伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

ホントのコイズミさん WANDERING

2024-04-19 21:40:56 | エッセイ
 ポッドキャスト番組「ホントのコイズミさん」の中から吉本ばなな、書店経営者/書店紹介者、写真家、トラベルカルチャーマガジン編集者をゲストにした回を出版した本。
 WANDERINGのテーマで旅や移動についてゲストに質問していますが、旅の質問より「1日の中で好きな時間と、その理由を教えてください」という質問が意外に味わいがあるように思えました。
 「時間旅行ができるなら、どの時代に行って何をしたいですか?」という質問に対するホストの小泉今日子の答えで、「昭和40年代に戻って自分を教育し直したい」(157ページ)というのが意外。予想外に平凡でネガティブなんだ。吉本ばななの「過去に行って、グズグズしてた時期の自分にアドバイスします。もう少し勉強したり、旅をしたり、バイトしたりしろと」(37ページ)に影響されたのかも知れませんが。
 113~121ページに「オールドレンズ」で撮影した厚木の風景写真が掲載されています。レンズを変えるとレトロな写真ができるんだ(実際にはレンズの違いだけじゃなくて写真家のさまざまな技術が駆使されているんでしょうけど)と感心しました。


小泉今日子編著 303BOOKS 2023年7月7日発行
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ホントのコイズミさん YOUTH

2024-04-18 21:38:19 | エッセイ
 ポッドキャスト番組「ホントのコイズミさん」からユニークな本屋さん3軒の店主をゲストにした回、作家江國香織をゲストにした回を出版した本。
 本への愛と80年代への郷愁みたいなところが、私にはハマる本でした。
 通しテーマ「YOUTH」に合わせてゲストに子どもの頃/青春時代について質問しています。初めて読んだ本が「エルマーのぼうけん」(松浦弥太郎、36ページ)とか、小学生時代に思いをはせてしまいます。
 最初に紹介されている目黒川沿いにさりげなくたたずむ本屋さんCOW BOOKS(7ページ)。そう言われると行ってみたくなり、破産の債権者集会で中目黒のビジネスコートに行った帰りに寄ってみましたが、営業時間は12時からということで閉まってました (^^;)


 本自体とは別に、まぁ本を読んで思うところでもあるのですが、小泉今日子は、いつのまにこんなにカッコいい人(歌手とか俳優という枠ではなくて)になったのだろうという感慨を持ちます。歌手としての、若いときの小泉今日子は、私の一番強い印象は、民営化されたJR東日本が、自動改札を導入したとき、「もっともっと」とか「もっと便利に」みたいなことをアピールするCMに出ていたことで、あからさまな人員削減(改札の駅員の人減らし)と、副次的にはキセル防止のため、いずれにせよJR東日本側の利益だけで、利用客にはただ改札前での渋滞ができて不便・不快なだけなのに、尊大な大企業(こういう広告を作る代理店も含めて)が金に飽かせて行う無理なイメージ操作に使われ消費されるアイドルというもの(東京電力のために原発PRの漫画書かされている漫画家なんかと同列のイメージ)でした。若いときにこうだったから、ではなく、人は変わるし変われるということを、素直に感じ見つめていきたく思います。


小泉今日子編著 303BOOKS 2022年12月5日発行
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小規模宅地等の特例 基本と事例でわかる税務

2024-04-16 21:28:46 | 実用書・ビジネス書
 死亡した人が住んでいた持ち家の敷地を同居の家族が相続した場合330㎡まで、死亡した人が営んでいた事業に用いていた土地をその事業を承継した相続人が相続した場合400㎡までは、相続税課税の際の土地評価額(路線価で算定)を80%減額できるなどの、「小規模宅地等の特例」について解説した本。
 典型的なケースはわかりやすいのですが、少しイレギュラーな事情が出てくるとわかりにくくなり、ちょっとした違いで適用されなくなることへの注意が多数記載されています。ちょっとの違いで課税が大きく変わることについて、融通の利かなさ加減に驚きます。そういう不合理さを言われて制度改正が重ねられてきたことは説明されているのですが、制度改正がない限り不合理であれ規定は規定だという書きぶりです。
 その姿勢は、税務(財務省・税務署)一般の体質に加え、この本で度々使われている80%も減額する「大盤振る舞い」「恩恵」という見方が背景にあってのものだと感じます。しかし、もしこの特例がなかったら、土地の価格高騰の中で相続税の基本控除を減額する(課税ベースを拡大する)ことは不可能だったでしょうし、それでも強行したら税金が払えずに持ち家を手放す中間層が続出して持ち家政策が破綻していたはずで、この制度は現在の相続税制の前提であり根幹をなすものと評価できます。「恩恵」だから税務当局の好きにできるということではなくて、より合理的で融通の利く運用をしてもらいたいものです。


