経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

利益が減っても 下がらない株価

2023-03-07 07:43:20 | 株価
◇ 金融バブルの残り火 = 先週末のダウ平均株価は3万3391ドル、年初に比べると244ドルの値上がりだった。同様に日経平均の終り値は2万7927円、年初来1832円の値上がりだった。ことしに入ってダウ平均は3万2500ドルと3万5000ドルの間を行ったり来たり。日経平均も2万5500円ー2万8000円のボックス圏から抜け出せなかった。それでも日米の株価は、ともに値下がりはしていない。

ところが企業の業績は、この間に大きく悪化している。アメリカでは物価上昇の勢いがなかなか収まらず、FRBの金融引き締めは長引く見込み。このため景気後退は避けられず、その影が企業の業績にも表れ始めた。ファクトセット社の集計によると、主要500社の1株当たり利益は22年の217ドルから、23年は190ドルに減少する見通し。

日本も似たような動き。コロナ規制の解除で経済の正常化ガ進むことは、唯一の明るさ。だが物価高で、個人消費や設備投資は委縮し始めている。欧米の景気が悪化し、中国の回復も緩やかになりそうだから、環境もこれから悪くなる。日経新聞が上場企業1153社の10-12月決算を集計したところ、純利益は前年比7.3%の減少となった。この3月期決算の見通しも、全産業で2.2%の増益と業績は急速に落ち込む。

業績が悪化する一方で株価が下がらなければ、PER(株価収益率)やPBR(株価総資産倍率)は悪化する。にもかかわらず株価が下落しないのは、まだ市場に豊富な資金が滞留しているからだと考えるしかない。FRBが金融緩和で市場に放出した資金量は、およそ9兆ドル。昨年6月から始めた量的引き締めで回収した資金は、まだ1兆ドルにも達していない。引き締めの効果が現われるまでには、まだ時間がかかりそうだ。

        ≪6日の日経平均 = 上げ +310.31円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2023-03-06 08:02:29 | 株価
◇ 業績との乖離が進む株価 = ダウ平均は先週574ドルの値上がり。終り値は3万3000ドル台を回復した。前半はPCE(個人消費支出物価)の上昇が加速したり、イエレン財務長官が「インフレは一直線に鈍化しない」と発言。株価を押し下げた。しかし木金の2日間で730ドルも反発。目立った材料は出なかったが、長期金利が下落したことだけを頼りに上昇している。

日経平均は先週474円の値上がり。終り値は2万8000円に接近した。ニューヨーク市場に引っ張られたほか、中国人に対する水際対策の緩和で中国関連銘柄に買いが集中。相変わらず出遅れ株に対する買い気も強かった。10-12月期の法人企業統計で経常利益が8四半期ぶりに減少したが、市場はあまり注目していない。

ウオール街では「ことし後半には利下げ」という見方が全く消え、逆に「次回の利上げは0.5%になる」という観測が強まっている。と同時に「景気後退入りは免れない」との予測も広まってきた。そして実際、企業の業績は下向きに。にもかかわらず株価は上昇するので、業績と株価の乖離は開くばかり。こうした傾向は、いつまで続くのだろうか。

今週は8日に、2月の景気ウオッチャー調査。9日に、10-12月期のGDP改定値。10日に、1月の家計調査、2月の企業物価。アメリカでは8日に、1月の貿易統計。10日に、2月の雇用統計。また中国が7日に、2月の貿易統計。9日に、2月の消費者物価と生産者物価を発表する。

         ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

日本人は 絶滅危惧種!? (下)

2023-03-04 08:23:43 | 人口
◇ 世界一の大富豪が‟日本消滅”を危惧 = 厚労省は22年の死亡者数も発表した。それによると、年間の死亡者は前年より8.9%増えて158万2033人。戦後では最多を記録した。コロナでは3万9000人が亡くなっている。昨年80万人を割り込んだ出生数から、この死亡者数を差し引いた数字が人口の自然減。昨年は78万2305人で過去最多。ほぼ山梨県と同じ人数が、1年間で減少した。

日本の総人口は、2008年の1億2808万人がピークだった。それから減り始め、21年には1億2550万人となっている。この間、減少幅はしだいに拡大。また年齢構造的に、少子高齢化ガ進んだ。人口の自然減は、過去16年にわたって続いている。仮に現在の傾向が続いたとすると、日本の人口は200年後に1000万人を割り、3300年にはゼロになるという試算もある。まだ数字を弄んでいる段階だが、少子化の勢いは止めにくいことも確か。

