蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

ナニー って、なに? (bon)

2011-10-16 | 日々雑感、散策、旅行

いつもながら、話題を提供してくれる友人からの記事を転載します。
すこし長めですが、映画を見るようなうらやましい現実の富裕層の生活と、ナニー
の姿、役割・・・そして、必然性など興味ある記事なのでここにご紹介しました。

この後、今日は同総会で奈良に向かいます。久しぶりの面々にお会いできるのを
楽しみにしています。

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COURRiER Japon 2011年11月号 p46-49

   「『スーパー・ナニー』を知っていますか」
    Text by Fiona Neill
    from サンデー・タイムズ・マガジン(UK)

【要旨】中国やロシアなどの新興国ではニューリッチと呼ばれる富裕層が登
場。安全で便利なヨーロッパの土地に居住するようになってきている。英国
のロンドンもそうした土地の一つ。英国の貴族や裕福な家庭では19世紀のヴィ
クトリア朝の時代から、貴族の間で子どもの養育係となる使用人を雇う習慣
があった。現在英国では「ナニー」と呼ばれるその養育係は、新興国のニュー
リッチなどにも雇われるようになってきているのだ。本記事は、年収1500万
円にもなることがある高給や数々の特典を得ているナニーの実態に迫るもの。
数人のナニーや関係者への取材をもとにしたこのルポルタージュは、現代の
超富裕層の生活観、育児や教育に関する問題などを浮き彫りにするものとなっ
ている。
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 90年代末期、UHNWIsと呼ばれる超富裕層(3000万ドル以上の投資可能資産
を保有する個人を意味する金融用語)は英国に数えるほどしかいなかった。
ナニーにとって一番のお得意様は、税金対策でジュネーブやモナコに移住し
た英国人や中東の王族、あるいは裕福な米国人セレブなど、国外在住の人ば
かりだった。15年前に高級ナニー専門の紹介所「インペリアル・ナニーズ」
を立ち上げたサラジェーン・アンブローズによると、当時のクライアントで
最も裕福だったのはロックスターなどのセレブで、それ以外はかなり平均的
な中産階級の家庭だった。

 だが2000年以降、ロンドンが世界金融の中心地となると、状況は一変した。
子どもの養育に適した安全な居住地を求めて、世界中のスーパーリッチ、と
りわけロシアや中国といった新興国のお金持ちがロンドンに注目するように
なったのだ。彼らを惹きつけたのは、公立学校の質の高さ、不動産、英国文
化、時差の都合がいいこと、優遇税制措置、そしてリベラルな銀行システム
だ。

 家政婦や庭師、掃除夫、運転手など必要な使用人がひととおり揃った家庭
が、ロンドン中心部のあちこちに急に出現し始めた。ナニー階層のトップに
君臨するのは、伝統的な英国人ナニーだ。英国では、ナニーは昔から専門職
とされ社会的評価が高い。一方、外国人は自分の子どもに、英語を母国語と
する人から英語を学んでほしいと願っている。需要が供給を上回り、ナニー
の給料もそのぶん上がった。
 アンブローズは08年の信用不安以降、このビジネスが下火になる日が来る
のではないかと懸念しているが、現在のところその心配はなさそうだ。スー
パーリッチは厚い富で守られていて、世界市場に変動があってもその影響を
受けることはない。

 女優のグウィネス・パルトローが最近、2ヵ国語以上話せて正統な教育を
受けたナニー兼家庭教師を6万ポンド(約 730万円)で募集した際は、信じ
られないという反応が広がった。だがアンブローズによると、そのくらいの
金額は珍しくもないそうだ。
 これまで、ナニーに対して最も金払いがいいのは中東の王族だったが、こ
の数年でロシア人が取って代わった。アンブローズのクライアントのロシア
人は、気に入ったナニーが別のところに採用が決まったのを知り、即座に週
給を1000ポンドから1500ポンドに引き上げた。

 住み込みナニーの場合、インペリアル・ナニーズの相場は週給 500ポンド
以上。この基本給に、食事、ロンドン市中心部という魅力的な環境にある部
屋が提供される。車も与えられるのが普通で、車種を指定するナニーも少な
くない。飛行機はビジネスクラス以上でなければ搭乗拒否、格安航空会社は
利用しないと契約書に明記するナニーもいた。

 度肝を抜くような厚待遇もある。イタリア人雇用主がクローゼット1本分
の服を買ってくれた。サウジアラビアの王族との契約終了時に一軒家をプレ
ゼントされた、等々。ただし、こうした特典と引き換えにナニーたちには、
長時間勤務、いつ何時でも呼び出しに応じること、自身の社交生活を断念す
ること、そしていつでも旅行に同行することが求められている。