武田秀和 税務経理協会 2023年12月1日発行
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基本的人権の事件簿〔第7版〕 憲法の世界へ

2024-04-15 22:11:32 | 人文・社会科学系
 憲法学者の立場から、基本的人権に関わる裁判の事例を採り上げて、論評した本。
 採り上げられている判決は著名事件や近年報道されたものが多いので概ね知っているものでしたが、事例の紹介や問題意識が憲法学者の視点だとこうなるのだなという点で勉強になりました。
 主張されている権利を認めるべきだ、認めなかった裁判所の姿勢はおかしいと明言するものから、やや及び腰に疑問を呈するものなど程度の差はあれ、大半は権利主張をしている側に同調する見解が示されている中で、剣道受講拒否事件(エホバの証人信者による格闘技拒否:212~221ページ)と退職者の同業他社への就職問題(241~249ページ)については双方の意見を紹介して中立的な姿勢で「考えよう」「なかなか難しい」とし、検索結果削除請求事件(100~111ページ)だけは、権利主張に対して否定的な見解が示されています。それは共著なので執筆担当者の見解の問題なのか、問題の性質によるものなのか。労働者の退職・職業選択の自由と企業の営業の自由、忘れられる権利と検索事業者(Google)で、前者を擁護・支持するのではなく後者に忖度するというのでは憲法学者としてはどうよという気がしますが。


棟居快行、松井茂記、赤坂正浩、笹田栄司、常本照樹、市川正人
有斐閣選書 2024年1月30日発行(初版は1997年3月10日)
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真夜中のパン屋さんシリーズ

2024-04-14 19:37:24 | 小説
 海外赴任中に事故死した妻暮林美和子の遺志を継いで、会社を辞めて三軒茶屋の住宅街付近に午後11時から翌朝5時までを営業時間とするパン屋「Boulangerie Kurebayashi」を、夫の海外赴任中に美和子に横恋慕していたイケメンの腕のいいパン職人柳弘基の協力を得て開いた暮林陽介の元に、美和子を頼って恋多きシングルマザーの指示で転がり込んだ高校生の篠崎希実をめぐり、店のメンバーやクセの強い常連客や希実とその母の関係者などが繰り広げる騒動を描いた小説。
 タイトルやイラストから、恋愛小説かお仕事小説と見て読み始めましたが、どちらかと言えばライトミステリーという趣の作品でした(最後の方で恋愛小説的な要素も出てきてはいますが)。ネグレクトやひきこもりをテーマにしつつ、人の心の優しさと暗さ(ねじれ・僻み)を描くヒューマンドラマという方がいいかなとも思います。
 営業時間を午後11時から翌朝5時までという設定で、第1巻のタイトルが「午前0時の…」ですから(それも全巻文庫書き下ろしですし)、最初から6巻組の構想だったと思われます。しかし、第1巻から第4巻までは1年足らずで出ていたのが、第4巻のあと第5巻まで2年5か月空いて、第6巻は「外伝」とか後日談ぽくなっているのを見ると、構想の変化というか見直しがあったのかなと思います。そのあたり、創作の難しさを感じてしまいました。


大沼紀子 ポプラ文庫

午前0時のレシピ 2011年6月5日発行
午前1時の恋泥棒 2012年2月5日発行
午前2時の転校生 2012年12月5日発行
午前3時の眠り姫 2013年10月5日発行
午前4時の共犯者 2016年3月15日発行
午前5時の朝告鳥 2017年6月15日発行
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紛争地の歩き方 現場で考える和解への道

