「あいうえお、かきくけこ」
という五十音表がある。
日本語を学ぶとき、最初にお世話になるものである。
一見、完璧に見える表だが、この表にも謎がある。
文字の配列に関する謎である。
最初の行が「あいうえお」なのは理解できる。
母音であり、他の子音と区別されるからである。
ローマ字では、子音がka、ki、ku、ke、koと2字なのに対し、母音はa、i、u、e、oと1字であり、優位性は明らかである。
最初に「あ」が来ているのは、まあわかる。
人が驚いたときや感動したときなどに、自然に発する音であり、響きも明るい。
だが、そのあとの配列はどうやって決まったのだろうか。
発声練習で「あえいうお」というのがあるが、これは口を大きく開いた状態からすぼめた状態へ変化している。
だが「あいうえお」には、どのような規則性があるというのだろうか。
「い」は、「俺はいろは歌のトップだからな」といって2番目にもぐりこんだのだろうか。
さらに謎なのは、子音の配列である。
「かさたなはまやらわ」というのは、どんな理由で順番が決まったのだろうか。
考えられるのは、言葉の数の多い順番である。
「わ」行の言葉は実質的に「わ」しかないから、数は少なく最後に押しやられている。
手元の国語辞典から、数の多い順番に並べると、「かさはたまならやわ」であり、必ずしも数の多い順になっていない。
五十音表では、文字たちが配列の順番を巡って、せめぎあっているかも知れない。