■ふしぎナゾ最前線! 現代科学の限界にいどむ『ナノテクがみちびく科学の未来』(旺文社)
谷田和一郎/文
名前は聞くけど、一体何なのか分からないナノテクが、分かりやすい文章や写真資料などでちょっと見えてくる1冊。
すでにけっこう身近に利用されているんだな。そして、近未来にも深く関係している最先端科学分野なんだ。
それにしてもDNAサイズのものを見たり、動かしたり、形成したりって、信じられないな/驚
しかも、ナノテクの歴史には日本人の博士が何人も関わっていて、日本人すげいや!
【内容抜粋メモ】
●ナノという単位の大きさ
ナノとはラテン語で「こびと」の意。
1mmの1/1000は1マイクロメートル。その1/1000が1ナノメートル。
DNAは幅2~3ナノメートル。
世界でもっとも小さいワイングラス。外径が約2800ナノメートル
●分子、原子
複雑な物質でも約100種類の原子からなりたっている。
ヒトも細かく分解すれば、ほとんどが炭素原子、水素原子、酸素原子。
原始がいくつか集まってできているのが分子。例:水はH2O。
ナノの世界で自由に組み立てることで、物質の性質を変えたり、これまでなかった装置や機械がつくれる。
バイオテクノロジー、IT、環境技術などに画期的な進歩をもたらすと期待される。
鉛筆の芯とダイヤモンドは同じ炭素原子でできている。
並び方、結びつき方が違うだけで、まったく違う物質になる。
●ナノテクの歴史
1958年 日本の江崎玲於奈博士がナノメートルサイズの薄膜を埋め込んだ物質をつくってノーベル物理学賞を受賞。
1959年 アメリカのリチャード・ファインマン博士は、原子を並べたりして新しいものをつくり出せると提唱。
別のテーマの研究で日本の朝永振一郎博士とノーベル物理学賞を受賞した。
1986年 日本の大澤映二博士により提唱され、アメリカのリチャード・スモーリー博士、
ハロルド・クロトー博士によって「フラーレン」が発見された。
1991年 日本の飯島澄男博士が「カーボンナノチューブ」を発見した。
●小さくする利点
携帯に便利、データを読み出したり、装置を動かす電力も少なくてすむ。
例:アメリカの連邦議会図書館のデータを角砂糖1個におさめる計画や、iPodなど。
・コンピュータを小型、高速、大容量メモリにする
・副作用が少ない薬の開発
・燃料電池など地球環境を改善する などに役立つ。
<燃料電池>
水素+空気(酸素)から電気エネルギーをつくる技術。
●小さい世界を見る方法
虫めがね、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡
「波長」
光には波の性質がある。ヒトの眼がとらえることができる光の波長は約400~750ナノメートル。
光学顕微鏡でナノの世界は見れない。
「電子顕微鏡」
1931年、エルンスト・ルスカが発明した。
大きく2つに分けられ「電子レンズを用いる顕微鏡」と「細い針でものの上からなぞる方法」がある。
走査型電子顕微鏡で見える最小サイズは、0.5ナノメートル。
透過型電子顕微鏡は、0.1ナノメートル。
走査プローブ顕微鏡は、水平方向に0.1ナノメートル、垂直方向なら0.01ナノメートルまでの凹凸が見分けられる。
走査プローブ顕微鏡の針で原子や、直径約1マイクロメートルの球体も持ち上げられる!
