メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1998.11~ part1)

2013-10-29 14:21:38 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
今回はピンク色のノートからご紹介。後半、黒澤明監督作品に目覚めたらしい。

  

photo1:1ページ目はバスター『カメラマン』から。
photo2:家族でサイパンに行った
photo3:TV雑誌などの記事もペタペタ。

若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『ドクター』(1991)
監督:ランダ・ヘインズ 出演:ウィリアム・ハート、エリザベス・パーキンス ほか
自伝だけあって説得力あり。「医者や病院は患者の気持ちを全然分かってない」など、身近で皆が思っていることを代弁してて共感しやすい。
医者全員に観てほしい。『CH』等でも観たけど、手術中に音楽かけるリラックス効果は認めるけど、
辛気臭くなれとは言わずとも、とてもアメリカ流でビックリする。

「小噺がある。農夫は毒獣を追い払ったけど、孤独になった。呼び戻そうと畑にずっと腕を伸ばして立っていたが誰も来なかった。
 動物は彼が新しいかかしに見えたのだ。腕を下ろせば皆集まってくるのよ」

頭を剃って挑んだパーキンスのすがすがしい演技が印象的。
♪Upon the roof を歌い、ダンスするハートも見物。シリアスな役が多いけど、こんなユーモラスな一面もあるんだ/驚


『ミレニアム』(1996)
監督:デヴィッド・ナッター 出演:ランス・ヘンリクセン ほか

●Pilot 新たなる一千年へ
『ツインピークス』からコメディに手をのばして大失敗した誰かと違って、
コンセプトは同じで『X-FILES』共々全米で高視聴率をキープし続けるC.カーターはすごい。
第1話はいきなり「ノストラダムスの終末説」を完結させようとする男。
救われても決して元には戻れない、あっさり殺されるよりはるかに残酷。

●Gehenna 地獄の灰
なんか『X-FILES』の焼き直しみたい。フランクがモルダーより有利なのは、手がかりの現場が見えること。
で、相手がアメリカ政府じゃないから1話完結で、犯人はちゃんと捕まる。
今回はカルト教団。タイムリーにも日本のサリン事件に触れている。
このハルマゲドンを核にした無差別殺人事件はアメリカンにも相当ショックを与えたらしい。
「本当に悪者は捕まったんだろうか?」
1度観てラストで寝ちゃって、朝また見たんだけど、2回観ると理解度が増して製作側の演出や意図がより分かってくるね。


『ブラック・ジャック』(1996)
原作:手塚治虫 監督・絵コンテ:出崎統
この絵やストップモーションかかる演出って『エースをねらえ~Final Stage』と似てる!
新作らしくて、なぜ彼の頬に傷があるのか、無免許で医師をしているかは原作を読まないと不明。
こちらもデジタル技術を駆使して、透明感ある立体的映像、最新医療を反映させたリアルな絵で
オリンピックというタイムリーな話題で現代の病理を解く。
ピノコがつくるパズルがジャングル大帝や、アトムの絵なのがご愛嬌。とっても人間臭いドラマ。
ラストに入ってた「シネマワールド」のCMが悲しい。先日3年目で閉館てニュースを聞いたばかりだから。


『クレオパトラ』(1963)

監督:ジョセフ・L・マンキーウィクス 出演:エリザベス・テイラー、リチャード・バートン ほか

<前編>
前に1度観たと思うが最後までハッキリとじゃない。リズ31歳、バートン37歳、2度結婚したこの2大スターを張っての壮大な史劇。
前半クライマックスのクレオパトラのパレードは少々現代的。ディズニーのエレクトリカルパレードかブロードウェー風で豪華絢爛。
そういえばヴィヴィアン・リーのクレオパトラもあったよな。2人とも絶世の美女。
秋の夜長に、この野心と知性、美、富、この世のすべてを授かった女性のロマンあふれるドラマを堪能しよう。

「子を産まぬ女は水のない川のごとし。命はぐくむナイルよ。私はナイルです」

<後編>
こんなゴージャスな大作はXmasか年末にふさわしい。ところで、これは実話だろうか?
かの有名な歴史的大人物ジュリアス・シーザーとクレオパトラが奇しくも同時代に生き、隣国同士で、しかも、愛し合っていたというのは?!
本当なら勇者の愛、すごいドラマティックな時代だ。

「あなたしか愛せない。私の主人(マスター)は愛だ」「愛を主人にするものじゃない。自分を見失います」
互いの愛に確証があれば生死も問題にならない、こんなに素晴らしい絆が他にあるだろうか?
余談だが今作はリズのセミヌードシーンやら、かなり豊満な美しさを惜しげもなく見せてるのもポイント。
一世一代の大役に文字通り大女優も体を張って望んでいる。
果して実生活でも、これほど王者の愛を勝ち得たのだろうか?!


