過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
今回はベージュのノートからご紹介。
まだまだコメディ映画を漁りつつ、SFにもハマり、ミュージカルの名画にも出会った♪
photo1:悲惨な事件後、見事に復活しただけでなく、優勝を果たしたセレシュの記事。感動したなあ
photo2:東武美術館ってあったっけ?と思ったらなくなっちゃったんだね
photo3:アステアとジュディのヒット作。ジュディ、太ってなんかいないじゃん。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。
■『SLAUGHTERHOUSE-FIVE』(1971)
原作:カート・ヴォネガット・Jr. 監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:マイケル・サックス、ロン・リーブマン ほか
新しいノートの最初を飾るのは、なんとも不思議で可笑しくて、悲しくて、クレイジーな戦争SF映画。
どこにもないね、こんなの。'70代だから撮れた作品。この原作者と監督に注目。
このドレスデンと爆撃は事実だろうか? 1945年2月、突然白い光を見てガラスに囲まれた異星に来ちゃう展開がスゴイ。
相手は四次元で姿は見えないけどショー好き。もし地球人が他の知的生命体を見つけたらきっと同じように歓迎するだろうね。
ほどよく親切に、ほどよい残酷さで。
異星人いわく「世界の終わりは地球のせいじゃなく、宇宙を吹き飛ばす兵器のボタンを誤って押した奴がいた」から。
「人生の良い時だけを見よ」「世界は瞬間の集合でできている」
本当ぶっ飛んでるよ、まったく
言ってみれば、これは最高に運がいい男の話で、ボーっとしながらも笑みを絶やさない彼は人に好かれるものね。
白い光を見て不思議がる愛犬スポットの名演技はサイコー!こんな作品に出逢えた私は幸せだ。
■『陽気な幽霊』(1945)
監督:デビッド・リーン 出演:レックス・ハリソン、コンスタンス・カミングス ほか
原作者のノエル・カワード作には他に『逢びき』、出演作には『80日間世界一周』『ハバナの男』『夕なぎ』がある。
『インドへの道』『アラビアのロレンス』等で有名なD.リーンによって映画化。
ちょっと気取って礼儀正しいイギリス英語のイントネーションとユーモアが楽しいゴーストもの。テクニカラー。
人の体を別の人がスゥッと通り抜ける映像技術を活かして、中年バツイチ夫婦の愛情、嫉妬、駆け引きを描いた
“コメディファン必見”とうたったクラシック映画。
考えてみればとんでもなく怖くて悲しい「友引」の話。それを皮肉ってパロディ化するところがイギリス流のユーモアかな。
ハンサムできちっとした紳士なのにけっこう浮気者のハリソンが好演。
表向きは幸せで平穏な結婚生活だが、大尉と妻の浮気、夫の女遊び等でボロが出てくる、出てくる。
「紳士ヅラしてほんとうは退屈な男」「こんな家から離れて、人生を思い切り自由に楽しむんだ!」とかイギリス人の本音もチラリ。
妙なポーズや、童謡を歌ったり、今作はあの霊媒のおばさんが美味しいところをさらってる。
元々は舞台劇だそうで、舞台セットでポルターガイスト現象を作り出すのは苦労だろうね。
■『カレル・ゼマンの彗星に乗って』(1970)
原作:ジュール・ヴェルヌ 監督・脚本:カレル・ゼマン 出演:フランチシェク・フィリポブスキー ほか
SFカルトファンの間では幻の名作らしい。クラシックながら不思議な魅力とスタイルの1作。
パリ・ファンタスティック映画祭特撮賞受賞、テヘラン国際児童映画祭グランプリ受賞、これは聞き慣れないけど
確かに子どもから大人まで楽しめるファンタジア、スペインのお気楽ムードの中にも、
イギリス的な風刺も効いてて、T.ギリアムも影響を受けてるかな?
