■『水と人びとのくらし 世界と日本の水問題』(文研出版)
橋本淳司/著
水の惑星と呼ばれる地球。その中でも日本は水に恵まれている国だけど、
世界には充分な水がない国がたくさんある。
しかも、それは日本で暮らす私たちとも深く関係していることが分かった1冊。
【内容抜粋メモ】
**********************************地球の水
地球のように大量の水があり、気体、液体、固体の3つのかたちで存在している惑星はほかに見つかっていない。
大気を宇宙に逃がさないようにするための質量と重力を地球はもっている。
地球上の水の量はつねに一定。では、なぜ水不足がおこるのか?
約35億年前の原始の海に近いといわれるオーストラリア西部の海。地球最古の生き物ストロマトライトが群生している。
●水の循環
雨が降って→地面にしみこみ→地下水が湧き出して川となり→海へ出る→蒸発する
こうして繰り返される一連の動きを「水循環」という。
水循環は海水→淡水にかえている。
地球には年間平均49.5立方kmの雨や雪が降り、約85%は海で蒸発する。
気候変動などで水の蒸発量が変わると、降水量も変わり、暮らしにも影響する。
「帯水層」
森に降った雨の一部が地下水となり、たまっている地層のこと。
ヒトが使う水の約1/4が帯水層から汲み上げている。
●水の97.5%は海水
地球上にある水の量は、約13億5000万立方km。
そのうち淡水は2.5%。ヒトが使える淡水は、帯水層などの地下水、湖、川の水のみ。
実際に使えるのは、地球全体の水の0.01%。
人口増加、地球温暖化、汚染などの影響で水不足は深刻化している。
ヒマラヤ山脈の氷河の雪解け水は、世界人口の2/3を支えているが、この氷河が近年、激減している。
●水のかたより
日本は「アジアモンスーン地帯」に位置し、雨の多い国の1つだが、
人口密度が大きく、1人当たりの降水量は、世界平均の1/4程度。
「国際河川」
中央アジアでは、淡水の多くをシルダリア川、アムダリア川に頼っている。
上流にあるタジキスタン、キルギスは水を自由に使い、水力発電のために夏場は水を蓄え、冬はダムから放出するため、
下流のカザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンは、夏場に水が不足し、冬場に洪水になる。
**********************************ヒトに必要な水
●1人が1日に使う水の量
水道の蛇口からは1分間に12Lの水が出る。それで計算すると、日本人1人が1日に使う水の量は約320L。
洗顔・歯磨き 約6L
炊事1回 約60L
洗濯1回 約70L
トイレ1回 約12L
シャワー5分 約40L(シャワーから出る水量は1分間に約8L)
●人間らしい生活に必要な水の量は1日50L
ユニセフによれば、衛生状態のよい生活をするためには、最低限1日20Lが必要といわれる。
現在、世界では水が原因の病気で8秒に1人の子どもが亡くなっている。
●体内の水
私たちの血液中の成分の比率は、ほぼ海水の成分の比率と同じ。
赤ちゃんは、体重の約90%が水分(ほぼ水じゃんw)、子どもは約70%、大人は約60%、老人は約50%。
ヒトの体は、筋肉に水分をたくさん含んでいる。
ヒトの体からは1日約2.5Lの水分が出ていく。
・おしっこ、うんち 1.5L
・汗 0.5L
・吐く息 0.5L
出た水分とほぼ同量の水分を補給している。
・飲み物 2L
・食べ物に含まれる水分、代謝水 0.5L
「代謝水」
体内で食べ物を分解する時に起きる化学反応でつくられる水。
**********************************産業に必要な水
●農業に必要な水
利用可能な淡水の約7割が農業に使われている
・食パン1斤 約630L
・ごはん1杯 約278L
・タマネギ1個 約38L
・トウモロコシ1本 約87L
世界最大級の地下水の水脈「オガララ帯水層」は、大量に地下水を汲み上げすぎて、枯れてしまうのではといわれている。
中国の黄河下流域では、サツマイモですら育てるのが厳しい状況。
●食肉に必要な水
家畜を育てるためには、飲用水のほかに、飼料となる穀物を育てる水が必要。
・鶏肉1kgあたり 4500L
・ブタ肉1kgあたり 5900L
・牛肉1kgあたり 20600L
オーストラリアの牧草地帯は干ばつとなり、牧畜農家はオリーブ栽培へときりかえている
●工業に必要な水
工業用水として1日に約1億5000万トンの淡水+4000万トンの海水が使用されている。
化学工業、鉄鋼業、パルプ・紙・紙加工品製造業がトップ3。全体の約7割。
・朝刊1部 約44L
・1円玉1枚 約0.19L
・自動車1台 約120L
日本国内では再利用率が70%に高まっている。
理由は、
・産業のしくみの変化
・生産工場が外国に移転した など
**********************************世界の水事情
世界の年間水使用量は、アジアが約6割を占めている。
●中近東、西アフリカ
1日に1人あたりの使用量が10L以下の国は、ガンビア、ハイチ、ジブチ、ソマリアなど。
女性や子どもが遠い水場まで汲みに行くため、勉強できないでいる。