『セカンド・ベスト』(1994)
監督:クリス・メンゲス 出演:ウィリアム・ハート、ジョン・ハート ほか
幼児期に受けた何気ないショックが原因で、成人してから原因不明の症状が発生するという。
子どもの心の成長が、親に依存し、逃げ場がないと思うと心苦しくなる。
片田舎の自然豊かな美しく静かな村を舞台に「養子」という転機の微妙な心のやりとりを丁寧に描く。
子ども相手に心理学に基づいたやり方は興味深い。ネイサンの演技は特筆もの。

「1から一緒に始めよう。代理(セカンド・ベスト)としてでなく、父と子としてだ。君に選んでほしい」

10代はもっとも難しい年頃。歳をとるほどもらい手がなくなるというのも事実だろう。
完璧な養父に引き取られたJは幸せだ。自殺した娘の父も辛いな。
朴訥な田舎の平凡な郵便局員の雰囲気を出すためにハートはクリクリの巻き毛にしたのか?
ジョンが少し太り気味なのも役作り? 2大俳優のからみはほんの数分。
子どもも1つの人格として扱う欧米らしいセリフが効いてる。


『Shall we ダンス?』(1995)

監督:周防正行 出演:役所広司、草刈民代、竹中直人、渡辺えり子 ほか
話題作で噂も上々、笑いあり、涙あり、日本臭さがなんかこっぱずかしくて苦笑いしてしまう反面、日常風景を見直せて感動もある。
タイトルと同名のテーマソング(『王様と私』の抜粋らしい)と、♪Save the last dance for me にのって、
格好悪くてもマイブームを楽しむが勝ちかもと羨ましくもなる。
竹中直人の思いきりズレたズラとオーバーなダンスがスゴイ。皆それなり訓練積んだんだろうね。
確かに「日本人に社交ダンスは似合わない」し「ダンスに通う中年男には下心がある」気もするけど、同じアホなら踊らにゃ損?!
なにか1つでも生きてる楽しみになり得るなら、やらなきゃ損だ。


『マリー・アントワネット 愛と欲望の果てに~ドレスの下のフランス革命』(1989)

監督:キャロライン・ワッパー 出演:エマニュエル・ベアール ほか
これはフランス生誕200年かなんかの記念シリーズで、他にもAVギリギリのシリーズがたくさん目白押し。
歴史上人物の色事ばかりを淡々と描いたB級の出来。
E.ベアールは天使のごとく可愛くて華になるけど、激動の時代を生きた1人の女をドラマティックに充分描けていないのが残念。
実は眠ってしまったから後半の記憶が途切れがち。豪華な衣装はコスチュームプレイの目玉。
きつそうなコルセットに、高々と盛り上げた白髪のかつら、羽飾り、ニセボクロ、
風呂に入らず香水と塩(?)で誤魔化したという当時の風習の話も面白い。


『アバランチ 雪崩』(1994)
監督:ポール・シャピロ 出演:マイケル・グロス ほか
雪崩の雪に押し潰されそうな小屋から抜け出そうとする家族の話と、犯罪者にまで脅かされるスパイス付き。
『激流』の雪山ver. ドラマ映画っぽい。ダンカンって未来車が出てくる映画シリーズの俳優に似てる。
かなり濃いアメリカンキャラ。ちょっと大味だけどサバイバルのヒントがいくつか学べる。
実際、撮影で雪崩を起こしたのかな?


『スターゲイト』(1994)
監督:ローランド・エメリッヒ 出演:ジェイムズ・スペイダー、カート・ラッセル ほか
ミステリアスなエジプト、ピラミッド、古代文明を美しく映像で復活させ、
プラス斬新なSFのアイデアをとりまぜ、J.スペイダーと、『クライング・ゲーム』でセンセーショナルに
ブレイクした男優を起用するという三拍子そろっているのに、なぜかパッとしない作品。
アメリカ的大味なストーリー展開が当然すぎるせいか?

