メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『アミが来た』(徳間書店)

2013-06-12 20:11:41 | 
『アミが来た』(徳間書店)
エンリケ・バリオス/原作 さくらももこ/訳・絵 うんのさしみ/絵

エンリケさんはアミシリーズがたくさんの人に読まれたことは喜びつつ、
肝心な子どもたちが本の一部しか理解できずがっかりしたかもしれないことをずっと“借り”に思っていたという。
そして、書いたのがこの絵本。


【内容抜粋メモ】

●エンリケさんによる「はじめに」メモ
ほとんどの人は、今日を生きるために忙しいので“生活する”時間がありません。
毎日、目を覚まし、1日中働き続け、家へ帰り、疲れ果てて眠りにつきます
毎日毎日、この繰り返し。それは生きているのではなくて、ただ存在するために奮闘しているだけです。
どうして、そんなに、頑張らなくてはならないのか?
それは、競争のためです。国々も会社も宗教も競争しています。
ときどき、競争がひどくなると、暴力や戦争を引き起こしてしまいます。
でも、競争のかわりに協力したなら・・・?


●あらすじ
ペルリータは愛猫のコポと一緒に「あの一番大きな星が降ってきて、自分のものになればいいのになあ!」と夢見ている
すると、ある日、大きな星が屋上に落ちてきた
慌てて行ってみると、優しく笑う少年・アミがいた。



アミ「この星はみんなほしがるけど、星を持つということはとても重大なことなんだ。
   星の名前は“愛によって結ばれた世界”といって、だれかの胸につけてもらわないと成長しないけど、
   つけた瞬間から愛によって結ばれた世界のために努力することを誓わなきゃならない。
   すると、人々の間で起こる争いごとや、間違ったことに対してときどき心が痛くなることもある」
そう言われてちょっと迷うけど、つけることを決めたペルリータ。

胸に星をつけたこと、アミのことを父母に話しても信じてもらえず、
母に「精神家のお医者さまに診てもらわなくてはいけないわ」と言われ、
医者に話すと一応信じてくれたようだった(ほんとかな?



誕生日に欲しかったクマのぬいぐるみポンピをもらって、友だちに祝ってもらい
屋上でまたアミに会うことを許してもらい、再会を喜びあう2人。
こんどは円盤に乗って山まで行く。



戦争 の映像をテレビで見て流した涙が輝く宝石のようになったのをアミに見せると、
「それは君の胸にある星の涙なんだ。それをあげたいと思う友だちにあげると、だんだん育って星に成長するんだよ」

学校に行く日が来て、怖くなって帰ってきてしまったペルリータ。
母にも怒られて沈み、アミからもらった鏡の電話で話すと、
また円盤の旅に連れていってくれて、いろんな国の子どもたちが楽しそうに学校に行く様子や、
学校で絵を描いたりして楽しそうな様子を見て、ペルリータは安心する。

アミ「戦争の責任はだれにあると思う?“無知”さ。知らないということだよ。
   愛というものを理解し、愛とともに生きていたら、問題はかんたんに解決するのに、そのことを人間は知らないんだ」

ペルリータ「学校では教えてくれないの?」

アミ「そうだね、あんまり教えないね。みんな愛について知らないから、そのことを本に書いて教えようとする人もほとんどいない」

ペルリータ「わたし、世界は愛によって結ばれるべきだって、本に書いてみたいな

アミ「そのためには学校に行って、字を書いたり、読むことを習わなきゃね」




●ももこさんによる「あとがき」メモ
この広い宇宙の中には、地球人より進歩した魂の先輩たちがたくさん存在していると私は思います。
その先輩たちは、きっといろいろな所で私たちを助けてくれていると私はずっと前から思っていました。
エンリケさんの物語は、それをとてもわかりやすく豊かに深く伝えてくれています


ももこさんが翻訳もされていると知ってビックリ!
ペルリータと、その他の背景のすべてをうんのさんが描いたとのこと。
ももこさんとは180度違ったテイストだけど、ゲームやCGアニメの世界に慣れている
現代のコたちの目にはインパクトがあって、親しみやすいのかもしれないな。

長編のアミシリーズと比べたら、話をかなりはしょっていて、子ども向けに書かれているから、
「みんなキライな学校にちゃんと行きましょうね」みたいなテーマに誤解されないかしら?て気もした
もっと続きが出版されたらいいけど、長編のほうも絵本もその後はアミについて書いてないようだし。
その憧れのエンリケさんに、ももこさんが会いに行ってしまった物語が『ももこのトンデモ大冒険』に書かれているという。