安全な水が利用できないヒトが約11億人いると推定される。
「灌漑」
農業に使う水を水路などで供給し、耕地を潤すこと。
途上国では、50%以上が用水路を流れるうちに漏れたり、蒸発して、農作物に届いていない。
「モンスーン地帯」
毎年同じ時期に南西の風が大量の雨をもたらすアジアの地域。日本もふくむ。
地球温暖化によって、水循環に変化がおこり、大規模な洪水、稲作被害、食料不足、貧困などが懸念されている。
●大都市の拡大
森には水をたくわえる力がある。森が減ると、雨水は大地を流れ→川に流れ込む。
大雨のたびに洪水になったり、雨が降らないと水不足になる。
都市が拡大すると、
・産業や生活のためにより多くの水が必要
・開発で森が失われる
・アスファルト道路などで地下水が減少する
・一人暮らしが増えると、より多くの水が必要
・学校、ホテルなど水を大量に使う施設が増える
●世界の年間水使用量
1位 インド 645.8立方km
2位 中国 630.3立方km
3位 アメリカ 479.3立方km
6位 日本 88.4立方km
●外国から水を買う
シンガポールはマレーシアから水を買っている
トルコはセイハン川とジェイハン川の水をパイプラインでアラブ諸国に提供しようとした。
のどから手が出るほど欲しくても、政治的影響力を考え、アラブ諸国は提案を断った。
**********************************世界の水を使う日本
●ペットボトル水を買う
酸素や二酸化炭素が適量に溶け込むとおいしい水になるといわれる。
日本では2008年に約250万KLのペットボトル水が流通した。
そのうち約200万KLが国産、約50万KLが輸入。
ペットボトル水をつくる企業は、世界各地で良質の地下水が湧き出る水源の土地を買い占め、
周辺住民との間でトラブルも起きている。
●食料自給率と水
日本は年間640億トンの食料を外国から輸入している。食料自給率は約40%。
これは大量の水を輸入しているのと同じ。
おもな輸入相手国のアメリカ、オーストラリア、中国は水不足に苦しんでいる。
「バーチャルウォーター」
なにかをつくる時に必要な水のこと。仮想水。
日本が輸入しているバーチャルウォーターの量は、合計1000億トン。
日本は年間約2000万トンの食料を食べ残して捨てているが、そこには輸入した食料もたくさん含まれる。
現在、輸入している食料を国内で生産しようとしても、水が足りない。
もし食料輸入がストップして、国内の食料だけの食事にすると、たんぱく質やビタミンなど多くの栄養素が不足する。
日本の食料事情は世界の水不足に大きく影響されている。
橋本淳司/著
水の惑星と呼ばれる地球。その中でも日本は水に恵まれている国だけど、
世界には充分な水がない国がたくさんある。
しかも、それは日本で暮らす私たちとも深く関係していることが分かった1冊。
【内容抜粋メモ】
**********************************地球の水
地球のように大量の水があり、気体、液体、固体の3つのかたちで存在している惑星はほかに見つかっていない。
大気を宇宙に逃がさないようにするための質量と重力を地球はもっている。
地球上の水の量はつねに一定。では、なぜ水不足がおこるのか?
約35億年前の原始の海に近いといわれるオーストラリア西部の海。地球最古の生き物ストロマトライトが群生している。
●水の循環
雨が降って→地面にしみこみ→地下水が湧き出して川となり→海へ出る→蒸発する
こうして繰り返される一連の動きを「水循環」という。
水循環は海水→淡水にかえている。
地球には年間平均49.5立方kmの雨や雪が降り、約85%は海で蒸発する。
気候変動などで水の蒸発量が変わると、降水量も変わり、暮らしにも影響する。
「帯水層」
森に降った雨の一部が地下水となり、たまっている地層のこと。
ヒトが使う水の約1/4が帯水層から汲み上げている。
●水の97.5%は海水
地球上にある水の量は、約13億5000万立方km。
そのうち淡水は2.5%。ヒトが使える淡水は、帯水層などの地下水、湖、川の水のみ。
実際に使えるのは、地球全体の水の0.01%。
人口増加、地球温暖化、汚染などの影響で水不足は深刻化している。
ヒマラヤ山脈の氷河の雪解け水は、世界人口の2/3を支えているが、この氷河が近年、激減している。
●水のかたより
日本は「アジアモンスーン地帯」に位置し、雨の多い国の1つだが、
人口密度が大きく、1人当たりの降水量は、世界平均の1/4程度。
「国際河川」
中央アジアでは、淡水の多くをシルダリア川、アムダリア川に頼っている。
上流にあるタジキスタン、キルギスは水を自由に使い、水力発電のために夏場は水を蓄え、冬はダムから放出するため、
下流のカザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンは、夏場に水が不足し、冬場に洪水になる。
**********************************ヒトに必要な水
●1人が1日に使う水の量
水道の蛇口からは1分間に12Lの水が出る。それで計算すると、日本人1人が1日に使う水の量は約320L。
洗顔・歯磨き 約6L
