伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ありえない恋

2010-06-21 22:27:41 | 小説
 親友の理名の弟3つ年下高校生に恋してしまった大学生未冬、未冬の父32歳年上妻子ありに恋してしまった理名、未冬の愛読書の作者に抗議のメールを送るうちにまだ見ぬ恋愛小説家森まりもに恋してしまった未冬の父、死んでしまったギタリストの恋人真人を忘れられないまりも、まりもの親友のむつみに恋してしまった真人の幽霊、結婚を直前に惑うむつみ、そしてむつみの前に現れたマジシャンは・・・というリレー形式で短編連作風に綴られた恋愛小説。
 年齢差や親友の家族といった点でのありえなさから、果ては幽霊の恋愛まで出す悪のりぶりでちょっとずれたシチュエーションを展開していますが、恋愛小説ですから、恋するものには何でもありな訳です。
 「ありえない恋」に悩む者への作者のメッセージは、「好きと思っているその感情を、全面的に認め、全面的に肯定して」「なぜなら、すべての悩みは、自分を否定するところから始まるの。否定する必要もないのに、否定してしまうことから」「どんな人にたずねても、正しい答えは見つからない。なぜなら理名ちゃんの答えは理名ちゃんの心の中にだけ、あるの」「恋には一般論は役立ちません。数学みたいに決まった答えもありません。百人の人がいたら、そこには百の恋があり、百種類の喜びがあり、悲しみがある」(75ページ)。こういう目線にこの作者の柔らかさを感じます。


小手鞠るい 実業之日本社 2009年9月25日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

現代語訳 帝国主義

2010-06-21 21:59:33 | 人文・社会科学系
 大逆事件で処刑された幸徳秋水が1901年に出版した「廿世紀之怪物帝国主義」の現代語訳。
 比較的薄い啓発書(パンフレットというには厚すぎます)で、読んでいると、社会主義者としてよりもジャーナリストとしての論というか流れの巧さを感じます。「愛国心を論ず」では、愛国心とは国を愛することではなく他に敵を作り上げてその敵を憎むことで団結することだということが、例を挙げて繰り返し語られることでだんだんと説得されていきます。こういう例の挙げ方と繰り返しが巧みな感じです。この説得力に、政府と軍部は脅威を感じて弾圧事件と相成ったのだなと、納得してしまいます。もっとも、例のうち近代の軍人とかは、当時はよく知られていたのでしょうけど、私にはわからない・ぴんとこない例が多くて、ちょっと読みにくかったのですが。
 明治も後半の本を「現代語訳」とは・・・とも思いますが、明治時代の文章で岩波文庫とかいうと読むのがつらい身には、こういう試みは大変ありがたい。出版社側としてはそういう発想よりも著作権切れで利幅が大きくなるという程度の動機かもしれませんけど。


幸徳秋水 訳:遠藤利國
未知谷 2010年5月25日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする