経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

評判が悪すぎる 超大型経済対策 (上)

2021-11-24 07:56:57 | 景気
◇ バラマキばかりで夢がない = 政府が決めた新経済対策の大きさには、多くの人が驚いた。財政支出の額は、なんと過去最大の55兆7000億円。当初予算の半分以上、日本のGDPの1割を上回る。だが、その評判はすこぶる悪い。全体的にバラマキの集大成となっており、その経済効果は線香花火のようにすぐ消えてしまう。将来を見据えた成長戦略に乏しいから、夢がない。というのが不評の大きな理由だ。

新経済対策は4つの分野から構成されている。それは①コロナ対策。低所得世帯への10万円給付など、財政支出は22兆1000億円②当面の景気対策。GO TO トラベルなど、9兆2000億円③新しい資本主義。看護師の賃上げなど、19兆8000億円④防災・国土強靭など、4兆6000億円。一過性の対策がほとんどで、なかには必要かどうか疑わしい施策も含まれている。

要するに自民・公明の与党が選挙で公約した施策を、目いっぱい詰め込んだ結果である。だが現金給付や赤字企業に対する補助金は一過性で、将来の成長を生み出さない。財政支出の総額がGDPの1割を超えるのに、政府自身もGDPは5.6%しか増えないと試算。民間の推計はもっと厳しく、GDPは1-3%しか増えないと予測している。

なかには首をかしげる対策も少なくない。コロナが終息したときには、溜った需要がどっと出てくる。そんなときにGO TO トラベルが必要なのか。賃上げした企業の法人税を減税するというが、企業の6割は法人税を払っていない。石油の元売りに補助金を出して、ガソリンなどの値上がりを防ぐというが、電気料金の値上げには手を着けない。その一方でEVの普及には400億円、データ・センターの地方分散には500億円しか支出しない。これでは将来の日本をどんな国にしようと考えているのか、全く判らない。

                          (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 上げ +28.24円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫


今週のポイント

2021-11-22 07:44:25 | 株価
◇ 超大型経済対策の評価は低い = 日経平均は先週136円の値上がり。コロナが急激に収まり、経済の正常化ガ進行し始めた。物価の上昇は気になるが、企業収益も上方修正されている。そんなところへ、総額55兆円を上回る超大型の新経済対策。しかし株価は意外に上がらなかった。対策の内容がほとんどバラマキに終始し、成長戦略が軽視されたと市場は感じ取ったようである。

ダウ平均は先週498ドルの値下がり。バイデン政権の110兆円にのぼるインフラ投資法案は成立したが、コロナが再拡大し始めた。さらに物価の上昇が続き、供給不足からクリスマス・セールの予想も下方修正された。加えてFRBが緩和政策の縮小テンポを速めるだろうという観測も強まっている。このため市場では、様子見の空気が広がった。

FRBは来年6月ごろ、緩和政策の縮小を完了する予定だった。それが、どの程度まで繰り上げられるのか。今週あたりからは、このことがニューヨーク市場にとっては最大の関心事になるだろう。一方の東京市場では、国債の大増発が金融市場にどんな影響を及ぼすか。新しい研究テーマになりそうだ。

今週は25日に、10月の企業向けサービス価格。26日に、10月の東京都区部の消費者物価。アメリカでは22日に、10月の中古住宅販売。24日に、7-9月期のGDP改定値と10月の新築住宅販売が発表される。

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫


死者が語る コロナ肺炎の危険度 (88)

2021-11-20 08:12:13 | なし
◇ 韓国で重症者が急増 = 世界の感染者は累計2億5502万人、この1週間で459万人増加した。死亡者は512万4079人で5万1397人の増加だった。感染者の増加数は8月末以来の大きさ、死亡者数も前週に続いて5万人を超えている。したがって世界全体の状態は悪化、特にロシアとヨーロッパ諸国の状況が悪い。またアジアでは、韓国で重症者数が急増したことが目立つ。

国別の死亡者数をみると、アメリカが累計76万人台で最も多い。次いでブラジルが61万人台、インドが46万人台、メキシコが29万人台、ロシアが25万人台。あとはイギリスとインドネシアが14万人台、イタリアが13万人台、イランが12万人台、フランスが11万人台となっている。ヨーロッパ諸国での再拡大が顕著で、行動規制を実施した国も多い。