薄みどりや、真っ赤、セピア色に染まる画面が幻想ムードを盛り上げる。
アニメとの合成もキレイでなんでもありだから、船を爆破させて帽子だけが飛びあがるなんて粋なシーンも一丁上がりって感じ。
やっぱり恐竜シーンがイイネ。草を食べているのはよく動く模型で、恐竜は実は別の惑星から隕石の落下でやってきた説を基にしている。
どこに行っても国境などをめぐって戦争好きの人間たち。やっぱり外からの脅威しか団結する道はないのか?
■ソビエトSFファンタジー大全集 第1弾『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)
監督:ゲオルギー・ダネリア 出演:スタニスラフ・リュブシン ほか
ロシアのSFコメディ映画。ロシア人だってこんなぶっ飛んだユーモアを持っている
宇宙人は皆フルメタルのUFOでやって来て、オートメーション化した都市型惑星に住んでいるというイメージを
見事に打ち破って現れたのは、薄ら汚いオヤジと、アホギリギリの異文化。
観終わってもしばらくこのカルチャーショックは残りそう。
すっかりパッツ人の仲間入りして、上司に「クー」と挨拶してしまいそう。
途中で突然キン・ザ・ザ語の簡易な訳なんか出てきて教養番組みたいになったり、パッツ人は檻の中でしか歌えないとか、
黄色いステテコ、赤いステテコで格を表したり、下の者は鼻に鈴をつけて頬を叩いて手と股を広げる挨拶も変だし、
2人の男が小さなプールの中でじゃれているのを見て「遊んでいるのか?」「いやマジだ」ってセリフも笑える。
どこの星にも人種差別が存在する。その滑稽さを皮肉る。これは案外真面目なメッセージを持つ風刺コメディなんだ。
ちゃんと欲の深い信用できない奴らでも見捨てないからエライよ。
■『カビリアの夜』(1957)
原作・脚本・監督:フェデリコ・フェリーニ 出演:ジュリエッタ・マシーナ、フランソワ・ペリエ ほか
「カビリアは、真に愛してくれる男を純粋な心で待っている・・・」(F.フェリーニ
ずっと観たいと思っていたら図書館でバッタリ。『道』に続いて愛妻マシーナを主演に
娼婦が真実の愛を探してゆく姿をじっくり描いてゆく。
アカデミー外国語映画賞、カンヌ主演女優賞を獲得。
ニーノ・ロータの寂しげなメロディが作品を見事に盛り上げている。
オスカー役のF.ペリエのいかにもイタリアの優男ぶりがどこまで信じられるか、本物か、嘘か!?
観客もヒロインとともに喜び、悲しみ、疑い、祈る。
75万リラも貯めたらもっと実用的な使い道があるだろうけど、結局は結婚相手を見つけて養ってもらいたいってのが
女の本音なんだろう?ってところを鋭く突いている。
牧師がしたり顔で言うセリフ「結婚して子どもをたくさん産んで聖なる務めを果たしなさい」
どこの国、どの宗教も、女性に課す義務は同じなんだね。
ところで地の底から這い上がったカビリアは、あの後どう生きたのか? 結論は出していない。
小柄だけどドスのある威勢のいい声をして、いつもイキイキとした目をしたマシーナの独特な魅力と名演技が詰まっている。
私たちは偉大なる名監督を失ったけれども、彼が遺した名作はこれからもずっと大勢の人の心を動かすことだろう。
■『星の王子さま』(1974)
原作:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 監督:スタンリー・ドーネン
出演:スティーヴン・ワーナー、リチャード・カイリー、ジーン・ワイルダー ほか
「大切なことは心の中にある。本当に大切なことは目に見えないんだ」
人生の意味を探究する小さな王子の物語を、『雨に唄えば』『パリの恋人』等の名匠ドーネンが製作したミュージカル
観念的で詩的な童話、世界で広く深く愛されている名作だけに映画化するには難題な原作を
アニメや撮影法を工夫してファンタジックに描いている。テグジュペリが描いた挿絵をそのまま使っているのがイイ。
大勢の中から選ばれた王子役のスティーヴン少年が素晴らしい
本当に小麦畑のようにフワフワの金髪、マシュマロのような頬、緑色のガウンもピッタリ似合って、長くて難しいセリフもペラペラ。
彼を囲むベテラン俳優陣もイイ。R.カイリーは『ミスター・グッドバーを探せ』の父役。彼も歌えるんだ/驚
王子さまがハトに連れて行ってもらういくつかの星の変な人々のエピソード部分は、多少原作から離れていて、
大人社会への皮肉がいまいち伝わってこない。
サイケなクネクネダンスを踊るボブ・フォッシーは、有名なダンサー兼振付師で『オール・ザット・ジャズ』の人。黒尽くめでキメまくっている。
で、やっぱり今作で1番良かったのは、J.ワイルダーをキツネにキャスティングしたことだな。
そういえばモクモクフワフワの髪が野生のキツネに見えなくもないものね
♪どんどん近付いて、友達になるよ と歌う彼のイノセントで無邪気なイメージがピョンピョン跳び回るキツネにピッタリ!
