大学に入ってすぐ、馬術部に入部した。
馬術部を選んだのは、子供の頃、種子島の実家で農耕馬を飼っていて馬に愛着があったのと、それまで運動部の経験がなく、全員がゼロからスタートできるスポーツだったからだ。
歓迎コンパが開かれ、出席者に医者のOBがいたが、その人が数人を二次会に連れて行ってくれた。
場所は、城山観光ホテルのバーだった。
城山観光ホテルは鹿児島の一流ホテルであり、そこの高級バーに、種子島から出てきたばかりの田舎者の私が連れて行かれたのだ。
ステージではミラーボールが回転し、カルーセル麻紀のショーが行われていた。
OBはバーテンに
「この子に、スクリュードライバーを作ってやって」
と頼んだ。
後に私は、キャバレーやクラブでアルバイトをして、お酒のことも少しは詳しくなったが、このときは何も知らなかった。
スクリュードライバーが、ウォッカにオレンジジュースを混ぜたカクテルで、「女殺し」と異名をもつ強い酒であることを知るのは後のことだ。
口当たりがよく、2杯、3杯とグラスを重ねるうち、一次会ですでに酔っていた私は完全に意識を失った。
気が付いたのは、翌朝、寮の自室のふとんの中だった。仲間が連れてきてくれたのだ。
その日は、ひどい二日酔いに苦しめられた。
私はこのあと、様々なコンパで鍛えられ、少しずつお酒に強くなっていったが、このときは強烈なお酒の洗礼を受けたのだった。
ところで私は、スクリュードライバーに劣らずおいしいカクテルを、時々作って飲んでいる。
焼酎のパッションフルーツジュース割である。
氷の入ったグラスに焼酎を注ぎ、時計草の果汁を入れ、ねじ回し(スクリュードライバー)ではなく、スプーンでかき回して飲む。
トロピカルな風味のカクテルで、実においしい。
「女殺し」などという色っぽいものではなく、酒の相手をしてくれるのは古女房しかいないが・・・