終的に太陽光発電にたどり着いたのです。これは歴史的にみて当然の帰着ですから、驚くには当たりません」と、のんびり構えている。その顔には「この地球人はなんで、こんな当たり前のことに驚いているんだろう」と書いてあった。

それだけではない。究極の再生医療、人間に近いロボットの製造。この驚くべき科学技術の成果についても、人々はもう当然のこととして受け入れている。それが物凄いことだという考え方は、ほとんどない。たしかに、この国の人々はそういう世界に生まれ育ってきた。すべてを当たり前のことだと思ってしまうのも、ある意味では仕方がないのかも。

ところが、このぼくはほんの数年前まで病気と闘い、自動車事故で多くの人たちが命を失う社会に住んでいた。ロボットは人間の代わりに働き出したが、まだ機械にすぎない。原発は事故を起こし、メタン・ハイドレードは人類に牙を剥いた。そんな世界から突然この地に来たのだから、そのギャップの大きさに圧倒されても仕方がない。

こう考えてくると、ぼくの気持ちはずいぶん楽になった。いままではダーストン星に呑み込まれていたが、これからは距離を置いて見ることが出来そうだ。理解に苦しんだ主婦や若者の生活態度も、なんとなく解ってきそうな気がしてきた。もう少し、ぼく流の世論調査を続けることにしよう。

                                (続きは来週日曜日)


給料は 3526万円 : 日銀総裁

2018-07-07 07:24:36 | 日銀
◇ 総人件費は591億円 = ひと月ほど前に麻生財務相の給料について書いたら、読者から「日銀総裁は?」という問い合わせを頂いた。そこで調べてみると、黒田日銀総裁が17年度中に貰った給料は、ボーナスを含めて3526万円だった。総理大臣と最高裁長官の給料はともに5141万円。国務大臣は3753万円だから、これよりは低い。なんだか大臣に遠慮しているようにも思われるが、これはヒガ目かな。

それでも日銀のなかでは、いちばん高い。副総裁は2724万円、理事だと2000万円前後となる。では一般職員の給料は、どうだろうか。常勤職員は3873人で、平均年齢は43.4歳。給与の平均はボーナスを含めて818万2000円だった。国家公務員と民間銀行の給料を参考にして決定しているというが、世間一般からみればかなり高い。

日銀の発表によると、17年度の総人件費は591億2400万円。これには給与やボーナスのほか、退職金・福利厚生費が含まれている。このうち非常勤職員の給料は12億9000万円だった。日銀の本店内を歩いていると、非常勤らしい職員を数多く見かける。しかし発表では非常勤職員の人数に触れていないので、1人平均の給料は判らない。

また金融機関はどこもそうだが、日銀も女性職員が多い。観察する限りでは、女性の比率は3割を超えているのではないだろうか。しかし日銀は、女性職員の人数も発表していない。開かれた日銀を目指すのならば、非常勤職員や女性の人数と給与に関するデータも公表すべきだろう。

       ≪6日の日経平均 = 上げ +241.15円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   


きょう発動 : 米中が関税引き上げ

2018-07-06 08:21:04 | 貿易
◇ 計り知れない悪影響 = トランプ大統領はきょう6日、知的財産権の侵害を理由として、中国に対する制裁関税を発動する。電子部品や産業用ロボットなど、総額340億ドル(約3兆7500億円)分の輸入品に対して25%の関税を上乗せする内容。中国政府もこの措置を確認した時点で、アメリカ産の大豆や牛肉など同額340億ドル分の輸入品に25%の関税を追加する方針。米中貿易戦争の開始である。

この貿易戦争の悪影響は、計り知れない。駆け込み輸入もあって、すぐに影響は出ないかもしれない。しかし数か月もたてば、たとえば中国の鉄鋼業や電子産業の一部は経営難に陥る可能性がある。アメリカでも、大豆農家は打撃を受けるだろう。すると鉄鋼や大豆は値下がりし、第3国に輸出しようと試みる。その結果、全く関係のない国の大豆輸出が食われるかもしれない。

こんな悪しき連鎖が、数多くの商品で進行して行く。中国の電子製品輸出が減れば、日本の中国向け電子部品の輸出も減少するだろう。こうして時間とともに、貿易戦争の悪影響はじっくりと世界に広がって行く。それが総体的にどの程度の損害をもたらすかは、全く予測できない。ある意味では、一過性の大事件よりタチが悪い。

すでにトランプ大統領が6月に実施した鉄鋼・アルミに対する関税引き上げに対しては、カナダ・EU・メキシコ・中国・トルコ・インドの6か国が報復関税を導入している。その対象となるアメリカ製品の総額は、283億ドルに達した。そのうえに今回の米中関税引き上げが加わる。その影響は、いずれ日本にも及んでくると覚悟しなければならない。

       ≪5日の日経平均 = 下げ -170.05円≫

       ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ


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