でも全く初めてこの物語を観る子どもたちが、妙にセクシーな薔薇の女性や、ヘビ男、跳びまわるキツネ男をどう思うか、ちょっと心配。
ミュージカルの不自然さを嫌う人が多いのも分かる気がするけど、ま、それは別にして・・・
クルクル回る星の3つの火山を掃除する王子さまのシーンなんてどうやって撮ったのか不思議!
ストーリーのラストは、パイロットが無事、家に帰ってゆくシーンだけど、原作者のテグジュペリはそのまま二度と帰らなかった
心の中に美しい夢の世界を持っていた彼は一体どこに消えてしまったのだろう? 原作者を映画化した作品もぜひ観たい。
■ソビエトSFファンタジー大全集 第3弾『テイル・オブ・ワンダー 放浪物語』(1983)
監督・脚本:アレクサンドル・ミッタ 出演:タチアナ・アクシュタ ほか
やってくれるなあ~ロシアも! 丁寧に付いてる英題からして大物だもの。
MPもこうゆう中世劇が好きみたいだけど、清く貧しい姉と弟の姉弟愛から壮大なパロディまで
ひと息に突っ走っていく様は思いもよらない展開で、なんかとてつもない悲しさすら覚えるよ。観客すら置いていかれた感じで。
10歳も離れていたら姉弟以上の愛で結ばれるかのような終わり方だけど、
この時代の人は皆人工呼吸の訓練を受けているらしい。溺れた以外にも効果あるのね。
腑に落ちないところもあるけど、やっぱりスゴイよ。
スゴイSFは、コメディに通じるものがあるんだって気づかせてくれた。
■『ファントマ 危機脱出』(1964)
監督:アンドレ・ユヌベル 出演:ジャン・マレエ、ミレーヌ・ドモンジョ ほか
カッコイイねえ、この青く塗ったユル・ブリナーみたいなダブルスーツ着ちゃってるクールな奴。
悪役にしておくのはもったいない。八十二面相?銀行じゃなくて?
いろんな顔に変身できるマスクを持っているところが唯一彼の強みで、SFの部分で、所詮は生身の人間。
妙に人間臭さが漂ってくるのもフランスならでは。
銭形風警部のひょうきんさといい、バックに流れる軽快な音楽といい、完全にウケを狙ってて、
ヘタなコメディ映画より笑えるなあ、SFって。
これって人気TVシリーズにもなったのかな? これだけのキャラが揃っていたら文句なしだもんね。
刑事のマスクを取っても青い顔のマスク。そうとう蒸れて息苦しそうだけど、クールな表情は崩れない。
手許のボタンでセキュリティシステムの素晴らしさを見せ付けるのはいいけど、
ボタンに思いっきり説明のラベルが貼ってあるんじゃ、他人にもすぐいじられちゃうんじゃない?
この1作で秘密のほとんどを自分から喋っちゃったし、この後のネタはもつのか???
