Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

廣江理枝オルガンリサイタル「展覧会の絵」ほか

2013年03月24日 22時14分18秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
               

 横浜みなとみらいホールで「廣江理枝オルガンリサイタル」を聞いてきた。みなとみらいホールは音響効果が気に入っているが、備え付けのパイプオルガンの演奏を聞くのははじめてである。みなとみらいホールには演奏会は幾度も聞きにいっているのだが、オルガンはなかなか機会がなかった。何回か聞こうとしたが、その都度予定がうまく合わずに15年が過ぎてしまった。
 オルガンの演奏会はかなりの頻度で行われているのだから、聞く機会はいくらでもあったと思う。しかしなかなか重い腰が上がらなかった。オーケストラや、そこで使われる器楽の演奏は時間と金額の折り合いさえつけば問題が無い。しかしオルガンとなると普段聞きなれていない分、ちょっと躊躇したり、二の足を踏んだりしてしまうのだ。
 実は横浜美術館の会員への案内があり、しかも1割引でチケットが手に入るということで、2年前の3月17日に同じ演奏者のリサイタルを事前に申し込んでいた。しかしあの東日本大震災で中止・延期となっていたものである。払い戻しを受けて、もう中止となっていたと思っていたら、再び横浜美術館の会報とともに案内が来た。今回もいい機会だと思い、申し込んだ。
パイプオルガンという楽器は知ってはいるが、その構造や音の特質などほとんど知らない。またどのような演奏家がいるのかもほとんど知識が無い。今回の演奏者である廣江理枝という方、チラシや解説のコピーを添付してあるとおり、とても活躍されている方だと推察した。
 またプログラムを見て、パイプオルガンの雰囲気をバッハからムソルグスキー、そして西村朗の1996年の曲までの幅の広い範囲で聞くことが出来るのも、素人である私にはいいのかな、と感じた。
 なお、このみなとみらいホールのパイプオルガンは「ルーシー」という名がつけられているそうだ。開館と同時にすえつけられたアメリカ製のものらしい。

 プログラムの冒頭のバッハのコラールは始めて聞いた。バッハのオルガン曲は旋律が時間的にずれて重なって進行していく対位法の音楽なので、和声法の音楽を聴きなれた私などの耳にはとっつきにくい印象がある。なかなか曲自体の美しさに身をひたすということにならないもどかしさがある。それでもあのオルガンの聴講な響きは魅力的だ。耳が対位法に慣れ親しまないうちに終了してしまったという感じだ。
 2曲目の西村朗の曲は、18世紀初頭のバッハから一挙に21世紀まで飛躍しての曲なので少々面食らうかと思ったが、そんなこともなくなかなか面白かった。一度しか聞いていないので、何とも詳しく感想がかけない。しかしもう一度聞いてみたいと思ったことは確かだ。和声法によった少し古風な曲らしく聞こえたが、バッハの後に聞くととても新鮮に感じた。曲の構成の特徴などわからないが、1996年ごろからバッハの曲の編集などを手がけていたという。バッハの曲の次に演奏するのにはふさわしいものだったのかもしれない。
 次のブラームスのコラールはバッハのコラールとはずいぶん違ったいる。これもはじめて聞く曲だが、最後がとても美しい旋律の曲だった。ブラームス最晩年の曲にふさわしい楽想・旋律なのだろう。
 リストの「レ・プレリュード」を聞いて、面食らった。もともと交響詩として管弦楽曲であり、これは聞いたことがある。そのイメージとまったく違う。これは、ピアノの編曲ともまったく違う、異質な音楽を聞くつもりで聴かなくてはいけないんだ、と納得したときには、曲の最後の場面になっていた。ただしオルガンの響きを十分に堪能した気分にはなれる。あの圧倒的な音量に身をゆだねることの快感を感じた。
 休憩後の「展覧会の絵」も前曲と同様、私はオリジナルな管弦楽曲やピアノ編曲の演奏は幾度も慣れ親しんでいる。オルガンとなると、元のおもむきとは本当に違う。管弦楽やピアノの演奏のようなメリハリの効いたリズム感や旋律の飛躍などは聞き取れない。重厚というか、重々しいというか、高音部を除けばメリハリの効いたリズムはない。まったく新しい曲として聞くしかないと感じた。
 パイプオルガンそのものは、レコード・CDでは幾度か聞いているが、実際に聞いてホール全体を震わし、腹に響いてくる空気の振動を感じるのとはずいぶんと差があるのではないか。今日は存分にそれを味わえたような気がする。ホール全体を震わせ、腹に響くといっても、最近の電子楽器や巨大なスピーカーのボリュームを目いっぱいにして鳴らす電気的な音とはまったく違う。鼓膜を破るような暴力的な音とはまったく違う。

 このパイプオルガンについて、構造や演奏についての基本的な知識を身につけたいとも感じた。4月から1ドル=100円コンサートとして毎月1回、お昼の40分ほどの演奏会が続けられるらしい。演奏家も曲もバラエティーに富むものなので、オルガンに親しむには面白い企画だ。

 このみなとみらいホールではいつも1回席の後方の中央付近で聴いてきた。今回初めて左右のボックス席の雰囲気を味わおうと、左側後方の二階のボックス席をとってみた。二階席の最前列だったので、1階がすぐ真下に見える。人工的な構造物の上では高所恐怖症のように膝がちょっと緊張して、目をつぶって音に身をひたそうとすると、不安になった。同じ二階席でも一番先頭は今後遠慮することにしようと思った。

 4時に演奏会が終了したので、昨年に続いてこのホールからすぐの掃部山(かもんやま)公園に桜を鑑賞に行った。掃部山公園は訪れていた人は特に多くはなかったが、それでもランドマークタワーをバックにしたソメイヨシノ、シダレザクラを盛んに写真におさめていた。若い人のグループがシートに転がって大分お酒を飲んだようで、奇声を発して大騒ぎをしていたので、早々に退散。近くの伊勢山皇大神宮の境内まで足を伸ばして桜を見てきた。