2024-04-13 22:27:34 | 人文・社会科学系
 カンボジア、南アフリカ、インドネシア、アチェ、東ティモール、スリランカ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、キプロスでの内戦・独立運動・民族対立・独裁打倒などから和平に至った経緯、現在も武力紛争中のミャンマーでの和解への展望を、学生時代以来の現地訪問の経験を披露しながら語った本。
 それぞれのケースごとに対立構造、力関係、戦闘・紛争が終了した経緯・原因、武力紛争終了後の関係と実情はさまざまで、関係者の心中・心情も一様ではないことがわかります。国際政治の難しさ・非情さを学ぶのに適したテキストかと思います。
 しかし、この本で著者が何を言いたいのか、著者のスタンスは、私には今ひとつ理解できませんでした。武力紛争の解決はきれいごとでは済まない、加害者に対する制裁や真相究明など正義を求めていては和平などできない、一応の平和が保たれ殺し合いがなくなれば、また経済的によくなればそれでいいではないか、少数派なり弱者なり被害者が妥協譲歩するのはしかたないではないかということが端々に読み取れ、著者の意見はそういうことなのかと読めます。「弱者に支援を差し伸べることは紛争を長引かせる。紛争の早期終結を図るためには逆効果だ」「より多くの人が紛争の犠牲になることを間接的に助長する」(217ページ)といい、ミャンマーで選挙に圧勝した国民民主連盟が軍部から政権を奪取しようとしたことを「軍部を牽制する実力が存在しない条件で、軍部の意に反した行為を試みることはクーデターを挑発しているといっても過言ではない」(281ページ)といい、末尾でも「真実・和解委員会や特別法廷の試みは、希望の星となり得たであろうか。それとも煩悩の火に薪をくべただけだったか」(340ページ)と結ぶのはそのことを示していると思います。そう言い切るのであれば、それはそれで理解できます。私は支持はしませんが。ところが一方で著者はそれぞれのケースで正義が実現できたかを問い、大学時代の恩師から言われたという人間社会における少数派や社会的弱者が幸せでない社会は多数派にとっても幸せな社会だとはいえないという言葉を紹介し「この言葉が、紛争解決、平和構築、そして和解の鍵を握るのだと私は確信している」(219ページ)と述べたりもしています。終章で和解についての著者の考えをまとめているはずなのですが、そこでも私は結局著者がどう言いたいのかがよくわかりませんでした。それぞれのケース自体を学ぶ本だと割り切ればいいかと思いますが、読み物としてみると不満感があります。


上杉勇司 ちくま新書 2023年4月10日発行
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ず~っとつながる紹介営業

2024-04-12 23:53:36 | 実用書・ビジネス書
 異業種の営業担当者とチームを組み、お互いに知人を見込み客として紹介し合うことで営業成績を上げる手法について解説した本。
 紹介を受けるためには、自分が①ForYouの精神を持っていること(誰かのために動ける人)、②仕事の質が高い「仕事人(プロ)」であること、③紹介者の印象に残っていることの3つの前提が必要であり、チームを組む相手もその条件を満たしていて自分と考えが一致していて好きになれる人でないといけないとしています。それで紹介営業を続ければ、信頼できて見込みのある客が紹介され、しかも自分で売り込む必要がなくチームのメンバー(紹介客の知人)が売り込み(推薦・賞賛)をしてくれるから成約率は高くなる、チームのメンバーとはギブアンドテイクなのでお互いに次々紹介が続くし、成約した客からも紹介を受ければさらに営業成績が上がるというしくみです。
 ただ著者も言うように「実は、この仕組みがずっと機能していくための根幹には、『紹介していただいたお客さまの期待に、完全に応え続ける』という前提が存在しています」(102ページ)ということですが、これはきついでしょうね。紹介してもらう見込み客の人柄を十分に厳選してもらわないと。
 その他、印象操作の手法等も含め営業というか顧客との関係づくりのノウハウが読みやすく書かれていて参考になります。


上實貴一 すばる舎 2024年1月22日発行
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はじめて行く公営ギャンブル 地方競馬、競輪、競艇、オートレース入門