■『ドリームデーモン』(1988)
監督:ハーリー・コックリス 出演:キャサリン・ウィルホート、ジェマ・レッドグレーヴ ほか
なかなかの掘り出しモノ。古い館は『サイコ』、悪夢に引きこまれるヒロインは『エルム街の悪夢』に通じる上、
これは幼い頃に父親に虐待を受けて事故死した現場にいた少女が成人して失われた記憶を取り戻すという
心理学的な要素も絡み、数々の幻想的で効果的な映像が凝っている。
キョーレツなのは、マスコミのイヤラシイ男。どっかで観たことあるんだよな、同じような役で。いるだけでホラーだもの。
ヒロインの悪夢が現実とリンクしてて、しかも霊界?や別の少女の記憶とも結びついちゃってるアイデアが斬新。
普通の家や地下室、大きいから日本人にとってはそれ自体が迷路のようだけど、
幻想の階段やエレベータなんかとつながっていて、なおのこと出られないパズルのよう。
シュールレアリスムな奴ら~顔にパンチを食らって穴が開いて、グチャグチャしたものをいつも食べてて、
もう1人は顔が不気味にデフォルメされて、本当この2人のキャラはキョーレツ。
人はどうして夢を見るのかな?
体は眠っているのに勝手な仮想現実を作り出す脳のメカニズムって本当にミステリー。
その世界はどんな世界中の名監督でもかなわない映像体験のワンダーランドなんだ。
■『if...』(1968)
製作・監督:リンゼイ・アンダーソン 出演:マルコム・マクドウェル、デヴィッド・ウッド ほか
なるほど、これはかなりショッキングな社会派作品。主演のマルコム以外はスタッフ全員が新人ていう
イギリス・ニューウェーヴによる'60代の学園紛争を、じっくりと、斬新なアイデアをとりまぜて撮り上げた1作。
モノとカラーを使い分けて、穏やかなクラシック(聖歌?)をBGMに冗談とも現実とも言えない
イギリス名門パブリックスクール内での学校生活。
「体罰死事件」で校内暴力が社会問題として大きく取り上げらている現代の日本でも、ここまでは理不尽に厳しくはないよね
たしか英国の義務教育は、小さい時から寮生活をして、上下関係、協調性を学んでいくんだとか。
英国の発展にこうしたエリート教育が必要だとしても、決して人道的とは言えないな。
イギリス英語は、どーしてもMPのパロを思い出して笑っちゃうんだけど、彼らも名門大学出身者。
学校のパロが多いのも鬱憤晴らしも含めてMPスタイルでの強烈な社会批判なワケだ。
厳しすぎる、理不尽で、暴力的、こんな学校じゃ子どもの心に憎しみを植え付け、人間不信にさせるだけ。
トイレに頭を突っ込まれたりなんて、協調性を学ぶどころか弱い者イジメが当たり前になってる。
ミックはすっかり体制への憎しみを育てて、戦争武力フリーク になってしまった極端な例。
'60代の学園紛争は、ヒッピー思考の裕福な若者らによるラヴ&ピース、非暴力、学校の占拠のようなものだったみたい。
今の学校が平和なのは彼らの反逆のおかげなのか?
とすると、ここまで派手にやらなきゃ世の中の古い仕組みは変わらない、強行作戦も時には必要だってこと?!