本書の初版は2002年。
一連のアミシリーズを読んで芽吹いた気持ちもあるだろうし、
「そんな夢みたいなこと、創作の1つにすぎない」と忘れてしまって
元の繁忙な日常生活に戻ってしまった人もいるだろう。

ヨーコもジョンも言っているとおり「イマジン(想像)しつづけること」。
それが平和で愛にあふれた世界、飢餓も、苦しみも、戦争もない星を作る第1歩なんだ。




♪夢かもしれない
 でもその夢を見てるのは
 君独りじゃない
 仲間がいるのさ
(イマジン/忌野清志郎訳


コメント

『夢十夜』(パロル舎)

2013-06-12 18:33:56 | 
『夢十夜』(パロル舎)
夏目漱石/作 金井田英津子/画

内田百間『冥途』萩原朔太郎『猫町』ですっかり魅了されてしまったシリーズ3冊目。

「こんな夢を見た。」からはじまるフシギな物語。
これは本当に見たユメ日記なのか? それともまったくの創作なのか?

漱石の文章は、百聞さんよりさらに旧仮名づかいが多くて、
日本語の底知れない魅力の奥深さを感じた。
そして先日観た『夏目漱石の美術世界展』にあった通り、絵をモチーフにして書いた話もあって興味深い。

そして、なによりも金井田さんの画が本当に素晴らしい
とくに構図の斬新さにいちいち息を飲んでしまうほど。
漱石の短くも豊かな文章力に、金井田さんの版画絵がまったく負けていない。
このどこまでも夢幻の昭和の匂いにうっとりする。


「第1夜」
瓜実顔の女が「もう死にます」と言うが、血色もよく、俄かに信じ難い。
「いつ逢いに来るかね」と尋ねると、「百年待っていて下さい」と言う。
日が昇り、日が沈み、長いこと待っているうちに騙されたんじゃないかと疑い始めていると、
女を埋めた土から真っ白な百合が咲いて自分のほうに傾いた。
「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。

【気になる言葉】
判然(はっきり)
色沢(つや)
首肯(うなず)いた


「第2夜」
  
和尚が「お前は侍だから悟れぬはずはなかろう。悟れぬなら人間の屑じゃ。口惜(くや)しければ証拠を持って来い」と言われて、
もし置時計が次の刻(とき)を打つまでに悟れなかったら自刃する。悟れたら和尚の首をとろうと決心するが、
侍はなかなか悟りが来なくて、イライラしてると時計がチーンと鳴る。



【気になる言葉】
遠近(おちこち)
薬缶頭(やかんあたま)
好加減(いいいかげん)


「第3夜」

夜、自分の子どもを負ぶって森へと歩いている。子どもなのになにもかも分かっているというように
大人びた口のききかたをして気味が悪くなり、森に捨ててしまおうと考えていると、それも見通しているようだ。
「どうも盲目は不自由でいけないね。負ぶって貰ってすまないが、
 どうも人に馬鹿にされていけない。親にまで馬鹿にされていけない。」
ある杉の木にさしかかると「御父(おとっ)さん、その杉の根の処だったね。御前がおれを殺したのは今からちょうど百年前だね。」
そうだった、と思い出すと子どもは石地蔵のように重たくなった。


「第4夜」

酔った商人のような爺さんに歳やら聞いてものらくらと交わされる。
子ども相手に「絞った手ぬぐいが今に蛇になるから、見ておろう。見ておろう」と言うので、
男の子は1人きりになっても見ていたが、爺さんは河へざぶざぶ入っていって、とうとう上がって来なくなる。

【気になる言葉】
神さん(かみさん)


「第5夜」
 
戦に負けて捕虜になり、大将から「死ぬか生きるか」と聞かれ「死ぬ」と答えたが、
「その前にひと目思う女に逢いたい」と言うと、「夜が明けて鶏が鳴くまで待つ」と言われる。
その頃、女は裸馬に乗って早く飛んで来ようとするが、こけこっこうという鳴き声がして
手綱を急に緩めたため、馬とともに岩の下に落ちる。鶏の鳴く真似をしたのはアマノジャクだった。

【気になる言葉】
天探女(あまのじゃく)


「第6夜」

運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいると聞いて見に行く。
周りは皆明治の人たちなのに、運慶だけが昔のままの格好で、どうして今時分まで生きているのかと不思議に思う。
周りの1人が「あれは自分で彫っているんじゃない。木の中に埋まっているのを掘り出すまでだから間違うはずはない」
と言ったのが気になって、それなら自分にも出来るはずだと一目散に家に帰り、
薪にするつもりだった樫を何本も彫ってみたがいっこうに仁王は出てこない。


