経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

驚異の20%成長 / イギリス

2021-08-19 07:53:48 | イギリス
◇ 日本は1.3%成長だったのに = イギリス統計局が発表した4-6月期のGDP速報によると、実質成長率は前期比で4.8%だった。これを年率換算すると、なんと20.7%という驚異的な数字になる。個人消費と政府支出が大きく伸びた。前期がコロナ不況でマイナス6.1%に落ち込んだことの反動、それにワクチン接種が進んで規制が段階的に解除された効果が加わった。それにしても、20%という成長率には目を見張る。

たとえばイギリスが離脱したばかりのEU。ユーロ圏19か国の4-6月期の成長率は、年率8.3%だった。アメリカは6.5%、日本はわずか1.3%しか成長していない。どうして、こんなに大きな差が生じたのだろうか。ことし1-3月期、イギリスではコロナの感染が爆発、ロンドンを含むイングランド全体のロックダウン(都市封鎖)が実施された。その後、ワクチンの接種が進み、4-6月期には飲食店の屋外営業が許可されている。

イギリス経済はEU離脱によって、少なからず打撃を被った。さらに4-6月期は半導体の不足で、自動車の生産が大きく落ち込んでいる。にもかかわらず規制の緩和で、景気は驚くほどの回復をみせた。この状況をみたジョンソン首相は、7月19日から規制の全面解除を決断。コロナ感染者が増えても経済を優先するという、大胆な“賭け”に打って出た。

この結果、イギリスのコロナ感染者は1日平均3万人近くも増加している。しかしワクチンの効果で、死亡者は1週間で500-600人程度に抑えられている。濃厚接触者は自宅待機を求められるが、街の風景はコロナ前の状態に戻った。このことは厳しい都市封鎖をすれば、解除によって経済は急激に回復することを示している。日本は規制が緩いから、解除しても成長率が低いのだろう。

       ≪18日の日経平均 = 上げ +161.44円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

バイデン大統領の 正念場

2021-08-18 07:03:02 | アメリカ
◇ 超党派で1兆ドル予算を可決したが = アメリカ上院は先週、総額1兆ドル(約110兆円)の「インフラ投資法案」を可決した。道路・橋、鉄道・電力網、EV充電施設などの新設、補強工事に使われる。採決では19人の共和党議員が賛成に回り、関係者をびっくりさせた。バイデン大統領は予算の総額を当初案より削り、また法人税の引き上げを見送ることで一部の共和党議員を懐柔。予想を上回る柔軟性を発揮したと評価されている。

バイデン政権は来年度予算の骨格となる「予算決議案」も、先週の上院で可決させた。総額は10年間で3兆5000億ドル(約386兆円)、幼児教育や子育て減税など、バイデン大統領の「アメリカ家族計画」を具体化した内容。企業や富裕層への増税案も含まれている。この「予算決議案」は「インフラ投資法案」と合わせて、下院に送られる。ところが下院は共和党が過半数を制しているから、難航するに違いない。バイデン大統領が、ここでも手腕を発揮できるかどうか。

ことし1月に誕生したバイデン政権。ここまでの成績は、かなり評価されていい。国内ではコロナで傷んだ景気の回復に成功、雇用情勢の改善も予想を上回っている。また国際面では、トランプ前大統領が破壊した西側同盟の再構築を果たしたと言えるだろう。法人税率の最低限度を設定したり、地球温暖化の抑制に向けたパリ協定へ復帰するなど、世界を大きく動かした。

もちろん、手つかずの問題も多い。膨れ上がった財政赤字の処理、分断された国民感情の修復。中国との関係、イランやアフガニスタンへの対応。どれ1つをとっても、きわめて難しい問題が山積している。そして来年11月の中間選挙。それまでにバイデン大統領が、どんな手を打つのか。前向きな評価が重ならなず、中間選挙に勝てないと、これまでの努力が水泡に帰してしまう可能性がある。正念場だ。

        ≪17日の日経平均 = 下げ -98.72円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

GDP成長率1.3%は 失政の証し

2021-08-17 08:03:53 | 景気
◇ 先進国のなかでは独り負け = 内閣府は16日、ことし4-6月期のGDP速報を発表した。それによると、実質成長率は年率で1.3%だった。判りやすいように各項目を年率換算でみると、個人消費は3.5%、企業の設備投資は7.0%、輸出は12.3%の増加となっている。設備投資は予想以上に伸びたが、個人消費は東京・大阪などへの緊急事態宣言発令のため伸びなかった。また輸出は、輸入が21.9%も増加したため成長要因とはならなかった。