2024-04-10 23:15:56 | 趣味の本・暇つぶし本
 公営ギャンブルファンの著者が自らの経験と蘊蓄を語り、公営ギャンブルの楽しみかたを論じた本。
 冒頭から「公営ギャンブルは、まず絶対に儲からないギャンブルです」「私は30年ほど公営ギャンブルを続けてきましたが、その日の収支が黒字になったことはほとんどありません」(9ページ)、「私は30代の頃から約30年間、公営ギャンブルをやってきましたが、いつか自分にも向いてくると考え続けた『ツキの流れ』はついにやってきませんでした」(17ページ)と語る姿はむしろ清々しい。著者は、負けてもともと、知的ゲームを楽しむための遊び代と考えて公営ギャンブル場に向かう(285ページ)という姿勢で楽しもうと語っています。 
 著者は、「負けても傷つかない、苦しみの少ない遊び方を模索した結果、外れることを前提で少額を賭けるという手法にたどり着きました」、1つのレースに200円から300円程度しか投票しない、すると全レースに負けても2000円から3000円くらいしか赤字にならずさして悔しくならない、「今日は3000円ぐらい勝ちたいな~」というみみっちい目標を立て、それに向かって賭ければいいといいます(207~208ページ)。それはある意味至言であり、安全な楽しみかたです。度々阿佐田哲也の小説とか引用してギャンブルを語っている姿勢と馴染むかには疑問がありますが。
 第2章の地方競馬(JRAは公営ギャンブルじゃないんだそうです)、競輪、競艇、オートレースの全会場の紹介が圧巻です。各地に、そして多くはずいぶんと不便なところにあるのですね。著者自身もまだすべては制覇していないということですが(行けてないのは山口県の徳山競艇場、下関競艇場、山陽オートくらいのようですが)。


藤木TDC ちくま新書 2024年2月10日発行


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同志少女よ、敵を撃て

2024-04-09 21:05:08 | 小説
 モスクワ近郊の人口40人の小さな村イワノフスカヤの猟師の娘セラフィマが、18歳になった1942年2月、ドイツ軍兵士に母エカチェリーナを狙撃され村人を皆殺しにされ自らも殺されそうになったところを赤軍に助けられ、赤軍兵士を率いていた女性イリーナに連れられて女性狙撃兵訓練学校に組み入れられて、母を狙撃したドイツ軍狙撃兵とナチへの復讐に燃えて狙撃兵として独ソ戦に従軍するというアクション小説。
 戦争の中でのドイツ軍、赤軍を通じた女性への蔑視、女性に対する暴行・虐待がテーマとなっていて、後半になるほどその比重が大きくなっていく印象です。それをストレートに感情表出する主人公セラフィマに対し、冷徹な姿勢を貫くイリーナの抑えが、物語の進行と読後感を締めているように思いました。
 戦争を舞台にしたアクションものなのでそうならざるを得ないのでしょうけれども、残虐なシーンが多くあまりにも簡単に人が死ぬ描写に辟易し、哀しい気持ちで読む場面が続き、私は爽快感は持てませんでした。


逢坂冬馬 早川書房 2021年11月25日発行
第11回アガサ・クリスティ賞受賞作
2022年本屋大賞受賞作
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スラップ訴訟 法的論点と対策

2024-04-08 21:24:07 | 実用書・ビジネス書
 企業や政治家などが市民の反対運動やその過程での発言に対して報復的な動機により高額の損害賠償請求等の訴訟を起こして市民の活動を萎縮させるスラップ訴訟について、これを抑止し効果的に反撃できる対策を望むとして、アメリカでの判例やスラップ被害防止法の制定状況を紹介し、日本での対策のあり方を論じた本。
 アメリカでは公的人物/公的事項に関する名誉毀損は、表現/報道が虚偽であることを知っており、あるいは虚偽であることを無謀にも無視してなされたということを原告(公務員等)側で立証できなければ成立しないという「現実の悪意」の法理が判例上確立しており、相当数の州でスラップ被害防止法が制定され原告側で原告勝訴の蓋然性を立証できなければ特別の訴え却下申立が認められ訴訟が早期却下され、しかも原告に対し被告側の弁護士費用等を支払わせる等の制裁がなされることが紹介されています。これらのアメリカの判例の流れや法律は大変勉強になりました(アメリカの判決の紹介で訳がこなれていないのか、今ひとつわかりにくいというか理解しにくいところも感じましたが)。
 他方で、日本では判例の傾向が大きく異なり、スラップ被害に理解を示す下級審裁判例も見られるものの主流は名誉毀損の不成立や不当訴訟の成立(原告の訴え提起が不法行為であるとして原告が被告に損害賠償を支払うべきとすること)を容易に認めないことも紹介されています。
 そういった日本の裁判所の傾向を踏まえてということではありますが、著者の姿勢は、効果的なスラップ対策を望むとしながらも、「現実の悪意」法理の日本での導入は難しい、公的人物に限定して導入を議論すべきとか、立法解決を望むとしつつも立法の必要性とその適用対象の範囲について十分な立法事実の検討が必要(337ページ)とするなど慎重な言い回しです。現実的対応を心がけているということなのでしょうけれども、読み物としてはちょっとスッキリしないものが残ります。

 
吉野夏己 日本法令 2024年1月1日発行
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