日曜日の深夜、月曜日に日付が変わってからBS放送で、カルロス・クライバー指揮、ウィーンフィルによるモーツアルトの第36番のシンフォニー「リンツ」と、ブラームスの第2番のシンフォニーを放映していた。1991年のウィーンでの録音・録画。
クラシック音楽ファンならば聞いたことのあるクライバーの名であるが、私は初めてその演奏と表情に接したと思う。
録画しておいて、月曜の深夜にモーツアルト、昨晩の深夜にブラームスを聴いた。
モーツアルトでは、指揮者はほとんど体を動かさず、曲想の変わるところ、変化のはじめだけ軽く腕を振るというスタイルにびっくり。しかし顔の表情にはすっかり見入ってしまった。動きの少ないことは驚くほどで、第三楽章のオーボエとファゴットの聴かせどころでは、なんと左手を式台の後ろの支えにおいてしまって、リラックスのポーズ。
モーツアルトの音楽の流れに任せて、スポットだけ腕を振るというスタイルである。
ところが昨晩聴いたブラームスでは、一転汗が流れるように躍動感あふれる指揮ぶりにまたまた驚いた。
モーツアルトとは違って、自ら音楽をつむぎ出す、あるいは編み上げるという姿勢に変化している。とはいえ現代の指揮者の大仰な指揮ぶりとも違う。
入念なリハーサルで有名な指揮者だったので、曲の解釈や自身の思いは伝わっており、指揮振りとは違った劇的な演奏にも魅了された。
楽器群の配置もまた古い形を基本にしているのであろうか。指揮者の左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン。ホルンが指揮者の左に位置し、金管では左からチューバ・トロンボーン・トランペットという今の配置とは全く逆であった。そして最後列にコントラバスが一列に並ぶという私には不思議な配置に思えた。
実際に音響が演奏会場ではどのように聞こえるのか、演奏会場で直に体験してみたくなった。
ウィーンフィルといったん決別した後の和解した時の演奏ということで有名になった演奏ということもネットの情報に載っていた。
またクライバーは、ベートーヴェンの第4番のシンフォニーにこだわりがあったようである。私はこの第4番が好みではない。一度クライバーの指揮による演奏を聴いてみたいと思った。ブラームスの第4番のシンフォニーも聴いてみたいとも思った。
現在の指揮者、特に若手の指揮者が大きな身振りで、曲の流れに合わせるという身振りよりも「自分が曲を紡ぎ出している」という姿勢の強調には、お節介な心配をしてしまう。指揮者の役割の変遷の違いがあると思うし、またテレビなどの映像表現との兼ね合いなどもあることは承知をしているが、独り相撲のようなあまり大仰な指揮ぶりには、私は違和感が強い。