炊事1回 約60L
洗濯1回 約70L
トイレ1回 約12L
シャワー5分 約40L(シャワーから出る水量は1分間に約8L)
●人間らしい生活に必要な水の量は1日50L
ユニセフによれば、衛生状態のよい生活をするためには、最低限1日20Lが必要といわれる。
現在、世界では水が原因の病気で8秒に1人の子どもが亡くなっている。
●体内の水
私たちの血液中の成分の比率は、ほぼ海水の成分の比率と同じ。
赤ちゃんは、体重の約90%が水分(ほぼ水じゃんw)、子どもは約70%、大人は約60%、老人は約50%。
ヒトの体は、筋肉に水分をたくさん含んでいる。
ヒトの体からは1日約2.5Lの水分が出ていく。
・おしっこ、うんち 1.5L
・汗 0.5L
・吐く息 0.5L
出た水分とほぼ同量の水分を補給している。
・飲み物 2L
・食べ物に含まれる水分、代謝水 0.5L
「代謝水」
体内で食べ物を分解する時に起きる化学反応でつくられる水。
**********************************産業に必要な水
●農業に必要な水
利用可能な淡水の約7割が農業に使われている
・食パン1斤 約630L
・ごはん1杯 約278L
・タマネギ1個 約38L
・トウモロコシ1本 約87L
世界最大級の地下水の水脈「オガララ帯水層」は、大量に地下水を汲み上げすぎて、枯れてしまうのではといわれている。
中国の黄河下流域では、サツマイモですら育てるのが厳しい状況。
●食肉に必要な水
家畜を育てるためには、飲用水のほかに、飼料となる穀物を育てる水が必要。
・鶏肉1kgあたり 4500L
・ブタ肉1kgあたり 5900L
・牛肉1kgあたり 20600L
オーストラリアの牧草地帯は干ばつとなり、牧畜農家はオリーブ栽培へときりかえている
●工業に必要な水
工業用水として1日に約1億5000万トンの淡水+4000万トンの海水が使用されている。
化学工業、鉄鋼業、パルプ・紙・紙加工品製造業がトップ3。全体の約7割。
・朝刊1部 約44L
・1円玉1枚 約0.19L
・自動車1台 約120L
日本国内では再利用率が70%に高まっている。
理由は、
・産業のしくみの変化
・生産工場が外国に移転した など
**********************************世界の水事情
世界の年間水使用量は、アジアが約6割を占めている。
●中近東、西アフリカ
1日に1人あたりの使用量が10L以下の国は、ガンビア、ハイチ、ジブチ、ソマリアなど。
女性や子どもが遠い水場まで汲みに行くため、勉強できないでいる。
安全な水が利用できないヒトが約11億人いると推定される。
「灌漑」
農業に使う水を水路などで供給し、耕地を潤すこと。
途上国では、50%以上が用水路を流れるうちに漏れたり、蒸発して、農作物に届いていない。
「モンスーン地帯」
毎年同じ時期に南西の風が大量の雨をもたらすアジアの地域。日本もふくむ。
地球温暖化によって、水循環に変化がおこり、大規模な洪水、稲作被害、食料不足、貧困などが懸念されている。
●大都市の拡大
森には水をたくわえる力がある。森が減ると、雨水は大地を流れ→川に流れ込む。
大雨のたびに洪水になったり、雨が降らないと水不足になる。
都市が拡大すると、
・産業や生活のためにより多くの水が必要
・開発で森が失われる
・アスファルト道路などで地下水が減少する
・一人暮らしが増えると、より多くの水が必要
・学校、ホテルなど水を大量に使う施設が増える
●世界の年間水使用量
1位 インド 645.8立方km
2位 中国 630.3立方km
3位 アメリカ 479.3立方km
6位 日本 88.4立方km
●外国から水を買う
シンガポールはマレーシアから水を買っている
トルコはセイハン川とジェイハン川の水をパイプラインでアラブ諸国に提供しようとした。
のどから手が出るほど欲しくても、政治的影響力を考え、アラブ諸国は提案を断った。
**********************************世界の水を使う日本
●ペットボトル水を買う
酸素や二酸化炭素が適量に溶け込むとおいしい水になるといわれる。
日本では2008年に約250万KLのペットボトル水が流通した。
そのうち約200万KLが国産、約50万KLが輸入。
ペットボトル水をつくる企業は、世界各地で良質の地下水が湧き出る水源の土地を買い占め、
周辺住民との間でトラブルも起きている。
●食料自給率と水
日本は年間640億トンの食料を外国から輸入している。食料自給率は約40%。
これは大量の水を輸入しているのと同じ。
おもな輸入相手国のアメリカ、オーストラリア、中国は水不足に苦しんでいる。
「バーチャルウォーター」
なにかをつくる時に必要な水のこと。仮想水。
日本が輸入しているバーチャルウォーターの量は、合計1000億トン。
日本は年間約2000万トンの食料を食べ残して捨てているが、そこには輸入した食料もたくさん含まれる。
現在、輸入している食料を国内で生産しようとしても、水が足りない。
もし食料輸入がストップして、国内の食料だけの食事にすると、たんぱく質やビタミンなど多くの栄養素が不足する。
日本の食料事情は世界の水不足に大きく影響されている。