●小さいものをつくる方法
「トップダウン加工法」
大きなものをくだいたり、薄く剥いでつくる。便利だが、つくれる大きさに限界がある。
「リソグラフィ」
コンピュータや電気製品の頭脳に使われる集積回路はこの方法でつくられている。
「ボトムアップ手法」
原子を積み上げる。走査プローブ顕微鏡は、上からなぞる方法。
大量、カンタンにつくれない。細かいところまで自由につくれない問題がある。
「自己形成」
原子や分子は互いに結びつき、落ち着いた状態になろうとする性質がある。
身近な例は、シャボン玉の膜。数百ナノメートルの薄さにのびることがある。
「トップダウン加工法」+「自己形成」のよいところを組み合わせる試みが進められている。
「フラーレン」
「ジオデシックドーム」という正三角形をつないだドームに似ている。
この建物を設計した建築家バックミンスター・フラーの名からとった。
フラーは「宇宙船地球号」という言葉の生みの親。
エイズウイルスの治療に利用できるのではと考えられている。
「カーボンナノチューブ」
鉄の10倍以上の強さがあり、綿より軽い物質。
蜂の巣構造の巻かれ方次第で電気をよく通す。まだ高価なのが欠点。
●ナノテクでつくられる新素材
・「ナノガラス」衝撃を受けても割れにくい。
・頑丈で熱にも強いプラスティック。
・形状記憶合金
※日本刀をつくる伝統的な製造法はナノサイズで原子の並びをかえる技が入っている。
●身近なナノテク
・歯磨き粉の中のアパタイト:歯を強化する
・化粧品:粒子を細かくする
・形状記憶シャツ、水をはじき、汚れや花粉がつきにくい繊維
・軽くて強いテニス(バドミントン)ラケット
・水滴をはじくめがねレンズ:水蒸気にあたっても曇らない(いいねv
****************************実用化が近いナノテクノロジー
●ナノテクで進化する情報通信
コンピュータ、家電製品の進化を鍵をにぎるCPU
コンピュータに使われる半導体、集積回路、記録用HDではすでに利用されている。
情報処理の速さが増し、記憶できる量が増え、より小型化できる。
●医療分野/副作用の少ない薬
「ドラッグ・デリバリー」
薬は胃で溶けて、小腸で吸収され、血液によって全身に運ばれる。
体は薬を外に出そうとするため、病気の場所に届く薬の量が減ることがある。
ドラッグ・デリバリーを使えば、副作用がなく、病気の場所に直接薬を届けることができる。
血液中にある約400ナノメートル未満の物質だけが体内に吸収される。
がんになっている場所の血管の壁にはより大きな隙間がある。
ちょうど隙間を通れるカプセルをナノテクでつくって血管に注射する、
「デンドリマー」「カーボンナノホーン」と呼ばれる分子などをカプセルにする研究が進められている。
●バイオテクノロジー
病気の原因になる病原体も多くは100ナノメートルの大きさ。ナノテクによって原因や治療法が分かる病気も少なくない。
ナノテクを応用し、体の一部になる人口骨、人工皮膚、人工臓器を開発することも期待される。
「バイオチップ」
病院に行かずに体の状態をチェックする(それは有り難い!
ガラスやシリコンの板の上に血液を少し流し込み、計測され、体の状態が手軽に分かる。
「DNAチップ」
DNAのコピーを利用して、特定の遺伝情報を読み出すための分析装置。
1人1人の体質が分かれば、一番合う薬を選べる。
●地球環境
自動車などの輸送機器は、世界のエネルギーの約20%を使っている。
電気モーター+エンジンを組み合わせた「ハイブリッドカー」は自動車のエネルギー効率を上げる。
燃料電池車と、その燃料を供給する水素ステーション
「水素吸収材」
燃料電池では白金(プラチナ)からつくられた触媒が必要で、白金は高価。
水素を効率よくつくり、貯蔵する技術も不可欠。
「LED(発光ダイオード)」
室内照明、信号機のランプの代わりにすれば、寿命が延び、電力消費を大幅に減らせる。
「太陽電池」
表面に受けた太陽光のエネルギーのうち、電気エネルギーにかえることができるのは約20%。
「クリーンエネルギー」を身近にする鍵を握るのはナノテク。
「逆浸透膜フィルター」
網目をナノサイズにして水の分子だけが通れるようにすれば、ダイオキシンや放射性物質などの物質も取り除ける(すげえ!
ナノサイズの網目で汚れ、有害物質を取り除く、最新の浄水器フィルター
「光触媒」
水、土、大気の汚れを取り除く夢のような物質。代表的物質は「二酸化チタン」。
(汚れや水が二酸化炭素になったら、また温暖化にならないかい?
****************************SFのような世界
エレベータに乗って宇宙へ行く夢もカーボンナノチューブの登場で計算上はつくれる。
「量子通信」
通信内容の秘密を完全に守ることができる(ワオ!
実現に少なくとも20~30年かかると言われる。
ナノテクは、これまでの科学技術の姿や進め方を変えるといわれている。
アメリカはナノテクノロジー国家戦略を打ちたて、日本を超える可能性が出てきた。
EUも2002年から5年間で1700億円投資した。
****************************問題点
フロンガス、食品添加物、アスベストなど、人類が生み出した新しい生産物には思わぬ害をもたらすものもある。
ナノテクに用いられる物質は、周りの物質に固定しないと体内にカンタンに入ってしまうため、
技術の安全性の研究と、大勢に説明する必要がある。
また、生物・化学兵器などに使われる危険性もある
アメリカで開発中のナノテクでつくった防護服。弾丸だけでなく、生物・化学兵器も防ぐ軽量の防護服をめざす
***************************************
●ナノテク関連サイト
「ナノテクKIDS」
「産業技術総合研究所 サイエンス・タウン」
「科学技術振興機構 理科ねっとわーく」
●ナノテクの展示がある博物館・科学館
「サイエンス・スクエアつくば」
「日本科学未来館」
「科学技術館」
「TEPIA(機械産業記念館)」
「日本の科学館めぐり」
「もの・ナノテク」
谷田和一郎/文
名前は聞くけど、一体何なのか分からないナノテクが、分かりやすい文章や写真資料などでちょっと見えてくる1冊。
すでにけっこう身近に利用されているんだな。そして、近未来にも深く関係している最先端科学分野なんだ。
それにしてもDNAサイズのものを見たり、動かしたり、形成したりって、信じられないな/驚
しかも、ナノテクの歴史には日本人の博士が何人も関わっていて、日本人すげいや!