映画は単なる娯楽から、その国の実体を外に伝え、告発するドキュメンタリー要素をも持つようになって
ニュースより強いメッセージを伝えることもできる。
当時、問題の真っ只中にいた学生や、関係者、親たちが今作を観たショックは大きかったろうね。
他に印象的なのが、男女がまったく遮断された環境にいるということ。
好奇心旺盛な子どもから大人の一歩手前の男子も、かなり禁欲的生活の中に閉じ込められている。
紅一点の女性スタッフに興味が集中しているのは笑えたし、雑誌のポルノ女優に妄想をふくらませているんじゃ逆に良くないよね。
その女性スタッフが生徒のいない部屋でまっぱで歩き回って解放感を楽しんでいるシーンも可笑しい。
今回はベージュのノートからご紹介。
まだまだコメディ映画を漁りつつ、SFにもハマり、ミュージカルの名画にも出会った♪
photo1:悲惨な事件後、見事に復活しただけでなく、優勝を果たしたセレシュの記事。感動したなあ
photo2:東武美術館ってあったっけ?と思ったらなくなっちゃったんだね
photo3:アステアとジュディのヒット作。ジュディ、太ってなんかいないじゃん。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。
■『SLAUGHTERHOUSE-FIVE』(1971)
原作:カート・ヴォネガット・Jr. 監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:マイケル・サックス、ロン・リーブマン ほか
新しいノートの最初を飾るのは、なんとも不思議で可笑しくて、悲しくて、クレイジーな戦争SF映画。
どこにもないね、こんなの。'70代だから撮れた作品。この原作者と監督に注目。
このドレスデンと爆撃は事実だろうか? 1945年2月、突然白い光を見てガラスに囲まれた異星に来ちゃう展開がスゴイ。
相手は四次元で姿は見えないけどショー好き。もし地球人が他の知的生命体を見つけたらきっと同じように歓迎するだろうね。
ほどよく親切に、ほどよい残酷さで。
異星人いわく「世界の終わりは地球のせいじゃなく、宇宙を吹き飛ばす兵器のボタンを誤って押した奴がいた」から。
「人生の良い時だけを見よ」「世界は瞬間の集合でできている」
本当ぶっ飛んでるよ、まったく
言ってみれば、これは最高に運がいい男の話で、ボーっとしながらも笑みを絶やさない彼は人に好かれるものね。
白い光を見て不思議がる愛犬スポットの名演技はサイコー!こんな作品に出逢えた私は幸せだ。
■『陽気な幽霊』(1945)
監督:デビッド・リーン 出演:レックス・ハリソン、コンスタンス・カミングス ほか
原作者のノエル・カワード作には他に『逢びき』、出演作には『80日間世界一周』『ハバナの男』『夕なぎ』がある。
『インドへの道』『アラビアのロレンス』等で有名なD.リーンによって映画化。
ちょっと気取って礼儀正しいイギリス英語のイントネーションとユーモアが楽しいゴーストもの。テクニカラー。
人の体を別の人がスゥッと通り抜ける映像技術を活かして、中年バツイチ夫婦の愛情、嫉妬、駆け引きを描いた
“コメディファン必見”とうたったクラシック映画。
考えてみればとんでもなく怖くて悲しい「友引」の話。それを皮肉ってパロディ化するところがイギリス流のユーモアかな。
ハンサムできちっとした紳士なのにけっこう浮気者のハリソンが好演。
表向きは幸せで平穏な結婚生活だが、大尉と妻の浮気、夫の女遊び等でボロが出てくる、出てくる。
「紳士ヅラしてほんとうは退屈な男」「こんな家から離れて、人生を思い切り自由に楽しむんだ!」とかイギリス人の本音もチラリ。
妙なポーズや、童謡を歌ったり、今作はあの霊媒のおばさんが美味しいところをさらってる。
元々は舞台劇だそうで、舞台セットでポルターガイスト現象を作り出すのは苦労だろうね。
■『カレル・ゼマンの彗星に乗って』(1970)
原作:ジュール・ヴェルヌ 監督・脚本:カレル・ゼマン 出演:フランチシェク・フィリポブスキー ほか
SFカルトファンの間では幻の名作らしい。クラシックながら不思議な魅力とスタイルの1作。
パリ・ファンタスティック映画祭特撮賞受賞、テヘラン国際児童映画祭グランプリ受賞、これは聞き慣れないけど
確かに子どもから大人まで楽しめるファンタジア、スペインのお気楽ムードの中にも、
イギリス的な風刺も効いてて、T.ギリアムも影響を受けてるかな?
