2029年に直径10kmを超える小惑星2029JA1が地球に接近したが辛くも衝突を免れたことを契機に地下3000mのところに建設された地底実験都市eUC3での居住実験が10年目を迎えた2050年代、eUC3が運営会社から切り離され「ヘルメス」と呼ばれるようになった後地上への連絡がなくなって18年後に1人の青年が地上に現れて大きな騒動となった2073年、再び2029JA1が地球に接近し衝突の危機が迫る2099年の3つの時代に生きる人々の思いと様子を描いた小説。
貧富の差が拡大する中で、人類の危機に対して人々が何を考えどのように生きるかがテーマとされているようです。庶民の弁護士である私には、貧困層の怨念をも許容したいという気持ちがありますが、自分の未来に希望が持てないからといって人類がそろって滅亡すればいいみんなが平等に地獄を見ればいいと呪うという姿は好ましくは思えません。(多村がほんとうはそういう気持ちを人に抱かせない社会を作らなきゃいけなかったのにと言い、理解を示したにしても、レンが後悔の念を示したにしても)そのような描き方はむしろ貧困者への敵対心、民衆の分断を煽るものではないかという危惧を感じます。
SFであるかのように始まって、結局はカルトないしオカルト、それを好む人たちの物語として展開します。最初の段階で巨大小惑星の衝突の危機が5日前に初めて発見された上に衝突確率100%と計算されていたのになぜか衝突しなかったという設定がされていること自体、すでにSFとも言えなかったと見るべきでしょうけれど。
山田宗樹 中央公論新社 2023年8月25日発行
貧富の差が拡大する中で、人類の危機に対して人々が何を考えどのように生きるかがテーマとされているようです。庶民の弁護士である私には、貧困層の怨念をも許容したいという気持ちがありますが、自分の未来に希望が持てないからといって人類がそろって滅亡すればいいみんなが平等に地獄を見ればいいと呪うという姿は好ましくは思えません。(多村がほんとうはそういう気持ちを人に抱かせない社会を作らなきゃいけなかったのにと言い、理解を示したにしても、レンが後悔の念を示したにしても)そのような描き方はむしろ貧困者への敵対心、民衆の分断を煽るものではないかという危惧を感じます。
SFであるかのように始まって、結局はカルトないしオカルト、それを好む人たちの物語として展開します。最初の段階で巨大小惑星の衝突の危機が5日前に初めて発見された上に衝突確率100%と計算されていたのになぜか衝突しなかったという設定がされていること自体、すでにSFとも言えなかったと見るべきでしょうけれど。
山田宗樹 中央公論新社 2023年8月25日発行
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