伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

女子弁護士葵の事件ファイル

2008-09-06 01:20:47 | 実用書・ビジネス書
 若い女性弁護士を主人公にして、痴漢冤罪、解雇、架空請求、、離婚と親子関係否認、債務整理、相続放棄について、会話構成で説明したケーススタディ本。
 タイトルには「小説」とかぶせてありますが、これを小説と思える人は少数派だと思います。いくら会話仕立てとはいえ、法律の条文そのまま引っ張った箇所が多すぎますし、弁護士に引きずられて素人までが法律用語使って話してますし。第2話の法律相談の話とか第5話の地方再生の話なんて、法律解説書としか読みようがない。
 比較的新しい法律の解説をしているので、身近な法律解説本としては悪くないかも。特に振込詐欺の関係で、施行されたばかりの振り込め詐欺被害者救済法まで入っている(118~120頁)のはさすがと評価しておきましょう。
 他方、解雇権濫用の条文がまだ労働基準法にあると思ってる(94頁)のはちょっと哀しい(今は労働契約法に移されています)。前に破産して免責を受けてから7年以内でも免責不許可事由ではありますが裁量で免責にすることも可能ですから免責の申立はできますし、それは改正前の破産法でもそうでしたから、新破産法だから免責後8年で免責の申立ができる(198頁)というのは不正確ですし、相続放棄の期間を借金を知った日から3ヵ月と扱うのは救済判例で例外的(223頁)というのもそう考えておいた方が安全ですが、こういう書き方では死亡後3ヵ月を過ぎて借金を知った相続人が救済される(相続放棄が認められる)のはかなり難しいように読めてしまいます。家裁の実務では死亡後3ヵ月を過ぎてから借金を知ったケースでもわりと柔軟に相続放棄を認めているように思えます。葵はわざわざ依頼者に必要書類を用意させて「時間がない」と文句言いながら相続放棄の申述書を作っています(224、226頁)。著者はどうか知りませんけど、相続放棄の申述なんて弁護士が作らなくてもとにかく本人に戸籍(除籍)謄本と住民票もって家庭裁判所に行かせればその場で作れるもので、その方が早くて弁護士費用もかからないから、私は代理で作ったことはありません。私の経験上本人に家裁に行かせて難しかったと言われたことはありません。
 なにより弁護士が自ら献身的に証拠集めをする第1話のような話を現役の弁護士が書いているのはちょっとビックリ。著者はそういうことやってるのならすごいと思いますが。
 それに「女子弁護士」って・・・いまどき女性の弁護士は珍しくもないし、24歳の弁護士に「女子弁護士」ってセンスを疑います。


岩崎健一 双葉社 2008年6月20日発行
コメント
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