薄みどりや、真っ赤、セピア色に染まる画面が幻想ムードを盛り上げる。
アニメとの合成もキレイでなんでもありだから、船を爆破させて帽子だけが飛びあがるなんて粋なシーンも一丁上がりって感じ。
やっぱり恐竜シーンがイイネ。草を食べているのはよく動く模型で、恐竜は実は別の惑星から隕石の落下でやってきた説を基にしている。
どこに行っても国境などをめぐって戦争好きの人間たち。やっぱり外からの脅威しか団結する道はないのか?
■ソビエトSFファンタジー大全集 第1弾『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)
監督:ゲオルギー・ダネリア 出演:スタニスラフ・リュブシン ほか
ロシアのSFコメディ映画。ロシア人だってこんなぶっ飛んだユーモアを持っている
宇宙人は皆フルメタルのUFOでやって来て、オートメーション化した都市型惑星に住んでいるというイメージを
見事に打ち破って現れたのは、薄ら汚いオヤジと、アホギリギリの異文化。
観終わってもしばらくこのカルチャーショックは残りそう。
すっかりパッツ人の仲間入りして、上司に「クー」と挨拶してしまいそう。
途中で突然キン・ザ・ザ語の簡易な訳なんか出てきて教養番組みたいになったり、パッツ人は檻の中でしか歌えないとか、
黄色いステテコ、赤いステテコで格を表したり、下の者は鼻に鈴をつけて頬を叩いて手と股を広げる挨拶も変だし、
2人の男が小さなプールの中でじゃれているのを見て「遊んでいるのか?」「いやマジだ」ってセリフも笑える。
どこの星にも人種差別が存在する。その滑稽さを皮肉る。これは案外真面目なメッセージを持つ風刺コメディなんだ。
ちゃんと欲の深い信用できない奴らでも見捨てないからエライよ。
■『カビリアの夜』(1957)
原作・脚本・監督:フェデリコ・フェリーニ 出演:ジュリエッタ・マシーナ、フランソワ・ペリエ ほか
「カビリアは、真に愛してくれる男を純粋な心で待っている・・・」(F.フェリーニ
ずっと観たいと思っていたら図書館でバッタリ。『道』に続いて愛妻マシーナを主演に
娼婦が真実の愛を探してゆく姿をじっくり描いてゆく。
アカデミー外国語映画賞、カンヌ主演女優賞を獲得。
ニーノ・ロータの寂しげなメロディが作品を見事に盛り上げている。
オスカー役のF.ペリエのいかにもイタリアの優男ぶりがどこまで信じられるか、本物か、嘘か!?
観客もヒロインとともに喜び、悲しみ、疑い、祈る。
75万リラも貯めたらもっと実用的な使い道があるだろうけど、結局は結婚相手を見つけて養ってもらいたいってのが
女の本音なんだろう?ってところを鋭く突いている。
牧師がしたり顔で言うセリフ「結婚して子どもをたくさん産んで聖なる務めを果たしなさい」
どこの国、どの宗教も、女性に課す義務は同じなんだね。
ところで地の底から這い上がったカビリアは、あの後どう生きたのか? 結論は出していない。
小柄だけどドスのある威勢のいい声をして、いつもイキイキとした目をしたマシーナの独特な魅力と名演技が詰まっている。
私たちは偉大なる名監督を失ったけれども、彼が遺した名作はこれからもずっと大勢の人の心を動かすことだろう。
■『星の王子さま』(1974)
原作:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 監督:スタンリー・ドーネン
出演:スティーヴン・ワーナー、リチャード・カイリー、ジーン・ワイルダー ほか
「大切なことは心の中にある。本当に大切なことは目に見えないんだ」
人生の意味を探究する小さな王子の物語を、『雨に唄えば』『パリの恋人』等の名匠ドーネンが製作したミュージカル
観念的で詩的な童話、世界で広く深く愛されている名作だけに映画化するには難題な原作を
アニメや撮影法を工夫してファンタジックに描いている。テグジュペリが描いた挿絵をそのまま使っているのがイイ。
大勢の中から選ばれた王子役のスティーヴン少年が素晴らしい
本当に小麦畑のようにフワフワの金髪、マシュマロのような頬、緑色のガウンもピッタリ似合って、長くて難しいセリフもペラペラ。
彼を囲むベテラン俳優陣もイイ。R.カイリーは『ミスター・グッドバーを探せ』の父役。彼も歌えるんだ/驚
王子さまがハトに連れて行ってもらういくつかの星の変な人々のエピソード部分は、多少原作から離れていて、
大人社会への皮肉がいまいち伝わってこない。
サイケなクネクネダンスを踊るボブ・フォッシーは、有名なダンサー兼振付師で『オール・ザット・ジャズ』の人。黒尽くめでキメまくっている。
で、やっぱり今作で1番良かったのは、J.ワイルダーをキツネにキャスティングしたことだな。
そういえばモクモクフワフワの髪が野生のキツネに見えなくもないものね
♪どんどん近付いて、友達になるよ と歌う彼のイノセントで無邪気なイメージがピョンピョン跳び回るキツネにピッタリ!
