経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

インフレーション 襲来!(上)

2021-11-17 08:14:30 | 物価
◇ 世界各国で物価が急騰中 = インフレーションがやってきた。アメリカ労働省が発表した10月の消費者物価は、前年比6.2%の上昇。実に31年ぶりの6%台を記録して、多くの専門家を驚かせた。ガソリンは50%、食品も5%の上昇である。一方、中国では10月の卸売り物価が前年比13.1%の急騰ぶり。石炭は前年の2倍、石油やLNG(液化天然ガス)は60%も高騰している。

EU統計局の発表によると、ユーロ圏19か国の10月の消費者物価は前年比4.1%の上昇だった。やはりエネルギー価格を中心に、食品や日用品など幅広い品目が値上がりしている。そして日本でも、10月の企業物価が前年比8.0%の上昇となった。40年9か月ぶりの伸び率である。石炭・石油製品が44.5%、非鉄金属が31.4%も値上がりした。このほか、ほとんどの新興国で物価の上昇が著しい。

こうした物価指数から判断して、世界にはインフレの波が押し寄せたと考えていい。ただ現時点で特徴的なのは、アメリカやユーロ圏、それに新興国の多くは消費者物価が上昇していること。これに対して中国と日本は、まだ物価の上昇が卸売り段階にとどまっていることだ。中国や日本の場合は、景気が悪く川上から川下への価格転嫁が出来ないことを示している。しかし時間とともに、川下の物価も上昇するだろう。

一般にインフレは、需要超過あるいは供給不足によって惹き起こされる。ところが今回は需要超過と供給不足が、同時に発生した。コロナによる行動規制が解除され、溜っていた需要が一気に増大する。しかし供給が、それに追い付かない。さらに供給網の混乱、人手不足がそれに輪をかけた。そのうえ原油などエネルギー価格の高騰が、追い討ちをかけている。今回のインフレは複雑な要因から発生しており、それだけ悪質だと考えなければならない。

                         (続きは明日)

        ≪16日の日経平均 = 上げ +31.32円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫


ひとり負けの 日本経済

2021-11-16 07:53:35 | 景気
◇ 7-9月期はマイナス3.0%成長 = 内閣府は15日、7-9月期のGDP速報を発表した。それによると、年率に換算した実質成長率はマイナス3.0%。事前の予想を大きく上回る悪化となった。個人消費、住宅投資、企業の設備投資、輸出のすべてが減退している。コロナ感染の拡大で緊急事態宣言が発令され、半導体の不足で新車の供給が滞ったことが主な原因。オリンピックが開催されたのに、大きなマイナス成長になってしまった。

比較しやすいように各項目を年率換算してみると、個人消費はマイナス4.7%、住宅投資はマイナス10.1%、設備投資はマイナス14.4%、輸出はマイナス8.3%だった。この先10-12月期については、規制の解除でプラス成長に転じるだろう。しかし21年度を通じてプラス成長になるかどうかは微妙だ。

アメリカも7-9月期はコロナ規制の真っ最中だったが、それでもプラス2.0%の成長を維持した。ユーロ圏はプラス9.1%の成長を達成している。日本のひとり負けだ。もちろん、国によってコロナ感染の山と谷が異なったという事情はある。しかし、ここで考えさせられる点が2つ。その1つは、日本の成長率は19年度がマイナス0.5%、20年度がマイナス4.4%。さらに21年度も前半はマイナス成長だ。にもかかわらず、政府はこの間ずっと「景気は回復基調」と発表してきたこと。

もう1つは7-9月期の速報をみると、政府の消費支出が4.7%増加したのに、公的固定資産形成は5.8%減少している点。消費はコロナ被害の救済費で増えたが、景気対策としての投資は減ってしまった。これが成長率のマイナスを大きくしたことは間違いない。またアメリカやユーロ圏との違いでもある。「景気は回復基調」という思い込みが、そうさせたのだろうか。

       ≪15日の日経平均 = 上げ +166.83円≫

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2021-11-15 08:09:34 | 株価
◇ 買いの意欲は衰えず = ダウ平均は先週228ドルの値下がり。10月の消費者物価が31年ぶりに大きく上昇、景気回復の足を引っ張るのではないかという懸念が広まった。またFRBの引き締め政策が早まるという思惑が働いて、各種の金利が一斉に上昇した。市場はこれを嫌気して下げている。しかし株価が下がると、すぐに下値拾いの買いが入る。週の終り値は3万6000ドルを回復した。