テスラの創業者で世界一の富豪といわれるイーロン・マスク氏は、大の日本びいき。そのマスク氏がツイッターに「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう。世界にとって、大きな損失となる」と書き込んで、話題となった。ちなみにマスク氏は最近ツイッターを買収、その資産は200億ドル(2兆6000億円)を超えるといわれる。また双子と三つ子を含む9人の子持ち。

国が豊かになると、出生率が低下する。たとえば中国も少子化で、人口が減り始めた。子育てに必要な資金不足も大きな原因には違いないが、若者の価値観が変化することも大きな要因に。したがって経済面からの支援も効果はあるが、それだけで少子化は止まらない。日本も移民政策の確立や生産・流通面での徹底したロボット化など、人口の縮小に対応した政策が必要になっている。

        ≪3日の日経平均 = 上げ +428.60円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】    

日本人は 絶滅危惧種!? (上)

2023-03-03 07:39:23 | 人口
◇ おカネだけでは止められない少子化 = 厚生労働省は28日、昨年の外国人を含む出生数が79万9728人に落ち込んだと発表した。統計を取り始めた1899年以来、初めて80万人を割っている。コロナの影響もあって前年比は5.1%の減少、21年の3.4%減少から加速した。岸田首相は「危機的な状況だと認識している」と述べ、政府は3月中に総合的な少子化対策をまとめる方針。

出生数の長期的な推移をみると、最大だったのは第1次ベビーブームと言われた1947-49年の年間269万6000人。次は第2次ベビーブームだった71-74年の年間209万2000人。そこからは急な下り坂を転げ落ち、少子化ガ急速に進んでいる。この間、たとえば保育サービスや児童手当などを合計した家族関係社会支出は、90年度の1兆6000億円から20年度の10兆8000億円へと大幅に膨らんだ。しかし少子化の勢いは少しも緩んでいない。

いま岸田内閣は、①経済支援の強化②子育てサービスの充実③仕事と育児の両立支援--を3本柱に、家族関係社会支出を倍増させると意気込んでいる。その財源を巡って、国会で論争が行われていることは周知の通りだ。しかし過去30年間の実績からみて、こうした財政支援で少子化が収束するとは考えられない。少子化はおカネだけで解決できる問題ではないからだ。

たとえば子ども1人当たり年間100万円を支給するとでも言えば、話は別。だが、そんなおカネは出しようがない。また働く人たちの実質収入が毎年3%ずつ増えると保証すれば、出生数は必ず増えるだろう。だが、そんな経済成長も望めるはずがない。おカネでダメなら、あとは若い人の結婚観や家族観が変わるのを待つしかない。しかし、それには時間がかかるし、変わる可能性があるかどうかも判らない。

                        (続きは明日)

        ≪2日の日経平均 = 下げ -17.66円≫

        ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

木を見て森を見ない 新・原発政策 (下)

2023-03-02 08:04:18 | エネルギー
◇ エネルギー計画も作らない杜撰さ = いま日本は年間およそ1兆㌔㍗時の電力を生産し、消費している。その電力をどんなエネルギー源で生産するかを決めるのが、エネルギー計画の中核となる電源構成。21年度の実績は、再生可能エネルギー20.3%、原子力6.9%、火力72.9%となっている。このうち火力発電に使う原油・石炭・天然ガスなどの輸入価格が暴騰した。だから「原発を最大限活用する」という考え方は、必ずしも間違いではない。

だが太陽光や風力など再生エネルギーの活用も、きわめて重要だ。ところが今回の新・原発政策には、その視点が全くない。原発の新増設だけに、マトを絞ってしまった。これは明らかに経産省の跳ね上がりすぎ。このため唐突な感じは否めず、反対論を強める結果につながった。岸田首相も「これでは具合が悪いかな」と感じたのだろう。

福島原発の大事故によって、多くの日本人が原発アレルギーを持ったことは事実だろう。そんなところへ、突如という感じで「古い原発の60年を超す運転、次世代型原発の新設」という新政策を突き付けられた。心配や反対の声が上がるのは、むしろ当然かもしれない。ただ国民の多くは、必ずしも「原発、絶対反対」ではない。「無くて済むなら、それに越したことはない」と考える人が大半だろう。

原油・石炭・天然ガスの輸入量を減らすために、「まず再生可能エネルギーによる発電を増やす。政府は補助金を出して、太陽光や風力発電の普及を推進する。それでも不足する分は、原発に頼らざるをえない。だから古い原発の寿命を延ばし、次世代原発の新設にも取り組む。その結果、10年後の電源構成はこうなる」--こんな新エネルギー計画ならば、国民の多くは理解してくれるはずだ。岸田さん、森を見よう。

        ≪1日の日経平均 = 上げ +70.97円≫

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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