昔の田舎では、今頃になると牧草刈りを始める。夏の太陽を存分に浴びて牧草は肥え刈り取る適期になるからである。大きな鎌(手鎌の5倍もある)を振り回し草を刈るのであり、今のように草刈り機であっという間に刈るのと違い重労働である。エネルギーの消耗も激しい。そんなとき子どもたちは、こじはん(今で言うおやつ)を届ける役割となる。サツマイモやトウモロコシを蒸かしたものぐらいだが、共に食べた楽しい思い出となっている。
その牧草地(谷地といっていた)には、牛馬が食べない草がはびこり厄介物としていた。当時は毒草といっていたような記憶がある。
しかし、それがミツカシワという貴重な植物であり、群生していることから約2万年前の洪積世の最終氷河期に出来た湿原の証しであるといわれ、今では木道もつくられ開花期には大勢の人々が訪れている。阿武隈山中の海抜500メートルにあり、7000平方メートルあまりの小さな湿原だが、脚光を浴びることとなった。
田舎に帰省するたびに訪ねて、遠き日の思い出と知らぬことへの、、、、に浸るのである。