今日から12月に入りました。カレンダーもこの1枚を残すのみとなり、
肌寒い雨の朝を迎えました。 インフルエンザは、早くも流行時期に
入ったとの報があり、くれぐれも気をつけたいところです。
好評の“若さんの神楽坂研究”号外として、このほど届きました「不思議の国アメリカ
研究(1)」をお届けします。 若さんは、アメリカ通の一人で、今回も、日本で報道され
ていない トランプ次期アメリカ大統領とその選挙戦略などについて述べられています。
続編が期待されるところですが、とりあえず その1 をどうぞ・・。
*********若さんの不思議の国アメリカ研究(1)***********
トランプを大統領にしたTV番組(Apprentice)!
The guardian 2016/11/10「いかにアプレンテイス(TV番組)がトランプを大統領に導いたか」
次期大統領に当選したD. トランプが共和党候補として登場した時、政治家、評論家、マス
コミは全く泡沫的候補扱い、最後まで彼に対してはネガテイブなスタンスでした。 しかし
今回の当選の背景には、NBCTVの長寿リアリテイ番組「アプレンテイス(Apprentice)」
(2003-2015、14シーズン、NBCTV制作、日本ではセレブ版をWOWOWが放映)の存在が大きかっ
たのは間違いないと思います。特に彼はプロデューサー兼、番組プロジェクトのホスト(ボス)
を演じていました。最初は一般人参加でしたが、2008年からセレブ版(The Celebrity Apprentice)
にリニューアル。 セレブリテイ(=有名人、俳優、モデル、スポーツ選手、歌手)を見習い
(Apprentice)として様々な役割を与え仕事を遂行させる番組。その進捗、プロセスを番組
(エピソード)としてシーズンごとメンバーが変わります。最後に勝者一人を採用、脱落者の
中から一人を選び「お前は首だ(You’re fired!)」と宣告しシーズンが終了します。
番組でボスとしてセレブ達に対する振る舞い、言葉遣いは、選挙戦デイベートでも全く同じ
パターンでした。番組にトランプファミリー(イバンカ、Jr.、エリック)も出演させ、累計の
視聴者数は 1億5,400万人(米国人口の半分)しかも ほとんどが2時間番組でプライムタイム
放映でした。 トランプ本人、とファミリーほどTVプライムタイムでの露出時間を稼いだ対立
候補者は皆無。はっきりいって下品で粗野なふるまいですが、強力なリーダーシップを印象づ
け抜群の知名度を築き上げました。
大統領選挙の歴史を塗り替えたトランプ大勝利に世界中が驚愕しました。投票数では230万
票以上の負けでも、選挙人獲得では232:306の大差。キャンペーンに費消した費用は、史上
最大の選挙費用になると予想されていたのに、トランプ陣営はヒラリー陣営の半分、$300Mで
した(2012年オバマ陣営は$900M)。英国のガーデイアン紙もこのTV 番組の影響でキャンペー
ンに費消金額が少なく済んだということに言及しています。大統領執務室に入る彼がアメリカ
を地球上最も偉大な(Greatest)国として、偉大なショウのように継続させていけるかには
大きなリスクがありそうだと皮肉ってもいます。危惧すべきこと、政策の不透明さは多々あり
ますが、日米の株価は高騰、円安に大逆転し株式・金融市場はトランプ相場(歓迎モード)です!
セレブな出演者(ジャーナリスト、歌手、俳優、スーパー・モデル、スポーツ選手)
トランプ劇場Xネガテイブ・キャンペーン戦略
トランプのイメージ形成に有利だったのは、毎回テーマがチャリテイ(善行)だということ
です。ワンマン不動産王、決断力あふれる、カリスマ経営者そして「弱者の味方=善行者」で
す。 ダメなセレブ(スパースター選手、歌手、モデル)を首にするボスのイメージは、役に
立たない既存政治家をぶった切れるステレオタイプ・イメージを視聴者に与えました。実行力
のあるボス・イメージで、いわゆる下層中流(Lower Middle Class)に対して圧倒的優位な
伏線でした。 米国は各州とも、人口の約13%は貧困層で、海外生産や輸入品で職を失ったり、
景気の影響を受けやすい下層中流の構成比は約35%存在します。 従来の政治家同士の選挙には
あきらめを感じていたこの層に強力なメッセージを発射。 ヒラリーが取り込めなかったこの
底辺層は投票に動くと州で10万~50万票くらいの影響力があり接戦州(1-10-20万票差、1-2%差)
では勝敗左右する数字になります。ネガテイブなキャンペーンには、実に巧妙な計算がありました。
メキシコ不法移民バッシングで、フロリダ州の劇的勝利!
メキシコからの不法移民1,300万に対して強制送還、メキシコ政府の費用負担で国境に壁の
建設。不法移民の多い州=カリフォルニアに代表される民主党優位州では反発大きいのは織り
込み済み(もともと勝てない)。 しかし、接戦州のフロリダでヒスパニック(メキシコ系vs
キューバ系)の分断作戦に成功。 キューバ国交回復政策に反対し、カストロの迫害から逃れた
キューバ難民(100万人)を味方にしました。 前回わずか7万票差で負けたフロリダ州で15万
票差をつけ逆転、選挙人28人をもぎ取りました。選挙後カストロ死後の報に彼らは大パレード
です。トランプ次期大統領も独裁者の死のつぎは、国民の自由だと応援。
重工業、製造業衰退地域(Rust Belt)の労働者層の取り込み
オハイオ州で勝つと大統領選100%勝利のジンクスがあります。前回10万票差でオバマに負け
た州です。 共和党支持者の7割近くは労働者層で失業率増加に脅かされた州に多くいます。
TPP不参加、保護主義志向の表明による中流底辺層(労働者階層)の掘り起こしに成功、40万
票差の逆転大勝利でした。 この勝利の方程式は、前回僅差で負けた中西部、太平洋岸中部の
ペンシルバニア、ワイオミング、ミシガン州の奪取に成功し勝利を決定づけました。キャリア
コープ社(インデイアナ)はメキシコ移転をやめ1,000人の雇用継続です(今日11/30のニュース)。
メデイア戦略:TV+新聞(敵対)、SNS(FACE BOOK,TWITTER)からの有権者への直接発信
選挙戦を通じトランプ陣営はメデイア(TV、新聞)を敵に回しSNSを最大に活かしました。
素人スタッフの失態で、メラニア夫人のオバマ大統領夫人スピーチ・パクリ批判も結果は単な
る茶番。 セクハラ問題はクリントン元大統領の不倫問題にすり替えて引き分け。イスラム教
信者に対してのテロリスト発言は、人口 1%の票は無視しても影響ないとの計算があっての
共和党支持者(労働階級)向け強気発言だったと思います。
2017年セレブ版シュワちゃん 感謝祭でも仕事中。(Twitter) 金髪の鬼さん?
新年からは、シュワちゃんホストのセレブ版が登場します。オーストリア生まれなので
大統領選に出馬できませんが、再度政界(国政)入りを狙っているのかも。来年の話をすると
鬼が笑うといいますが、すでに金髪の鬼さんは高笑い状態です。
さて新年には、どんなトランプ大統領劇場がはじまるのでしょうか? 今までは選挙戦の
実況中継を、エンターテイメントとして見ていました。 大統領選勝利の方程式をあみだした
戦略家は誰か謎が残ります!? 彼はMake America Great Againキャンペーンテーマをどのよ
うに実行するのでしょうか?(つづく)
不思議の国アメリカ研究(1)by若林成明
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