伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

夜に目醒めよ

2008-09-24 22:51:55 | 小説
 在日コリアンのアウトローとクラブのママ、女性実業家たちが敵との抗争・陰謀に絡み巻き込まれながらサスペンス仕立てに進行する社会派/恋愛小説。
 前半は破天荒なアウトローの鉄治と学英を中心にヤクザ小説+鉄治の愛人のニューハーフのママ「タマゴ」のお色気路線で話が進行しますが、後半になるとより知能犯的な陰謀+女性実業家知美と学英の恋愛物になります。作者としては後半で話を拡げたのでしょうが、むしろ前半の小気味よいテンポとか鉄治と学英のコンビの破天荒な爽快感が後半で失われてかえって展開がちまちまと小粒になっているような感じがします。アウトローと意外にしたたかな女性実業家のプライドを賭けた恋愛勝負というのも悪くはないですが。
 仕事がら、終盤の展開の大前提となっている会社の破産と交代した代表者の負債の話がどうも気になって仕方ありません。会社の代表者は、ふつう会社が借金するときに個人保証するから代表者も負債を負うのであって、その個人保証は代表者が替わっても当然には引き継がれません。替わった代表者が借金の保証をすることに同意して(普通は保証の書類に署名押印して)初めて新しい代表者も負債を負うわけです。そして株を譲り受けても、その会社が破産したって株が紙くずになるだけで、株主が会社の借金を負うわけじゃありません。だから学英が社長になったからといって知らない間に学英自身が会社の借金を背負うことになるはずがありません。そのあたりの設定に無理があることも、終盤の展開がいまいちだなと思ってしまった原因かも。


梁石日 毎日新聞社 2008年3月30日発行
コメント
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