【内容抜粋メモ】
●ナノという単位の大きさ
ナノとはラテン語で「こびと」の意。
1mmの1/1000は1マイクロメートル。その1/1000が1ナノメートル。
DNAは幅2~3ナノメートル。
世界でもっとも小さいワイングラス。外径が約2800ナノメートル
●分子、原子
複雑な物質でも約100種類の原子からなりたっている。
ヒトも細かく分解すれば、ほとんどが炭素原子、水素原子、酸素原子。
原始がいくつか集まってできているのが分子。例:水はH2O。
ナノの世界で自由に組み立てることで、物質の性質を変えたり、これまでなかった装置や機械がつくれる。
バイオテクノロジー、IT、環境技術などに画期的な進歩をもたらすと期待される。
鉛筆の芯とダイヤモンドは同じ炭素原子でできている。
並び方、結びつき方が違うだけで、まったく違う物質になる。
●ナノテクの歴史
1958年 日本の江崎玲於奈博士がナノメートルサイズの薄膜を埋め込んだ物質をつくってノーベル物理学賞を受賞。
1959年 アメリカのリチャード・ファインマン博士は、原子を並べたりして新しいものをつくり出せると提唱。
別のテーマの研究で日本の朝永振一郎博士とノーベル物理学賞を受賞した。
1986年 日本の大澤映二博士により提唱され、アメリカのリチャード・スモーリー博士、
ハロルド・クロトー博士によって「フラーレン」が発見された。
1991年 日本の飯島澄男博士が「カーボンナノチューブ」を発見した。
●小さくする利点
携帯に便利、データを読み出したり、装置を動かす電力も少なくてすむ。
例:アメリカの連邦議会図書館のデータを角砂糖1個におさめる計画や、iPodなど。
・コンピュータを小型、高速、大容量メモリにする
・副作用が少ない薬の開発
・燃料電池など地球環境を改善する などに役立つ。
<燃料電池>
水素+空気(酸素)から電気エネルギーをつくる技術。
●小さい世界を見る方法
虫めがね、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡
「波長」
光には波の性質がある。ヒトの眼がとらえることができる光の波長は約400~750ナノメートル。
光学顕微鏡でナノの世界は見れない。
「電子顕微鏡」
1931年、エルンスト・ルスカが発明した。
大きく2つに分けられ「電子レンズを用いる顕微鏡」と「細い針でものの上からなぞる方法」がある。
走査型電子顕微鏡で見える最小サイズは、0.5ナノメートル。
透過型電子顕微鏡は、0.1ナノメートル。
走査プローブ顕微鏡は、水平方向に0.1ナノメートル、垂直方向なら0.01ナノメートルまでの凹凸が見分けられる。
走査プローブ顕微鏡の針で原子や、直径約1マイクロメートルの球体も持ち上げられる!
