伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

人が壊れてゆく職場 自分を守るために何が必要か

2008-09-04 22:00:30 | 人文・社会科学系
 労働側弁護士による労働事件解決事例の解説本。
 最近話題の名ばかり管理職残業代問題や賃金・退職金の一方的減額、部下に対するいじめ、解雇や雇い止め(期限付き労働契約の期限による打ち切り)等の事例を挙げて、関係する法律の規定や手続を解説して、比較的巧く解決できたケースを紹介しています。私には、同じ労働側の弁護士として、同感する部分が多い本です。実際には、うまく行かない事例も多々ありますけど、この本は基本的には、労働現場で悩む人達にこういうふうに解決できる場合がある、解決できそうだという希望を持ってもらう本ということでうまく行かない事例(読者の労働者を意気消沈させる事例)は省いているのだと思います。
 同業者として読むと、よくわかりますが、もう少し事例の特徴というか、こういう事情があったからという説明がもう少しあった方がいいかなとは思います。実務的な興味と、一般の人に簡単に自分のケースも同じようにうまく行くと誤解させないためにも(まぁかなり詳しく事例を紹介しても、自分に都合よく誤解する人はいますけどね)。
 タイトルを見ると労働現場の実情紹介のように見えますが、事実関係はあくまでも事例の説明だけですし、巧く解決したケースなのでタイトルとはかなり違うニュアンスです。事例としてもタイトルにぴったり行きそうなのは第3章のいじめの事例くらいに見えますし。
 文章は、弁護士には楽に読めますけど、一般の人には少し法律の条文の引用が多めで取っつきにくいかも。
 労働事件の経験が少ない弁護士の労働事件入門用の読み物としては手頃な感じがしました(今度、労働事件の研修の講師をやるときに勧めてみようかな)。


笹山尚人 光文社新書 2008年7月20日発行
コメント
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