アジアでは、韓国の状態が急激に悪化した。感染者の増加は1日3292人で過去最大を記録。重症者も累計5022人と過去最大に増え、ソウルのICU使用率は80%を超えた。ワクチン接種率が78.5%と高いのに状態が悪化したのは、接種から半年以上が経過した高齢者が免疫力を失ったためではないかと分析されている。

日本の感染者は累計172万5715人。この1週間で1118人増加した。死亡者は1万8340人で、前週より19人の増加だった。感染者も死亡者も、驚くほど減少している。ワクチン接種率は75.74%に達し、政府は行動規制をほとんど解除した。しかし日本の場合も、高齢者の多くが接種から半年を経過している。韓国の例もあることだし、決して油断はできない。

        ≪19日の日経平均 = 上げ +147.21円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     

他国のことを 非難できるのか : COP26

2021-11-19 07:40:18 | 環境
◇ 恥ずかしかった日本の姿勢 = イギリスのグラスゴーで開かれていたCOP26(国連気候変動枠組み条約・第26回締結国会議)が、4つの点で合意し閉幕した。①産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える努力を追求②石炭火力発電の段階的削減へ努力を加速③途上国への資金支援の拡充④国際排出枠の取引ルール――である。このうち石炭火力については「段階的廃止」という表現になるはずだったが、土壇場でインドや中国が反対し「段階的削減」に修正された。

このため会場では、インドや中国を‟悪者扱い”する空気が発生したことは確かである。日本の新聞やテレビも「わからず屋の反対でCOP26には汚点が付いた」ように報道。また「地球温暖化問題は、先進国の手に負えなくなった」という解説も現れた。しかし会議に参加した多くの人たちは「日本のマスコミが、そんなことを言うのはおかしい」と感じたという報道もある。

岸田首相はこの会議で演説。日本の「30年度の温暖化ガス排出量を13年度の46%に削減する方針」を説明した。しかし、この方針では30年度の電源構成に占める火力発電の比率が41%にもなっている。このことが判ると、参加国からは失望の溜息が漏れた。日本は「温暖化防止に積極的ではない」という強い印象を与えてしまったわけだ。

おまけに岸田首相は、演説を終えるとすぐに帰国してしまった。残った山口環境相は、日本の方針を詳しく説明するための記者会見も開かなかった。そんな国のマスコミが、インドや中国を非難する資格があるのか。参加国の多くが、そう感じた。日本政府は、なぜもっとCOP26の場を大事にしなかったのか。日本のマスコミは、なぜもっと日本政府の消極的な姿勢を報道しなかったのか。

       ≪18日の日経平均 = 下げ -89.67円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

インフレーション 襲来!(下)

2021-11-18 08:15:49 | 物価
◇ スタグフレーションになれば最悪 = 物価の騰貴は、各国の経済にさまざまな悪影響を及ぼす。たとえば、FRBが金融緩和政策の縮小を決めたばかりのアメリカ。FRBはインフレを阻止しようと、縮小のテンポを速めるかもしれない。そういう見方が強まったことから、すでに各種の金利が上昇し始めた。すると金利に惹かれて資金がアメリカに還流、為替市場では各国通貨に対してドルが高くなる。

資金が流出する新興国では、自国通貨が安くなる。このため輸入物価が上昇、インフレが加速する。これを防止するため、すでに中南米諸国を中心に30か国以上の国が金利を引き上げた。金利の上昇は、景気の回復を抑制する。こうして、いまや多くの新興国がインフレを阻止するために、経済発展を犠牲にせざるをえなくなった。

日本でも円の対ドル・レートが下落、輸入物価を押し上げている。運悪くエネルギー価格の高騰と重なったから、輸入物価の上昇は加速した。たとえば10月の輸入物価は、前年比で38.0%も上昇している。ガソリン・灯油・電気料金のほか、プラスチック製品・食用油・小麦粉など生活必需品の値上がりが相次いでいるのは、このためだ。

いったん上がった物価は、なかなか下がりにくい。金融を引き締めると需要は抑制できるが、供給面にも冷水を浴びせることになりかねない。景気を重視した対策は物価の上昇を促進し、物価を抑制する政策は景気を悪化させる。そして放っておくと、物価上昇と景気の後退が同時に発生しやすい。これがスタグフレーションと呼ばれる現象だ。いまから用心すべきである。

        ≪17日の日経平均 = 下げ -119.79円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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