「第7夜」
 
船に乗っていて、船員にどこへ行くのか聞いても笑われてしまう。
いつ陸(おか)に上がれるかも分からず心細くなって、海に飛び込んで死のうとするが、
足が甲板を離れた瞬間、急に命が惜しくなって、よせばよかったと思ったがもう遅い。
船は通り過ぎてしまい、どこへ行くのか判らない船でも、やっぱり乗っていればよかったと思いながら、
無限の後悔と恐怖を抱いて黒い波のほうに静かに落ちて行った(恐ろしい・・・

【気になる言葉】
半巾(ハンケチ)
洋琴(ピアノ)


「第8夜」
 
床屋に入って椅子にかけると、鏡に映った往来の人が見え、その1人1人が気になって仕方ない。
薄い髭を捻って「さあ、頭もだが、どうだろう物になるだろうか」と主人に聞くが答えない
お代を払って外に出ると、金魚売りが金魚を売っている。

【気になる言葉】
帳場格子(ちょうばごうし)


「第9夜」
 
若い母と三つになる子どもがいる。父はある日出かけて帰ってこない。
母は夜になると子どもを背負って八幡宮に夫の無事を祈って、お百度参りをしていたが、
夫はとうの昔に浪士に殺されていた。
こんな悲しい話を、夢の中で母から聞いた。

【気になる言葉】
森(しん)として
雪洞(ぼんぼり)
四隣(あたり)
冷飯草履(ひやめしぞうり)=緒も台もわらで作った粗末なわら草履。
一図(いちず)


「第10夜」
 
庄太郎は正直者の閑人で、水菓子屋の店先でなにも注文せず、往来の女の顔を眺めて感心するのが道楽
ある日、立派な着物を着た女がひどく気に入って、彼女が買った果物の籠が重いというので持ってあげようと一緒に行って戻らなくなった。
7日目になり、皆が心配していたらやっと帰ってきた。女と山へ行っていたんだという。

絶壁まで来て、「ここから飛び込んで御覧なさい」と女がいうので断ると、
「それでは豚に舐められますが好うござんすか」と聞かれた。
庄太郎は豚が大嫌いだったが命には代えられないと思っていると、幾万匹か分からないほどの豚がやって来る。
鼻先をステッキで触ると岩下に落ちていくが、それも追いつかずとうとうその場で倒れてしまう。
親戚の健さんは、「だからあんまり女を見るのは善くないよ。けれども庄太郎のパナマの帽子が貰いたい」と言う。
(あれ?庄太郎さんは帰ってきたんじゃなかったの?

【気になる言葉】
水蜜桃(すいみつとう)
気作(きさく)

この話がブリトン・リヴィエアー作「ガダラの豚の奇跡」からヒントを得たんだな。


追。
パロル舎さんの著書大好きなのに、なんと、2012年に倒産しちゃったのhere
なんてこった・・・いい本を出すことと、経済は別物なんだね
わたしも図書館で借りてる身としては、なにも言えないないけど/謝

コメント (2)

『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』エドワード・ゴーリー

2013-06-12 13:07:43 | 
『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』(河出書房新社)
ヒレア・ベロック/文 エドワード・ゴーリー/絵 柴田元幸/訳

2010年初版。図書館で久々ゴーリーの絵本を見つけてテンションが上がった!
天から諭す手、愉快に遊ぶ子どもたちの表紙からもうMPアニメ的なブラックユーモアが感じられる。

【柴田元幸さんによる訳者あとがきメモ】
19世紀後半のイギリス、ヴィクトリア朝の人々は教訓話が好きだった。
ルイス・キャロルは、それを揶揄して『不思議の国のアリス』を書いたのではと思われる。
本書は、1907年に刊行された「Cautionary Tales for Children(子どもたちのための訓戒物語)」を基にして
12篇の似非教訓物語のうち7篇にゴーリーが挿絵を付し、ゴーリーの死後2002年に刊行された。

ほかにも、ベロックの生前刊行された、彼の友人であるバジル・ブラックウッドの挿絵による
『子供のための教訓詩集』というものもあるから比べるのも面白い。

ゴーリーが他人の作品に絵をつけた絵本は、日本では『ジャンブリーズ』『輝ける鼻のどんぐ』に続いて3冊目。
『輝ける鼻のどんぐ』は、図書館検索してもヒットしなくて、まだ読んでない

わざわざ枠を描きつつ、そこからはみ出す要素のある絵が面白い。
大人の歪曲した価値観がいかに子どもに伝染していくかは、
彼らの子どもらしからぬ陰鬱な表情から充分うかがい知れる。