でも全く初めてこの物語を観る子どもたちが、妙にセクシーな薔薇の女性や、ヘビ男、跳びまわるキツネ男をどう思うか、ちょっと心配。
ミュージカルの不自然さを嫌う人が多いのも分かる気がするけど、ま、それは別にして・・・
クルクル回る星の3つの火山を掃除する王子さまのシーンなんてどうやって撮ったのか不思議!
ストーリーのラストは、パイロットが無事、家に帰ってゆくシーンだけど、原作者のテグジュペリはそのまま二度と帰らなかった
心の中に美しい夢の世界を持っていた彼は一体どこに消えてしまったのだろう? 原作者を映画化した作品もぜひ観たい。
■ソビエトSFファンタジー大全集 第3弾『テイル・オブ・ワンダー 放浪物語』(1983)
監督・脚本:アレクサンドル・ミッタ 出演:タチアナ・アクシュタ ほか
やってくれるなあ~ロシアも! 丁寧に付いてる英題からして大物だもの。
MPもこうゆう中世劇が好きみたいだけど、清く貧しい姉と弟の姉弟愛から壮大なパロディまで
ひと息に突っ走っていく様は思いもよらない展開で、なんかとてつもない悲しさすら覚えるよ。観客すら置いていかれた感じで。
10歳も離れていたら姉弟以上の愛で結ばれるかのような終わり方だけど、
この時代の人は皆人工呼吸の訓練を受けているらしい。溺れた以外にも効果あるのね。
腑に落ちないところもあるけど、やっぱりスゴイよ。
スゴイSFは、コメディに通じるものがあるんだって気づかせてくれた。
■『ファントマ 危機脱出』(1964)
監督:アンドレ・ユヌベル 出演:ジャン・マレエ、ミレーヌ・ドモンジョ ほか
カッコイイねえ、この青く塗ったユル・ブリナーみたいなダブルスーツ着ちゃってるクールな奴。
悪役にしておくのはもったいない。八十二面相?銀行じゃなくて?
いろんな顔に変身できるマスクを持っているところが唯一彼の強みで、SFの部分で、所詮は生身の人間。
妙に人間臭さが漂ってくるのもフランスならでは。
銭形風警部のひょうきんさといい、バックに流れる軽快な音楽といい、完全にウケを狙ってて、
ヘタなコメディ映画より笑えるなあ、SFって。
これって人気TVシリーズにもなったのかな? これだけのキャラが揃っていたら文句なしだもんね。
刑事のマスクを取っても青い顔のマスク。そうとう蒸れて息苦しそうだけど、クールな表情は崩れない。
手許のボタンでセキュリティシステムの素晴らしさを見せ付けるのはいいけど、
ボタンに思いっきり説明のラベルが貼ってあるんじゃ、他人にもすぐいじられちゃうんじゃない?
この1作で秘密のほとんどを自分から喋っちゃったし、この後のネタはもつのか???
