頭が疲れているとき、体力も消耗しているとき、人物が登場する絵画は苦手である。静物画もあまり緻密に描かれていると頭の中で作品が回転して、疲れてしまう。そういう時は明るい風景画を見るとホッとする。
私が最初に風景画がいいな、と思ったのは印象派のまとめ役というか、年長者として若い印象派の画家たちに影響を与えたカミーユ・ピサロの作品を見たときである。
この作品は初期の作品である。明るい空と雲、長いがくっきりとした温かみのある人物の影、人物も風景の中の点景として描かれている。何かのドラマを演じていない。日常の中で、特に何事もないように通り過ぎていく。風景の中に人が溶け込んでいる。わずかな風も感じる。
色合いはセザンヌの色調にも似ている。いくつかのピサロの作品を見て、すっかりファンになってしまった。
この作品の構図も気に入っている。右側の三分の一くらいは木々の陰で少し暗く、左側の三分の二の明るさと均衡を保っている。道で画面が横一直線に区切られてしまうのを避けるように林を配置している。それでも右側に重みが残るのを左の人物を馬に乗せることで、さらに左右のバランスがとれるように私には感じられる。
この作品は、わ2017年に東京都美術館で開催された「ボストン美術館の至宝展」で見た。ピサロの作品はそれなりに見たことがあるが、この作品も初めて目にして気に入った。
ピサロを知ってから、のちになってロイスダールなどのオランダ風景画というものを知って、やはりとてもひかれた。特にオランダの風景画は空が全体の7割も占めるものなどもあり、驚いたことを思い出す。空も雲も、とても好ましく描かれている。
友人に「雲がちゃんと書けている絵はいい絵だ」などといわれてそうなのか、と思ったこともある。
バルビゾン派、ミレーやコローの作品もいいが、あまりに木々を濃密に描きすぎていると思う。あくまでも私の好みの問題であるけれども。
本日はこの絵を見たことで、いい睡眠になるとうれしい。