果物の皮のあとは、種について考えてみたい。
果物の種というのは、普通果肉の中心部にある。
ところがスイカはどうだ。
果肉の中に種がバラバラに散らばっている。
まとまりのない奴らといわざるを得ない。
スイカと同じ仲間のメロンは、種が中心部に集まっており、種と果肉を分離して食べることができる。
スイカを食べるときは、常に種の存在を気にして、口の中で種を感じたら吐き出す、という作業をしなければならない。
そのスイカでさえ、種は表面には出ていない。
果実の表面に種が出ている果物がある。
イチゴである。
イチゴの表面に小さな硬い粒粒があるのが種である。
イチゴの種は、なぜ小さくなり表面に出ようと思ったのか。
種が中心にあると、動物は種をその場に捨てるから、遠くへ移動することができない。
イチゴは、種ごと食べざるを得ず、動物の移動に伴って繁殖地を広げることができる。
イチゴは高等戦術を考えたものである。
スイカにしろ、リンゴにしろ、ミカンにしろ、果実に対する種の大きさの割合は小さい。
ところがビワはどうだ。
ビワの種は、果実の大きさに対してあまりにも大きい。
果実の半分近くは種が占めている。
果物だって、人間に気に入られるように進化しているが、ビワは進化しようという気がまったく見られない。
頑固な奴といわざるを得ない。
バナナには種がない。
中心部にその痕跡らしいものがあるが、種は退化している。
バナナは、皮は剥きやすく、種はなく、一房にたくさんなり、おいしくて栄養があり、しかも安い。
人間に気に入られるように進化した賜物である。
バナナは、果物界の優等生といえる。
でも、バナナは、種がなくてどうやって増えるのだろう。