伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

復活の歩み リンカーン弁護士 上下

2024-10-16 23:22:08 | 小説
 冤罪で仮釈放のない終身刑を受け14年間収監されていたホルヘ・オチョアの無実を証明して釈放させた敏腕弁護士マイクル・ハラーのもとに刑務所から依頼を希望する手紙が殺到していたところ、ロス市警を退職しハラーを手伝っていたハリー・ボッシュが、保安官の元夫を銃殺したとして起訴され不抗争の答弁をして11年の刑に服しているルシンダ・サンズからの手紙を目にとめ、ハラーがルシンダの弁護をして人身保護請求を申し立てるというリーガル・サスペンス。「リンカーン弁護士」シリーズ第7作。
 高級スーツを身にまとい、着手金2万5000ドルだとかを要求するハラーの姿は、私のような庶民の弁護士とは違う世界の住人とも見えますが、本作でハラーが受刑者の無罪を勝ち取りその「復活の歩み」を見ることに達成感・生きがいを見出し(上巻10ページ、185~186ページ、下巻315ページ等)、人生観を変えて行く(下巻322ページ)展開は感動的です。だからといって、自分が再び刑事弁護の世界に戻りたいとは思いませんが。
 警察官・検察官の不正・醜さに対する作者の強い憤りが随所に感じられます。ここまでの設定をしていいのかという感じもしますが、折しも日本でも袴田事件の再審を機に証拠の捏造までした警察による冤罪とあくまでそれを隠蔽しようとした検察の醜さが広く知られ、こういう作品を読むのにタイムリーと感じます。
 もともとハラーが敏腕弁護士という設定なので、逆転また逆転でハラハラするというタイプの作品ではありませんが、判事もまたリベラルな設定だと、正義が実現されることを確信して安心して読めるのはいいけれども、リーガル・サスペンスがそれでいいのかという思いも持ちます。


原題:RESURRECTION WALK
マイクル・コナリー 訳:古沢嘉通
講談社文庫 2024年9月13日発行(原書は2023年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする