伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

おもしろサイエンス 雷の科学

2008-09-07 08:50:55 | 自然科学・工学系
 雷のしくみや雷による被害とその対策等について解説した本。
 雷は暖かく湿度の高い空気が急激に上昇することで生じる積乱雲内で氷の粒同士がぶつかり合うときに生じる静電気が帯電し限界を超えたところで放電する現象で、雷鳴はその際に通り道にある空気を急激に加熱し(3万度くらいに)その空気が急激に膨張する際の衝撃が音になるのだそうです。
 人体に落雷すると、感電の場合とは違って超高圧電流が瞬間的に流れ一瞬で消えるので、体の内部を電流が通ると心臓が4~5分止まって死亡するけど体の表面だけを流れると助かったりするそうです(32~33頁)。
 雷は相対的に高いところに落ちやすいので、ただっ広い屋外を歩くのは危険だけど、高い樹のそばはまた危険だそうです。それは高い樹には落雷しやすく樹は電気を通しにくいため樹に落ちた電流がそばに人がいると人の体に飛び移って流れる(側撃雷というそうです)からだそうです。それは高い樹だけじゃなくて木造家屋でも同じだって(136頁)。この本では屋外では高い樹から4m程度離れたところにいることを勧めています(136頁)。傘をさすのは、金属だからというよりも相対的に高くなるから危険だそうです(35、138頁)。でも、雷が鳴ってるときに傘も差さずに高い樹から4mのところでジッとしているわけにはいきませんよね。
 金属の箱の中なら電流は金属を通っていくので中にいる人は安全で、自動車や電車の中は安全だそうです。飛行機の場合も直撃されてもそれで飛行機の運航に支障を来すような破損を生じることはほとんどなく大丈夫だそうです(49~50頁)。そう言われてもやっぱり怖いですけどね。


妹尾堅一郎監修 日刊工業新聞社 2008年7月28日発行
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女子弁護士葵の事件ファイル

2008-09-06 01:20:47 | 実用書・ビジネス書
 若い女性弁護士を主人公にして、痴漢冤罪、解雇、架空請求、、離婚と親子関係否認、債務整理、相続放棄について、会話構成で説明したケーススタディ本。
 タイトルには「小説」とかぶせてありますが、これを小説と思える人は少数派だと思います。いくら会話仕立てとはいえ、法律の条文そのまま引っ張った箇所が多すぎますし、弁護士に引きずられて素人までが法律用語使って話してますし。第2話の法律相談の話とか第5話の地方再生の話なんて、法律解説書としか読みようがない。
 比較的新しい法律の解説をしているので、身近な法律解説本としては悪くないかも。特に振込詐欺の関係で、施行されたばかりの振り込め詐欺被害者救済法まで入っている(118~120頁)のはさすがと評価しておきましょう。
 他方、解雇権濫用の条文がまだ労働基準法にあると思ってる(94頁)のはちょっと哀しい(今は労働契約法に移されています)。前に破産して免責を受けてから7年以内でも免責不許可事由ではありますが裁量で免責にすることも可能ですから免責の申立はできますし、それは改正前の破産法でもそうでしたから、新破産法だから免責後8年で免責の申立ができる(198頁)というのは不正確ですし、相続放棄の期間を借金を知った日から3ヵ月と扱うのは救済判例で例外的(223頁)というのもそう考えておいた方が安全ですが、こういう書き方では死亡後3ヵ月を過ぎて借金を知った相続人が救済される(相続放棄が認められる)のはかなり難しいように読めてしまいます。家裁の実務では死亡後3ヵ月を過ぎてから借金を知ったケースでもわりと柔軟に相続放棄を認めているように思えます。葵はわざわざ依頼者に必要書類を用意させて「時間がない」と文句言いながら相続放棄の申述書を作っています(224、226頁)。著者はどうか知りませんけど、相続放棄の申述なんて弁護士が作らなくてもとにかく本人に戸籍(除籍)謄本と住民票もって家庭裁判所に行かせればその場で作れるもので、その方が早くて弁護士費用もかからないから、私は代理で作ったことはありません。私の経験上本人に家裁に行かせて難しかったと言われたことはありません。
 なにより弁護士が自ら献身的に証拠集めをする第1話のような話を現役の弁護士が書いているのはちょっとビックリ。著者はそういうことやってるのならすごいと思いますが。
 それに「女子弁護士」って・・・いまどき女性の弁護士は珍しくもないし、24歳の弁護士に「女子弁護士」ってセンスを疑います。


岩崎健一 双葉社 2008年6月20日発行
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LAWより証拠