●ジム 乳母からにげてライオンに食われた子の話


●ヘンリー・キング 紐をかんで苦しみにあえぎ幼くして世を去った子の話


●マチルダ うそをついて焼け死んだ子の話


●フランクリン・ハイド 泥遊びをして伯父さんに懲らしめられた子の話

他山の石=自分の修養の助けとなる他人の誤った言行。

●ゴドルフィン・ホーン 高慢の罪が祟って靴みがきになりはてた子の話


●アルジャーノン 弾の入った銃で遊んで妹に当たりはしなかったけれど父親に叱られた子の話


●ヒルデブランド 通りかかった自動車におびえて理をさとされた子の話
 

コメント

宮藤官九郎×葉加瀬太郎@SWITCHインタビュー

2013-06-12 12:23:10 | テレビ・動画配信
『SWITCHインタビュー 達人達 “宮藤官九郎×葉加瀬太郎 ~脚本家の妄想力 バイオリニストの爆発力”』 Eテレ

「あさイチ」でクドカンがゲストで出た際、予告していたから予録して見てみた。

宮藤官九郎

最初は、クドカンサイドからの話。バックは「あまちゃん」の春子の秘密の部屋のセット
すでに聞いたことあるエピソードもあったけど、さらにディープな写真とか見れて笑ったw

 
中学生の頃は「たけしのオールナイトニッポン」を聞いてて、「隣りで笑ってる高田文夫さんていいな」から始まった。
私も好きで聞いてたけど、これで人生決めちゃう人もいるんだから分かんないもんだね。

「あまちゃん」では、田舎に住む人が、他県の人には謙遜しつつ、バカにされるとカチンとくる。
意外と周りが見えていなかったり、などにポイントを置いて書いているとのこと。
「自分に近いものを、もっと愛してはどうでしょう?」

「ドラマは15分、45分、せいぜい長くて1時間。その中でその人の全部なんて言い表わせない。
 だから、その人の習性を表現できればいいかな、と」

 
キョンキョンと、『中学生円山』の坂井真紀さんがインタビューに登場。
キ「演じているほうは無意識だけど、通して見てみると泣けたりするところがさすが」

ク「妄想はいくらでも自由に描けるけど、現実もいいじゃないか。
  自分の一番近いところに、一番愛すべきものがある」

 「今の若いコには“好きなもの売ってないから作んなきゃ”という感覚がない気がする。
  手に入るものの中で好きなものを決めている」

『うぬぼれ刑事』の主人公って「うぬぼれ」だけで名前を決められてないんだ!爆


葉加瀬太郎
ハカセさんサイドの話は、NHK506スタジオにて。
朝ドラの「てっぱん」(2010)のテーマ曲の作曲もしてたんだ(このドラマ自体知らないけど
クドカンの娘・通称“かんぱ”ちゃんがバイオリンを習い始めたキッカケがハカセさんだという
娘から手書きの質問手紙を預かっていて、「なぜ渦巻きに鼻を向けないんですか?」、
「“情熱大陸”の最初の音はなんですか?」等、けっこう突っ込んだ質問に爆。

ハカセさん持参のバイオリンのお値段は、なんと1億円
朝、起きると用事がなくても眺めて、手入れする、恋人みたいな存在らしい
奥さんは、女優の高田万由子さんなんだ(知らなかった

 
記憶がある頃からすでにバイオリンを持って、クラシックにどっぷり浸かっていたが、
「これって作曲家のコピーじゃん」て思ったキッカケは、なんとピストルズのコピーバンド
ハ「破壊することで何かを創り出す」ことに惹かれ、これまでになかったアプローチで注目される。


セリーヌ・ディオンとも共演。高い評価を受けた。

意外なのは、今でもステージに立つ前は異常に緊張すること。
ハ「なんで今日、ここでこんなことしなきゃならないんだろう。
  なんでこんな仕事選んじゃったんだろうって毎晩思う

ク「バンドでは思わないけど、舞台では時々思います。
  最初の5分やって観客に嫌われたら、そのあとの2時間嫌われっぱなしじゃん。
  芝居の初日の第一声で嫌われたら、あと1ヶ月嫌われっぱなし、とか」

 「最初はバンド(グル魂)のライブ全部、台本を書いてました。
  でも、俺が作ったルール、型にはめて結局、毎回同じようなステージになる気がして」


「伝統」について

クドカンは歌舞伎「天日坊」にも挑戦したんだっけ。


ハカセさんは、昔から感銘を受けて心酔しているブラームスに改めて取り組んでいるという。

ハ「ブラームスの楽譜は、ドラマとしてあまりにも緻密。謎を読み解く楽しみがある。
  その時代、もっと有名で人気のあったものもある。その中で、なぜ200年、300年残っているか。
  それは、作り手が残そうと思って書いているに違いないと思う、絶対」

クドカンは、現在、「あまちゃん」のラストスパートに必死だそうな。早いなあ!終わってほしくない。


コメント