実質成長率はコロナの影響で、ことし1-3月期にはマイナス3.7%に落ち込んだ。それがプラス成長に戻ったため、新聞やテレビは「2四半期ぶりにプラス回復」と解説している。だが国際的に比較すると、この成績は最低。たとえばアメリカは6.5%、ユーロ圏は8.3%、イギリスにいたっては20.7%、中国も5.3%の成長を達成した。日本の独り負けなのである。

最も大きい原因は、ワクチンの確保に後れをとったこと。これが最大の失政だったことは明白だ。だが発表されたGDP速報を点検すると、もう1つ大事な点に気が付く。それは公的資本形成が5.7%の減少となっていること。つまり政府の景気対策が不足し、成長率の押し下げ要因になっている。この点が欧米諸国や中国との差になった。

政府はコロナ対策として、20年度中に3回の補正予算を編成。総額75兆円もの予算を追加した。しかし、その内容は休業した店舗への補償やGO TO トラベルなど目先の対策に終始。挙句の果てに30兆円を使い残している。同時にインフラ投資などを進めた欧米諸国のような、将来を見据えた政策に欠けていた。その結果がGDPに表われたとすれば、これは失政と言わざるをえない。

         ≪16日の日経平均 = 下げ -453.96円≫

         ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2021-08-16 07:22:01 | 株価
◇ NYは高値追い、東京は足踏み = ダウ平均は先週307ドルの値上がり。終り値は3万5515ドルとなり、またまた史上最高値を更新した。高値での売り物をこなし、堅実に水準を切り上げている。7月の雇用が予想以上によかったこと、上院が1兆ドルのインフラ予算を可決したことなどが好材料となった。これで年初来の上げ幅は4900ドルに達した。

日経平均は先週157円の値上がり。しかし終り値では、2万8000円をわずかに割り込んだ。ちょうど1か月前の水準と同じだから、ずっと足踏みを続けていたことになる。年初来の上げ幅は533円。3月期決算では35%の増益になる見通しだが、株価にはあまり反映されない。というのもコロナの状態が悪化し、企業業績の先行きが不透明だからだ。

アメリカでは、7月の卸売り物価が前年比7.8%も高騰した。この上げ率は異常であり、市場もインフレ懸念から目をそらすわけにはいかなくなった。特にFRBの見解に注目が集まるだろう。一方、日本では“政治の季節”がやってくる。その先駆けは、22日に投開票が行われる横浜市長選挙。その結果次第では、政局が一気に動き出す可能性がある。

今週は16日に、4-6月期のGDP速報。17日に、6月の第3次産業活動指数。18日に、7月の貿易統計と6月の機械受注。20日に、7月の消費者物価。アメリカでは17日に、7月の小売り売上高と工業生産。18日に、7月の住宅着工戸数。また中国が16日に、7月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (74)

2021-08-14 06:40:06 | なし
◇ なぜ都市封鎖の準備をしないのか = 世界の感染者数は累計2億0474万人、この1週間で450万人増えた。死亡者数は432万4587人、1週間で6万7737人増加した。感染者の増加数は前週より増えたが、死亡者の増加数はやや縮小している。ただアメリカとメキシコでは、死亡者が前週より増加した。インドネシアでは1週間の死亡者が1万1288人にのぼっており、いぜん最悪の状態が続いている。

国別の死亡者数を累計でみると、アメリカが61万人台、ブラジルが56万人台、インドが42万人台、メキシコが24万人台。次いでロシアが16万人台、イギリスが13万人台、イタリアが12万人台、インドネシアとフランスが11万人台、ドイツが9万人台となっている。このほか東南アジアでは、フィリピンが3万人近く、マレーシアが1万1700人に増加した。

日本の感染者は累計108万9549人、この1週間で10万3096人増えた。前週より1万9971人拡大している。死亡者は1万5359人で、118人の増加。前週より52人増えている。状況はいぜん悪化しているわけだ。オリンピックは閉幕したが、東京など大都市での人出はむしろ増加した。入院できない患者数も増大しており、専門家は「医療体制の崩壊」を危惧している。

政府は東京都などの6都府県に緊急事態宣言、北海道などの13道府県にまん延防止等重点措置を発令した。だが、これでコロナが終息するかどうかは見通せない。いまは万一の場合に備えて「都市封鎖」が出来るよう、法的な準備をする必要があるのではないか。菅首相は「国民の安全安心のためには、なんでもやる」と繰り返し述べているが、政府・与党に「都市封鎖」の声はない。この決断力のなさが、国民の不安を助長している。

        ≪13日の日経平均 = 下げ -37.87円≫

        【今週の日経平均予想 = 2勝2敗】     

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