伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

不気味な笑い フロイトとベルクソン

2010-06-25 21:56:28 | 人文・社会科学系
 フランスの哲学者アンリ=ルイ・ベルクソンの「笑い」における笑いについてジグムント・フロイトの論文「不気味なもの」との対比で考察したパンフレットタイプの論文。
 モリエールの喜劇を中心に相当数の文学作品が引用されるとともに、フランス現代哲学の香りのぷんぷんする本ですから、基本的に小難しい本です。
 しかし、基本線は、滑稽なものと不気味なものの連続性に着目し、繰り返しやひっくり返し、不条理というようなパターンが一定の「枠」の中で自らが観客としての位置を維持できるときは滑稽さとして働き、枠が宙づりになり穴が開き自らが巻き込まれると不気味なものとなるということを論じています。暴力的に要約すると自らの掌のうち(コントロールできる)か対岸の火事で自分に深刻な影響を生じないことは笑ってみていられるが、自分が巻き込まれ先が見えない(コントロールできない)となると不気味/不安になるというようなことだと思います。ある意味、当たり前。
 哲学系の本を読んで、難しい言葉を使って難しい本をたくさん引用しているけど、結局言いたいことは「だから、どうしたの」って言いたくなるようなことだったりすることがよくあります。それはもちろん、私の理解が足りないというか私がディテールに関心を持てないためでしょうけど、そういうことから私はどうも哲学系の本が苦手です。
 それに、この本の本文は正味67ページしかないのに、訳者解説が35ページ。本文の長さの半分以上もある解説って。こういうなが~い訳者解説にありがちですが、本文で取り上げていないことをあれこれ挙げて本文よりさらに小難しいことを書いています。そういうのは、別に自分の本で書けばいいのにと思います。


原題:LE RIRE ETRANGE : BERGSON AVEC FREUD
ジャン=リュック・ジリボン 訳:原章二
平凡社 2010年4月14日発行 (原書は2008年)
コメント (2)
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認め上手 人を動かす53の知恵

2010-06-25 21:04:34 | 実用書・ビジネス書
 相手にやる気を出させるために相手を認め、ほめ、表彰を活用しようという本。
 相手をほめてがんばらせようとしても、褒美を与えて動かすのは動物レベルのことで人間には一時的な効果はあっても持続的な効果はないし、日本では下手にほめるとほめられた人が浮いてしまい本人にも組織にも逆効果になりかねない、そこを考えてうまくほめよう、ほめるよりも相手を認めようというのが著者の主張です。
 昨今、従業員の責任感を高め顧客サービスを向上させるためといって従業員の氏名を表示させる企業が増えていますが、これについては従業員が意欲と責任感を高める効果はあるもののストレスでやめる従業員が増えたり、客の見ているところではきちっとやるがその分陰で手を抜くようになる例もある、名前を出して効果があるのは個人の裁量性がある場合でマニュアル通りにやることが求められる従業員の場合は客に監視させる要素が強くなり従業員はやらされているという感じを強めモチベーションは引き出せないと指摘しています(59~67ページ)。
 客からの声はよいものだけを伝える(71~74ページ)、成績発表は上位3分の1だけにする(2分の1まで発表すると名前がないものは標準以下とわかってしまう:75~78ページ)など、従業員の意欲をくじけさせないための配慮があれこれ指摘されています。
 人間を使うって難しいねという実感を持ちますが、同時にいかにコストをかけずに従業員にたくさん仕事をさせるかという目的の本ですから経営者の本音をいかに隠して巧妙に従業員を操作するかといういやらしさがつきまといます。


太田肇 東洋経済新報社 2009年6月25日発行
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