ピラミッド型宇宙船や、犬型鎧が自動で顔を覆ったり、開いたりするCGはスゴイんだけどな。
とくに盛り上がりもないまま中途半端なのが惜しい。
ラーの眼が妖しく白く浮き出て見える効果が印象的。
地球人が移住できるようなプロミスランドってワケにはいかない。砂漠じゃね。


『マーシャン・クロニクル 火星年代記』(1979)
原作:レイ・ブラッドベリ 監督:マイケル・アンダーソン 出演:ロック・ハドソン ほか

●第1話 遭遇
思いきり模型を動かした特撮が嬉しい。正統派ハリウッドスターのR.ハドソンをSFに迎えて、
舞台は世紀末から21C。火星移住に火星人(眼が金色の美しいユル・ブリナー系)。
ひと昔前のノリが今じゃ現実化しているから面白い。

「いや待て。もしここが火星なら・・・」
「そうだテレパシーで記憶をよみがえらせ、ケーキに毒をもった!
 私たちも他の惑星人を殺すほど堕落したのだ、許せ」
こんな等身大の宇宙人にちょっと親近感。

予告で2、3話では地球に核戦争が起こり、火星に移住して少数の火星人らと争うことになる
ていう壮大なドラマが展開するらしい。ちょっと期待してしまう。
でもなぜ彼らも英語なのか? テレパシーか? 深く詮索はすまい(ナレーションのノリが伝染ってしまった
武器や、姿を自在に変えられる特技が見物。
住居はエジプト風。SFに砂漠舞台が多いのは低予算のためか?

コメント

notes and movies(1998.11~ part2)

2013-10-29 14:21:37 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『バックトラック』(1989)

監督・出演:デニス・ホッパー 出演:ジョディ・フォスター、チャーリー・シーン、ボブ・ディラン ほか
これが『ハートに火をつけて』の本家。ホッパー自身による編集のもの。
どうしてこのまま通らなかったのかフシギなくらい完璧なストーリー、演出、脚本。
今作は完璧ホッパーのジョディへの熱いラヴコールって感じ。2人のホットな共演が盛り上げてる。
『レオン』にせよ、ヒットマンは決して正義のヒーローじゃないのに映画にするとカッコイイ。
マイロみたいに魅力的で頼りになって、繊細なパパさんなら、アンがうらやましい。

「俺と生きるか、死ぬか、選択はそっちにある」「生きたいわ」

ジョディのヌードシーン、黒い下着をつけさせるシーンが刺激的。
中年の口下手な殺し屋が初めて知った愛の悦びと苦悩をホッパーが見事に演じている。
ディランがチェーンソーで木を削るアーティストになりきってるほんの1~2分のシーンは貴重!
ホッパーがホーンを吹くシーンは本物? なかなかサマになってる。
歳を重ねるごとに渋くて味のある、やわらか頭で反体制的な部分も残したイイ俳優。


『スペース・トラッカー』(1996)
監督:スチュアート・ゴードン 出演:デニス・ホッパー、チャールズ・ダンス ほか
D.ホッパーのSFもイケる。60歳超えるオヤジとは思えないフェロモン出してる風貌に軽い身動き、オフ・ビートなノリ。
『フィフス・エレメント』に匹敵する未来の宇宙トラック、ファッション、衣食住の工夫あれこれに、
エイリアンフォルムな500%戦闘マシーン、ちょっとカンフーも入ってる。
久々C.ダンスが手作り機械人間で負けじとブッ飛んでる
Aのヘアスタイルから、緑シルバーのブラ、Bのビニル製のファッションにも注目。チューブ型朝食もおもしろい。


『シャロウ・グレイヴ』(1994)
監督:ダニー・ボイル 出演:ケリー・フォックス、クリストファ・エクレストン ほか
けっこうエグい映画だったな。前に知人から借りた本と内容、設定が似てるから心理劇が中心だと期待したけど、
やっぱ素人が大金を前にしてやれることはこの程度だ。
この3人の友情は最初から下衆でインチキ臭かったから少しは救われた。
イアン・マクレガーは今をときめくイギリスの若手スター。
どっかで観たと思ったけど長髪でアイドルっぽくて変わるもんだね!

こんなことなら平凡な生活でも大手振って歩けてた日々のなんと幸せだったことか!
世の中の強盗予備軍に見せてあげたいこの結末。いやいや、金のトラブルで友情も愛情も何もかも失う危険性は
誰にでも、いつ起こってもフシギじゃないこと。せいぜい気をつけなくちゃ。


『男はつらいよ』(1994)
監督:山田洋次 出演:渥美清、後藤久美子 ほか
先日の飛行機内でなぜか放映していた。それぞれのキャラ、おなじみのルーツが分かる貴重な1本で、ついひきこまれて観てしまった。
昨日は名物タコ社長こと太宰久雄さんが他界。若い頃の出演陣を見ていると、
自分の親の青春時代、経済成長真っ只中の時代が見えてきて面白い。
今、口上言いながらバナナの叩き売りってゆうのもなくなってきたね。
どこまでも清純派な倍賞千恵子に、若かった前田吟が懐かしい。


『血を吸うカメラ』(1960)
監督:マイケル・パウエル 出演:カール・ボエム ほか

「窃視症だ。患者には想像力がある。病的な衝動で注視することだ」

『CUBE』と一緒に放映予告していた今作。単なるB級じゃなさそう。
怖いだろ~~~っていう音楽や撮り方が'60代だけど、猟奇殺人が性的衝動からくる、
幼児体験に基づくという心理学的見地で撮った『羊たちの沈黙』ほかの先駆けかも。
シリアルキラーは普通の目立たない若い男に多いという。
主人公マークのやや女性的な美しさが演技とともに魅きつける。

シリアルキラーが悪党でも片付けてくれればいいいのに美女ばかり狙い、
それが映画にすると絵になるという図式がハッキリした。
まだマークは自己反省的で自分で自分を研究台にして自殺してくれたから良心的。
実際はあり地獄みたく幼児から大人まで無差別に殺して平気で世の中に隠れているんだからそれこそ恐怖だ。


『X-FILES MAX』
出演:デイヴィッド・ドゥカヴニー、ジリアン・アンダーソン ほか
淀川さんの解説がないのが寂しい。これは劇場版か? TVの長編か?
以前のキャラMAXの後日談で、特異のUFO+政府隠蔽ネタ。
今作はとても機内映画としては公開できない。先日サイパンでのエアポケット恐怖を知っているゆえ、
リアルな飛行機墜落シーンには身につまされる。
湖底にチラッと見えるエイリアン死体は愛嬌。

これだけいろいろ実体験していながら何も証明できないのは辛いだろう。
UFO墜落地の湖にもぐるっていうシーンもあり。
モルダーからスカリーへの誕プレはアポロ11のキーホルダー。
「これをくれた意味が分かったわ」とたくさん教育番組っぽいまとめのセリフの後、
モルダーがあっさり「カッコいいから送ったんだ」ってジョークは数少ないヒットの1つ。


『フランキー・ザ・フライ』(1996)
監督:ピーター・マークル 出演:デニス・ホッパー、ダリル・ハンナ ほか
観てるようで観てなかったD.ホッパーシリーズ。C.ウォーケン、A.パチーノらと同様、
彼もマフィアボス役で通せるのに、ボスにこづかれる下っ端もこなせちゃうのがホッパーのお得さ。
『スプラッシュ』等で清純派だったハンナがかなり汚れ役。
ホッパー自身かなり麻薬とアルコールでヤバかった時期もあったというだけに
「腕に打ってたら死に向かうだけだ」ってセリフは真に迫っている。音楽もなかなかイイ。


『パリス・トラウト』(1991)

監督:スティーブン・ギレンホール 出演:デニス・ホッパー、バーバラ・ハーシー、エド・ハリス ほか
「埋葬は忘却よりもた易い」こんなに重いドラマだとは思わなかった。3人の熟練俳優による極上のドラマ。
パリスがどうしてここまで狂気に走ったのか、母との関係に原因がありそうだが、容易に幼児体験説に走らず、
分からないままなのがかえって惹きつけ、言いようのない恐怖感を与える。
ここではホッパーはM.シーンばりのシリアス演技で圧倒的。こんな表情も持ってるんだ。

「3人はいつまでも近くにいる。暗い夢の中にも」

セリフが所々詩的で難解。一件落着式じゃないのもアメリカ映画らしくない。
パリスが黒人でもヒトを殺すのを罪と思っちゃいない感覚に驚かされる。
それだけ根強い差別を暴こうという狙いか? 思わぬ掘り出し物の逸品。