2008-09-05 09:22:36 | 人文・社会科学系
 証拠がないので警察にも弁護士にも相手にしてもらえず泣き寝入りしている人のために証拠を集める「証拠調査士」を名乗る著者が自ら扱った事件を紹介した本。
 この本のコンセプトである裁判等は法律の勝負以前に証拠の勝負、証拠を用意しなければ勝てない(ことが多い)というのは私のサイトの「民事裁判の話」でも繰り返し説明している通りです。そして弁護士が自ら証拠集めをすることに大きな期待を抱かれても困ることもその通りです。また、依頼者が自分で証拠を集める努力もせず人にお任せでは困るとか、何も調べもせずに行政に相談に行って何も教えてくれなかったと文句をいうのは自分が悪い(89~90頁)とかの指摘も、納得してしまいます。
 ただ、肝心の、ではどうやって証拠を集めるかは、この本で書いてあるのは神経内科を受診して脅迫やいじめ等による精神疾患の診断書を書いてもらう、録音・録画する、振込については銀行にATMの監視カメラ映像と記録を出してもらうというくらいしか書かれていません。
 どちらかというと証拠集めよりも交渉・解決方法へのアドヴァイスの方が長けている感じですが、有力な弁護士の力を使ったり警察を動かす以外は、むしろ嫌がらせ的な交渉手段が書かれていて、大丈夫かなぁと少し危惧感を持ちます。近隣騒音のケースで自分がマンションの管理組合の理事長になってしまうというのは、面白いアイディアではありますが。
 法律についての記述には疑問点が残ります。第1章で刑事の調書が1ヵ月で確定と繰り返していますが、そういう仕組みはなくて、単に刑事事件としての確定でしょうから、それは1ヵ月という期間は関係ないと思います。弁護士法で本人と弁護士以外の関与は禁止されていると何度か書かれていますが、親族も関与できない(112頁)とかかなりミスリーディング。弁護士法が禁止しているのは「業として」行うことで、端的に言えばそれで報酬を取らなけりゃ問題ありません。
 弁護士に頼むと金がかかるということも度々強調されていますけど(根拠の怪しいかなり高額の数字入りで)、弁護士に相手にされない事件を多数解決してきたという著者は、依頼者から一体いくらもらうんでしょうか。弁護士のみならず、この本を読んだ人の大半が興味を持つことと思いますが、その点には触れられていません。それからカウンセラーについては民間資格などいい加減なものと断言しています(253頁)けど、著者の名乗る「証拠調査士」って民間資格でさえないと思いますが。


平塚俊樹 総合法令出版 2008年7月22日発行
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人が壊れてゆく職場 自分を守るために何が必要か

2008-09-04 22:00:30 | 人文・社会科学系
 労働側弁護士による労働事件解決事例の解説本。
 最近話題の名ばかり管理職残業代問題や賃金・退職金の一方的減額、部下に対するいじめ、解雇や雇い止め(期限付き労働契約の期限による打ち切り)等の事例を挙げて、関係する法律の規定や手続を解説して、比較的巧く解決できたケースを紹介しています。私には、同じ労働側の弁護士として、同感する部分が多い本です。実際には、うまく行かない事例も多々ありますけど、この本は基本的には、労働現場で悩む人達にこういうふうに解決できる場合がある、解決できそうだという希望を持ってもらう本ということでうまく行かない事例(読者の労働者を意気消沈させる事例)は省いているのだと思います。
 同業者として読むと、よくわかりますが、もう少し事例の特徴というか、こういう事情があったからという説明がもう少しあった方がいいかなとは思います。実務的な興味と、一般の人に簡単に自分のケースも同じようにうまく行くと誤解させないためにも(まぁかなり詳しく事例を紹介しても、自分に都合よく誤解する人はいますけどね)。
 タイトルを見ると労働現場の実情紹介のように見えますが、事実関係はあくまでも事例の説明だけですし、巧く解決したケースなのでタイトルとはかなり違うニュアンスです。事例としてもタイトルにぴったり行きそうなのは第3章のいじめの事例くらいに見えますし。
 文章は、弁護士には楽に読めますけど、一般の人には少し法律の条文の引用が多めで取っつきにくいかも。
 労働事件の経験が少ない弁護士の労働事件入門用の読み物としては手頃な感じがしました(今度、労働事件の研修の講師をやるときに勧めてみようかな)。


笹山尚人 光文社新書 2008年7月20日発行
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仕事道楽 スタジオジブリの現場

2008-09-03 22:25:35 | 趣味の本・暇つぶし本
 タイトルと著者を見ればわかるとおり、スタジオジブリのアニメ制作や営業についての思い出話。
 序に代えてで、やってきたことは覚えていようとは思わない、忘れてしまった方がいい、大事なのは今、メモとか日記に頼らなければ忘れてしまうことは忘れてしまっていいと宣言しているように、体系的な記述ではなく、飛び飛びに思いつき風に言いたいことだけを話しているような格好の本です。
 宮崎駿よりも高畑勲のことにページが割かれているのが意外な感じですけど。ジブリ・宮崎ファンがこぼれ話・トリビア的な興味で読むのにはいいかなと思います。ジブリはサハラ砂漠に吹く熱風(GHIBLI)で後で読み方が本当はギブリだとわかったが今さら訂正できない(55~56頁)とか。
 しかし、それにしてもすでに功成り名を遂げた会社の自慢話&PR本になるしかない企画が天下の岩波新書で実現するというのは・・・時代の変化でしょうね。


鈴木敏夫 岩波新書 2008年7月18日発行
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