 「誰もがこの仕事に向いているわけではありません」とアンブローズは言
う。「まったくの異文化、途方もない財力を有する環境、家庭ごとの価値観
に直面することになるのです。週に6日、1日24時間待機するよう求めるロ
シア人家族もいます。子どもたちには常にボディーガードがついていて、い
たるところに監視カメラがある。飛行機で世界各地を飛び回るジェットセッ
ターなので、年がら年中、旅行の荷造りや荷ほどきに追われることになりま
す。それに子どもへの期待はとても大きい。一流ブランドの服を着せられた
子どもたちが、泥んこになって遊ぶことは許されません」

 24歳のニックは大学卒業後、公立校で教師の見習いをしていたが、高給と
旅行の機会がありそうなことに惹かれて、11歳の英国人少年のナニーを引き
受けた。この雇い主の財力は、想像を超える規模だった。たとえば、家族旅
行に初めて同行したときのことだ。アルプスで1週間過ごした後、イタリア
にある別荘に向かうことになっていた。イタリアで使わない服をわざわざ持っ
て行かなくてすむよう、運転手をロンドンからアルプスまで呼び寄せた。山
用の服が詰まった5つの大型スーツケースを、海で過ごす休日に相応しい服
の入った5つのスーツケースと取り替えると、再びロンドンの自宅まで車で
運んで帰らせたのだ。

 現在50代のパトリシアは、ロンドンと田舎の別荘を行き来する英国人一家
のために働いたことがある。母親は、子どもが朝食をとる時間に起きてきた
試しがなかった。4人目の子どもが生まれたが、夜泣きをすると、夫婦はロ
ンドン市内の豪華ホテルに移動してしまう。「子どもが何人もいるのに、彼
らに対する責任を負おうとしないのです」とパトリシアは言う。「なかには
ネグレクト(育児放棄)といえるケースもあります。でも、こうしたことに
あまり情を入れすぎて考えるようでは、ナニーとして失格です」

 ニックは言う。「ナニー市場の一番上の層でもネグレクトはあります。子
どもたちは物質的には恵まれていますが、感情面ではネグレクトされていま
す。こうした裕福な親たちは子どものそばにいたがらず、お金を払って子ど
もの面倒を存分に見てくれる人を雇うことで、自らの罪の意識を和らげてい
るのです」

 ニックはやがて、自分の一番の役割は、少年に、他の人たちがまったく異
なる暮らしをしていることを教えることだと思うようになった。「自分がど
れほど恵まれているかを認識できる、ちゃんとした人間にしてやりたかった
のです。すべてを与えられている人間に対し、他人がつらく当たる場合もあ
ることを彼が理解できるよう、真の価値観を育んでやりたいと思いました」

 一方、パトリシアも「人生が本当はどうなっているのかを示す」ために、
世話をする子どもたちを、タクシーばかりではなくバスに乗せるようにして
いる。また、自分の寝室は自分で整理整頓させるようにしている。「適切な
パラメータを確立することでこうした子どもたちの傲慢さを解消することは
可能です。お金を持っているだけでは人生を歩んでいくことはできません。
自分を支える内なる力を育む必要があるのです」

 過去3年間に私が取材したナニーの誰もが、世話をした子どもを羨んでい
ないことがわかる。パトリシアは、ナニーの仕事はワーキングマザーの家庭
に限って引き受けることに決めた。そうした家庭の子どもはそれほど甘やか
されておらず、心から役に立ちたいと思えるからだ。

コメント: ナニーは米国では「ベビー・シッター」にあたるのだろう。日
本人にとってもナニーよりもこちらの呼び名の方が馴染みがあるのではない
だろうか。しかし、米国のベビー・シッターは、一般の中高生の間でポピュ
ラーなアルバイトであり、利用する家庭もごく普通の家庭だろう。本記事で
描かれているようなナニーは、片手間のアルバイトではすまない、れっきと
した専門職。幼少期に生活をともにする存在であるナニーは、学校の先生よ
りも深い影響力をもつ。たとえば新興国の将来を担うリーダーとなるような
子女に教養のある英国人のナニーがつけば、そこで文化の融合が起こるので
はないか。うまくいけば、両国の良いところをバランスよく継承した新しい
タイプのリーダーが生まれてくる可能性もある。そのためには、教育者とし
て高い意識をもったナニーが増えてこなければならない。その質を確保する
ための報酬と考えれば、それほど高給に驚くこともないのかもしれない。

Copyright:株式会社情報工場

音楽も少し長めですが・・・

Arther Rubinstein Chopin66

<!-- Chopin Fantaisie Impromptu in C sharp Minor, Op. 66 Posth -->







コメント (1)
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