■『ドリームデーモン』(1988)
監督:ハーリー・コックリス 出演:キャサリン・ウィルホート、ジェマ・レッドグレーヴ ほか
なかなかの掘り出しモノ。古い館は『サイコ』、悪夢に引きこまれるヒロインは『エルム街の悪夢』に通じる上、
これは幼い頃に父親に虐待を受けて事故死した現場にいた少女が成人して失われた記憶を取り戻すという
心理学的な要素も絡み、数々の幻想的で効果的な映像が凝っている。
キョーレツなのは、マスコミのイヤラシイ男。どっかで観たことあるんだよな、同じような役で。いるだけでホラーだもの。
ヒロインの悪夢が現実とリンクしてて、しかも霊界?や別の少女の記憶とも結びついちゃってるアイデアが斬新。
普通の家や地下室、大きいから日本人にとってはそれ自体が迷路のようだけど、
幻想の階段やエレベータなんかとつながっていて、なおのこと出られないパズルのよう。
シュールレアリスムな奴ら~顔にパンチを食らって穴が開いて、グチャグチャしたものをいつも食べてて、
もう1人は顔が不気味にデフォルメされて、本当この2人のキャラはキョーレツ。
人はどうして夢を見るのかな?
体は眠っているのに勝手な仮想現実を作り出す脳のメカニズムって本当にミステリー。
その世界はどんな世界中の名監督でもかなわない映像体験のワンダーランドなんだ。
■『if...』(1968)
製作・監督:リンゼイ・アンダーソン 出演:マルコム・マクドウェル、デヴィッド・ウッド ほか
なるほど、これはかなりショッキングな社会派作品。主演のマルコム以外はスタッフ全員が新人ていう
イギリス・ニューウェーヴによる'60代の学園紛争を、じっくりと、斬新なアイデアをとりまぜて撮り上げた1作。
モノとカラーを使い分けて、穏やかなクラシック(聖歌?)をBGMに冗談とも現実とも言えない
イギリス名門パブリックスクール内での学校生活。
「体罰死事件」で校内暴力が社会問題として大きく取り上げらている現代の日本でも、ここまでは理不尽に厳しくはないよね
たしか英国の義務教育は、小さい時から寮生活をして、上下関係、協調性を学んでいくんだとか。
英国の発展にこうしたエリート教育が必要だとしても、決して人道的とは言えないな。
イギリス英語は、どーしてもMPのパロを思い出して笑っちゃうんだけど、彼らも名門大学出身者。
学校のパロが多いのも鬱憤晴らしも含めてMPスタイルでの強烈な社会批判なワケだ。
厳しすぎる、理不尽で、暴力的、こんな学校じゃ子どもの心に憎しみを植え付け、人間不信にさせるだけ。
トイレに頭を突っ込まれたりなんて、協調性を学ぶどころか弱い者イジメが当たり前になってる。
ミックはすっかり体制への憎しみを育てて、戦争武力フリーク になってしまった極端な例。
'60代の学園紛争は、ヒッピー思考の裕福な若者らによるラヴ&ピース、非暴力、学校の占拠のようなものだったみたい。
今の学校が平和なのは彼らの反逆のおかげなのか?
とすると、ここまで派手にやらなきゃ世の中の古い仕組みは変わらない、強行作戦も時には必要だってこと?!
映画は単なる娯楽から、その国の実体を外に伝え、告発するドキュメンタリー要素をも持つようになって
ニュースより強いメッセージを伝えることもできる。
当時、問題の真っ只中にいた学生や、関係者、親たちが今作を観たショックは大きかったろうね。
他に印象的なのが、男女がまったく遮断された環境にいるということ。
好奇心旺盛な子どもから大人の一歩手前の男子も、かなり禁欲的生活の中に閉じ込められている。
紅一点の女性スタッフに興味が集中しているのは笑えたし、雑誌のポルノ女優に妄想をふくらませているんじゃ逆に良くないよね。
その女性スタッフが生徒のいない部屋でまっぱで歩き回って解放感を楽しんでいるシーンも可笑しい。