●小さいものをつくる方法
「トップダウン加工法」
大きなものをくだいたり、薄く剥いでつくる。便利だが、つくれる大きさに限界がある。
「リソグラフィ」
コンピュータや電気製品の頭脳に使われる集積回路はこの方法でつくられている。
「ボトムアップ手法」
原子を積み上げる。走査プローブ顕微鏡は、上からなぞる方法。
大量、カンタンにつくれない。細かいところまで自由につくれない問題がある。
「自己形成」
原子や分子は互いに結びつき、落ち着いた状態になろうとする性質がある。
身近な例は、シャボン玉の膜。数百ナノメートルの薄さにのびることがある。
「トップダウン加工法」+「自己形成」のよいところを組み合わせる試みが進められている。
「フラーレン」
「ジオデシックドーム」という正三角形をつないだドームに似ている。
この建物を設計した建築家バックミンスター・フラーの名からとった。
フラーは「宇宙船地球号」という言葉の生みの親。
エイズウイルスの治療に利用できるのではと考えられている。
「カーボンナノチューブ」
鉄の10倍以上の強さがあり、綿より軽い物質。
蜂の巣構造の巻かれ方次第で電気をよく通す。まだ高価なのが欠点。
●ナノテクでつくられる新素材
・「ナノガラス」衝撃を受けても割れにくい。
・頑丈で熱にも強いプラスティック。
・形状記憶合金
※日本刀をつくる伝統的な製造法はナノサイズで原子の並びをかえる技が入っている。
●身近なナノテク
・歯磨き粉の中のアパタイト:歯を強化する
・化粧品:粒子を細かくする
・形状記憶シャツ、水をはじき、汚れや花粉がつきにくい繊維
・軽くて強いテニス(バドミントン)ラケット
・水滴をはじくめがねレンズ:水蒸気にあたっても曇らない(いいねv
****************************実用化が近いナノテクノロジー
●ナノテクで進化する情報通信
コンピュータ、家電製品の進化を鍵をにぎるCPU
コンピュータに使われる半導体、集積回路、記録用HDではすでに利用されている。
情報処理の速さが増し、記憶できる量が増え、より小型化できる。
●医療分野/副作用の少ない薬
「ドラッグ・デリバリー」
薬は胃で溶けて、小腸で吸収され、血液によって全身に運ばれる。
体は薬を外に出そうとするため、病気の場所に届く薬の量が減ることがある。
ドラッグ・デリバリーを使えば、副作用がなく、病気の場所に直接薬を届けることができる。
血液中にある約400ナノメートル未満の物質だけが体内に吸収される。
がんになっている場所の血管の壁にはより大きな隙間がある。
ちょうど隙間を通れるカプセルをナノテクでつくって血管に注射する、
「デンドリマー」「カーボンナノホーン」と呼ばれる分子などをカプセルにする研究が進められている。
●バイオテクノロジー
病気の原因になる病原体も多くは100ナノメートルの大きさ。ナノテクによって原因や治療法が分かる病気も少なくない。
ナノテクを応用し、体の一部になる人口骨、人工皮膚、人工臓器を開発することも期待される。
「バイオチップ」
病院に行かずに体の状態をチェックする(それは有り難い!
ガラスやシリコンの板の上に血液を少し流し込み、計測され、体の状態が手軽に分かる。
「DNAチップ」
DNAのコピーを利用して、特定の遺伝情報を読み出すための分析装置。
1人1人の体質が分かれば、一番合う薬を選べる。
●地球環境
自動車などの輸送機器は、世界のエネルギーの約20%を使っている。
電気モーター+エンジンを組み合わせた「ハイブリッドカー」は自動車のエネルギー効率を上げる。
燃料電池車と、その燃料を供給する水素ステーション
「水素吸収材」
燃料電池では白金(プラチナ)からつくられた触媒が必要で、白金は高価。
水素を効率よくつくり、貯蔵する技術も不可欠。
「LED(発光ダイオード)」
室内照明、信号機のランプの代わりにすれば、寿命が延び、電力消費を大幅に減らせる。
「太陽電池」
表面に受けた太陽光のエネルギーのうち、電気エネルギーにかえることができるのは約20%。
「クリーンエネルギー」を身近にする鍵を握るのはナノテク。
「逆浸透膜フィルター」
網目をナノサイズにして水の分子だけが通れるようにすれば、ダイオキシンや放射性物質などの物質も取り除ける(すげえ!
ナノサイズの網目で汚れ、有害物質を取り除く、最新の浄水器フィルター
「光触媒」
水、土、大気の汚れを取り除く夢のような物質。代表的物質は「二酸化チタン」。
(汚れや水が二酸化炭素になったら、また温暖化にならないかい?
****************************SFのような世界
エレベータに乗って宇宙へ行く夢もカーボンナノチューブの登場で計算上はつくれる。
「量子通信」
通信内容の秘密を完全に守ることができる(ワオ!
実現に少なくとも20~30年かかると言われる。
ナノテクは、これまでの科学技術の姿や進め方を変えるといわれている。
アメリカはナノテクノロジー国家戦略を打ちたて、日本を超える可能性が出てきた。
EUも2002年から5年間で1700億円投資した。
****************************問題点
フロンガス、食品添加物、アスベストなど、人類が生み出した新しい生産物には思わぬ害をもたらすものもある。
ナノテクに用いられる物質は、周りの物質に固定しないと体内にカンタンに入ってしまうため、
技術の安全性の研究と、大勢に説明する必要がある。
また、生物・化学兵器などに使われる危険性もある
アメリカで開発中のナノテクでつくった防護服。弾丸だけでなく、生物・化学兵器も防ぐ軽量の防護服をめざす
***************************************
●ナノテク関連サイト
「ナノテクKIDS」
「産業技術総合研究所 サイエンス・タウン」
「科学技術振興機構 理科ねっとわーく」
●ナノテクの展示がある博物館・科学館
「サイエンス・スクエアつくば」
「日本科学未来館」
「科学技術館」
「TEPIA(機械産業記念館)」
「日本の科学館めぐり」
「もの・ナノテク」