日経平均は先週1円60銭の値下がり。10月の企業物価が40年ぶりの大幅上昇となったが、こちらは株価にも金利にも響かなかった。ニューヨーク市場が軟調だったにもかかわらず、東京市場は企業決算の上方修正、岸田内閣の経済政策、それに円安を材料に持ちこたえた。ただ日経平均が3万円を回復するだけの元気はない。

ニューヨークの株価は、引き続き物価と金利の動向に左右されるだろう。またFRBが国債などの買い入れを、どれだけ減らしたか。その発表にどんな反応を示すのか。一方の東京市場は、きょう発表される7-9月期のGDP速報と、週末に公表される新経済政策をどう評価するか。

今週は15日に、7-9月期のGDP速報。16日に、9月の第3次産業活動指数。17日に、10月の貿易統計、9月の機械受注。19日に、10月の消費者物価。アメリカでは16日に、10月の小売り売上高と工業生産。11月のNAHB住宅市場指数。17日に、10月の住宅着工戸数。また中国が18日に、10月の小売り売上高、鉱工業生産、固定資産投資額を発表する。なお19日に、岸田首相が新経済政策を発表する予定。

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (87)

2021-11-13 08:02:55 | なし
◇ 死亡者ゼロの日が出た日本 = 世界の感染者は累計2億5043万人、この1週間で232万人増加した。死亡者は507万2682人で、週間の増加数は5万0520人。感染者の増加は前週より縮小したが、死亡者はやや拡大した。全体の傾向に変化はない。しかしインドやインドネシア、それに日本では状態が大きく改善した一方で、ヨーロッパを中心にコロナの再拡大が目立ち始めた。WHO(世界保健機構)は、警鐘を鳴らしている。

国別に死亡者の動向をみると、アメリカは累計75万9062人。前週より8607人増加した。次いでブラジルが61万人台、インドが46万人台、メキシコが29万人台。あとはロシアが24万人台、インドネシアとイギリスが14万人台、イタリアが13万人台、イランが12万人台、フランスが11万人台で続いている。このうちインドはこの1週間で2537人、インドネシアは105人の増加にとどまっている。

ロシアは11月7日までの9日間、全土で企業の活動を停止したが、効果はほとんど出ていない。死亡者はこの1週間で8216人増加した。またポーランドやオランダ、ドイツなどのヨーロッパ諸国で、感染者が急激に増えている。ドイツの場合、先週末には1日の感染者数が4万人近くに達した。ヨーロッパでは多くの国が、再び何らかの行動規制を実施する模様だ。

日本の感染者は累計172万4597人。この1週間で1348人の増加だった。死亡者は1万8321人で、前週より27人の増加。11月7日には感染者が162人、死亡者はゼロを記録した。死亡者が出なかったのは、昨年8月2日以来のことである。ただ緊急事態宣言などの規制がすべて解除され、海外からの来日者についても規制が大幅に緩和された。このため感染者数は、近く増加に転じるのではないかと心配されている。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +332.11円≫

        【今週の日経平均予想 = 0勝5敗】    


賃金は6年前より 15%減った

2021-11-12 07:40:50 | 賃金
◇ 岸田首相の促進策は有効なのか = 厚生労働省は9日、9月の毎月勤労統計を発表した。それによると、1人当たりの現金給与総額は27万0019円。前年に比べて0.2%増加した。このうち基準内賃金に当たる所定内給与は0.1%の増加、残業料に当たる所定外給与は4.4%の増加だった。所定外給与が伸びたのは、コロナの影響で昨年9月は残業が著しく減ったことの反動。残業時間は、昨年より3.4%増えた。

一般労働者の現金給与総額は34万8845円で、前年比0.8%の増加。またパートタイム労働者は9万6261円で、前年比1.8%の減少だった。最低賃金の引き上げでパートの時間当たり給与は平均1229円となったが、現金給与総額は減少した。最低賃金引き上げと関係があるのかどうか、精査してみる必要があるだろう。

問題は長い目で見ると、賃金がかなり下落していること。2015年=100の指数で現金給与総額をみると、9月は85.6。一般労働者は85.0、パート労働者は98.3となっている。つまり給与はこの6年間で15%ほど減少したことになる。また、これを実質賃金でみると、9月の指数は82.8だった。

岸田首相は景気回復の切り札として、中間層の賃金アップを掲げている。その方策として、賃上げを実施した企業の法人税を減税するという。だが日本の企業の4割近くが、法人税を支払っていない。税金を払えるほどの利益を出していないからだ。そうして、こういう企業に働く人の賃金が、むしろ上がっていないはず。しっかり考えてくれないと、中間層の賃金を底上げすることは難しい。

        ≪11日の日経平均 = 上げ +171.08円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ≫


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