伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

魔女狩りのヨーロッパ史

2024-07-03 00:53:59 | 人文・社会科学系
 15世紀~18世紀のヨーロッパでの魔女狩り/魔女裁判について検討し解説した本。
 魔女狩りが、社会の底辺層の嫌われ者・弱者に対して行われたのか、中流層以上の妬まれた者に対して行われたのか、魔女の告発は民衆が妬みであるいは信仰心や良心の痛みから行ったのか、支配層が権力を固めるために行ったのか、支配層・準支配層が政敵を陥れるために行ったのか、そのあたりの説明はいろいろで、シンプルな説明は難しいようです。「はじめに」でも「こうした活発な研究により、ヨーロッパの諸地域の魔女と魔女裁判のありようは徐々に解明されてきているが、全体から眺めるとまだ道半ばで、最終的な像を描くことはできていない」とされています。
 裁判の実例を紹介している第3章を読むと、自白至上主義と共犯者の自白(巻き込み自白)により、簡単に「有罪」とされるようすが、悲しくも情けない。しかし、自白や共犯者の自白が簡単にそして強固に信用されて有罪とされるのは、日本の刑事裁判でも見られることで、笑ってられない気がします。ヨーロッパでは18世紀初めには魔女狩りは終わったとされていますが、アフリカでは19世紀から20世紀にかけてリンチ殺人に近い魔女狩りが続き、今日でさえサハラ以南では天候不順や原因不明の死亡や事故、疫病に絡んで魔女狩りが頻繁に起きていると紹介されています(218~219ページ)。中世の迷妄などと言っていられないわけです(ヨーロッパでも魔女狩りの最盛期は中世ではなくルネサンス期だったわけですが)。簡単に人間の性と言ってしまいたくはないですが。


池上俊一 岩波新書 2024年3月19日発行

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