経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

第2段階に入った コロナ不況 (下)

2020-03-25 07:56:14 | なし
◇ 次は景気回復を目指す第3段階へ = 信用不安を回避しながら、深く傷ついた実体経済の立て直しを目指す。これが第3段階。JPモルガン証券の試算によると、アメリカのGDP成長率は1-3月期にマイナス4%、4-6月期にはマイナス14%にまで沈下する。日本の成長率も、同じように落ち込む見通しだ。これを立て直すためには、巨額の財政支出が不可欠だろう。ここで注意すべき点は、第1段階での生活補助的な政策と第3段階での景気対策は全く違うということ。必要な金額も違うし、第1段階では有効な金融政策は第3段階では無力なことだ。

すべては財政政策にかかってくる。その規模や具体的な方法、そして実施時期をいつにするか。たとえば生活水準を維持するため、必要な世帯に5万円の現金を配ることは役に立つ。しかし全世帯に20万円ずつ配っても、行動が制限されている状態では個人消費が増えることは期待できない。所得減税にしても、同じことだ。

思い切って、消費税をゼロにしたらどうだろう。すでに政界の一部では、消費減税論も出始めている。しかし税率を8%とか5%にせよという主張が多いようだ。だが、そんな減税ではとても足りない。税率をゼロにすれば、総額21兆円の減税になる。欧米諸国ではGDPの1割程度の財政支出増を検討しているという。日本に当てはめると、55兆円ということになる。

難しいのは、実施のタイミングだ。行動制限の最中だと、消費は増えにくい。最も効果的なのはコロナ肺炎に終結の兆しが現われたときだが、その見極めは微妙だろう。機を逸すると、景気はいっそう悪化してしまう。さらに日本の場合は、オリンピック延期の悪影響が加わりそうだ。この戦後最大の難局を乗り切る処方箋を描けるかどうか。政治家の資質が問われることになる。

       ≪24日の日経平均 = 上げ +1204.57円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

第2段階に入った コロナ不況 (上)

2020-03-24 07:54:47 | なし
◇ 各国は信用不安の回避に必死 = 株価の急落に喘ぐニューヨークの金融市場。関係者の間に先週、新たな緊張感が走った。これまで投資家は株式や原油を売り、その資金を安全度の高い国債や金に振り向けてきた。それが突如として、国債や金からも資金を引き揚げ始めたからである。すべてを現金化して、手持ちする。恐怖感が一定の限度を超えると、過去にもこういう現象が起きている。その結果、ドルが不足すると企業のカネ繰りが困難になり、倒産や失業が急増してしまう。

これが信用不安と呼ばれる現象。新型コロナ肺炎は学校の閉鎖やイベントの中止、また人々の行動が制限されたことによって、企業や個人の収入を低下させた。これがコロナ不況の第1段階。状況はさらに悪化して、信用不安という第2段階に突入したわけである。この状態を放置しておくと、企業の倒産が激増し、金融機関も経営難に陥る。つまり金融危機へと発展してしまう危険性が高い。

そうなったら大変。各国の政府・中央銀行は、信用不安を阻止するために必死の対策をとり始めた。中央銀行は金融機関に対して、ほとんど無制限に融資する。企業が資金不足に陥らないようにするためだ。たとえばドイツ銀行は、金融機関に対して無制限の信用供与を発表。日銀も金融機関が保有する国債など5兆3000億円を買い入れる方針だ。

また企業の多くは短期の資金を手当てするため、CP(コマーシャル・ペーパー)という約束手形を発行している。この市場からも資金が引き揚げられ、CPの買い手が姿を消してしまった。そこでアメリカのFRBはCP市場に参入、CPを直接買い取ることになった。中央銀行がCP市場に直接参入するのは、きわめて珍しい。このように、いま各国はなりふり構わぬ姿で、信用不安の払しょくに懸命となっている。

                              (続きは明日)

       ≪23日の日経平均 = 上げ +334.95円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2020-03-23 08:10:22 | 株価
◇ トランプ相場も吹っ飛んだ = ニューヨーク市場のパニック心理が収まらない。ダウ平均は先週18日、約3年1か月ぶりに2万ドルの大台を割り込んだ。トランプ大統領が就任した17年1月の水準に戻っている。そこからダウ平均は1万ドル近く上昇したが、ここ1か月の間にその分が消えてなくなった。さらに週末にも下落は続き、ダウ平均は週間最大4012ドルの大幅な値下がり。終り値は1万9000ドルに接近している。

新型コロナ肺炎がヨーロッパに広がり、アメリカは海外からの入国を規制せざるをえなくなった。またニューヨーク市をはじめ多数の地域が、人々の移動を抑制し始めた。アメリカ人にとっては、この戦時中のような規制措置が大きなショックとなっているようだ。この不安が嵩じて、投資家は国債や金なども現金に変える動きを強め、ドル相場が急騰する事態を招いている。

日経平均も先週は878円の値下がり。ただ先々週のように1日1000円を超すような上下動はなくなり、やや落ち着いてきたようにも見受けられる。これは日本のコロナ感染状態が比較的に安定していること、それにドル高で円安が進行したことによると考えられる。しかし世界の状態はまだ悪化しており、実体経済の収縮も続いているから、全く楽観は出来ない。

今週は26日に、2月の企業向けサービス価格。27日に、3月の東京都区部・消費者物価。アメリカでは24日に、2月の新築住宅販売とPMI製造業景況指数。25日に、1月のFHFA住宅価格k。26日に、10-12月期のGDP確報値が発表される。

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (2)

2020-03-21 07:56:38 | なし
◇ 中国は終息に近づく? = 前回に続いて新型コロナ肺炎の危険度を、死亡者の推移から計測してみた。感染者の数は検査の密度によって違いが出るが、死亡者の数は危険度の大きさをより正確に反映すると考えられるからである。日本時間20日午前0時の時点で各国の発表を集計してみると、まず死亡者の人数は1位が中国で3245人。次いでイタリアが2978人、3位はイランで1284人となっている。続いてスペイン、フランスの順。日本は40人で、8か国中でいちばん少なかった。

ただし20日までの1週間に増加した人数を比べてみると、大きく変化したことが判る。増加数が最も大きかったのはイタリアで、なんと2151人も増えた。続いてイランが855人、スペインが683人の増加となっている。中国はわずか76人にとどまっており、この調子だと来週はイタリアの死亡者数が中国を抜いて1位になることは確実だと思われる。

この傾向は、すでに人口100万人当たりの死亡者数には明瞭に表われている。1位はイタリアで49.1人ときわめて高い。続いてスペインが16.4人、3位がイランの15.7人だった。中国は2.27人で、8か国中5位にとどまっている。アメリカは0.5人で7位、日本は0.3人で8位だった。この増加数を前週と比べてみると、中国の0.07人増が最も少ない。

これらの数字から読み取れることは、まず中国が終息の状態に近づいたらしいこと。イランの危険度は高いままだが、それよりも急激に危険度が高まっているのはイタリアとフランス。さらにアメリカも危険水域に入りつつあるように見えることだ。その一方で、100万人当たりの死亡者増加数は韓国が0.5人、日本が0.1人できわめて落ち着いている。

消費税を一時ゼロに : 景気対策 (下)

2020-03-19 08:26:49 | 景気
◇ 特別国債を日銀が直接引き受け = FRBは政策金利をゼロに引き下げ、日銀はETF(上場投資信託)などの買い入れ限度を2倍に引き上げた。だがダウ平均も日経平均も、大幅に続落した。この程度の金融政策では、景気の悪化は防げない。さらに金融政策ではもう景気の悪化は防げないと、市場が判断したためである。すると残るは財政政策しかない。

財政出動の話になると、いつもネックになるのが財源をどうするかだ。しかし今回はそんなことを言ってはいられない。コロナ対策特別国債を発行して、日銀がこれを直接引き受ける。現在のように日銀が市場を通して買い入れると、長期金利が変動する。それが市中金利や円相場に跳ね返ると、厄介な現象が起こりかねない。それよりも日銀が額面で引き受ければ、国債費も不要になるだろう。問題もあるけれど、議論している暇はない。

どんな対策を講じたらいいのか。政府は各家庭に現金5万円を配る案を検討しているようだが、これは愚策。いまのように旅行やイベントが規制されている状態では、おカネをもらっても使いようがない。また補正予算を組んで公共事業を増大しようとしても、人手不足がネックに。所得税や住民税の減税も、実現するまでに時間がかかり過ぎる。

効果的なのは、消費税の減免だろう。20年度予算で消費税収の見積もりは21兆7000億円。景気対策には少なくともこの程度の金額が必要だから、思い切って税率をゼロにしてしまう。この方法なら、たとえば5月からとか6月からとか、年度の途中でも実行できる。コロナ肺炎の終息が長引けばゼロ期間を延ばし、終息すれば止める。相対的に貧困層の負担感が余計に軽減されるので、野党も賛成しやすいに違いない。

       ≪18日の日経平均 = 下げ -284.98円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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