『東京画』(1985)
監督:ヴィム・ヴェンダース 出演:笠智衆、厚田雄春 ほか
昭和初期の東京を舞台にサイレントからトーキーまで一貫して家族の肖像を撮り続け、昭和63年に亡くなった小津安二郎監督に惚れこみ、
その後の東京に興味をもって撮ったというロードムーヴィの巨匠ヴェンダースの旅の記録。
過去のものを客観的に見るのはとても不思議な気分。

「巡礼ではなく興味があった」
「戦後に生まれたこのゲーム(パチンコ)で、人々は忘れたいことを忘れ、集団の中でより孤独となる」
笠智衆「30半ばで60代まで演じたのもすべて監督のいいなりだった」
助手「大きなものを失った。他のヒトと仕事をしてみたがうまくいかなかった。神さまみたいに尊敬していた」
「映画は現実から少しずつズレて、私たちはそれに慣れてしまったから、
 突然画面の中の子どもの仕草等の中に現実の姿を見つけると困惑する」

田舎や都内でも郊外ならまだ日本家屋に昔ながらののどかな家族の一面を見ることも可能だろうが、
街の中で昭和20年代そのままの姿を探すのは当然ムリ。
ヴェンダースは小津作品の中に静かでリアルな感動があることに敬意を表しても、
今の変わってしまった東京に対して失望や嫌悪を示しているわけじゃない。
完璧主義の小津のエピソードを聞き、今の東京で小津の眼から見た東京を想像し、
50ミリカメラでのぞいて追体験し、そこから映画のエッセンスを学びとろうとしたのかもしれない。
彼が「後にも先にも小津を超えるものはない」とまでいわせた小津作品。機会があったら観てみたい。


■ロジャー・コーマンSFサスペンス傑作集『暗闇がやってくる』(1988)
監督:ポール・メイヤスバーグ 出演:デビッド・バーニー ほか
ちょっとアルマゲドンが入ったSF。コスチュームプレイと現代も混ざった舞台劇っぽい雰囲気。
「不安から発明がはじまり、人々は進歩していったのだ」
恐れて狂信者に走らず、世紀末には団結して立ち向かおうってテーマかしら?
あまりに中途半端で絶望的に終わってしまって、世紀末に対する備えで学べることが少ないのにちょっとガッカリ。

コメント

notes and movies(1998.11~ part3)

2013-10-29 14:21:36 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『beauty and harmony』@オーチャードホール

vocal:吉田美和
♪DARLIN'、バイバイ、冷えたくちびる、泣きたい、パレードは行ってしまった、奪取、つめたくしないで、
A HAPPY GIRLIE LIFE、生涯の恋人、beauty and harmony

やっぱ彼女にゃかなわない! NYでレコーディングしてコンサートは日本か?
海外にしちゃ前の席がチラッと映った時、日本人ばっかり。
私たちが知らないだけで'60年代からの大物アーティストが集まっているらしい。

ジャズあり、ポップスあり、ブルースあり、何でもござれのめーいっぱい詰まった超豪華なコンサート。
これをライヴで聴けた人はなんて特別な体験をしたことか!
国内じゃこれほどのパワフルでハイクオリティなステージは見れないもんね。やっぱTIME誌飾るだけある。
今までたくさんのアルバムを出して、記録作って、ツアー回ってきた現在の美和さんだから完成できたステージ。
海外でも充分通じるよね、これなら。メンバーも手放しの褒めよう。
海外で活躍する日本人の話を聞くのが好きなんだな、私たちは。

彼女は客を魅了すると同時に、過剰なほどメンバーも楽しませる。
ハイテンションな明るさでレコーディング中も、ライヴ中も200%元気印。メンバーの力をベスト以上に引き出す。
ギターソロには涙。メンバーに感謝の歌まで歌って、ラストの美しいアカペラでも涙。中村正人氏も同行。
「クリエイトしなくなったらメンバーじゃない」って言ったのってドリカムだったっけ?
かなりプロ志向も強い。ロバータ・フラックやエラ・フィッツジェラルドと比較されるくらいだから、相当なもの。

ライヴ前には「1人でも多く幸せにできますように」てお祈りする。
ビッグスターでもステージと観客全体を統合させられるヒトは少ないもんね。
まさにピーク絶好調の美和さんがめいっぱい詰まった究極の1本。


『七人の侍』(1954)

監督:黒澤明 出演:三船敏郎、志村喬、加東大介、木村功、千秋実、宮口精二、稲葉義男 ほか

<前編>
やっぱ“世界のクロサワ&ミフネ”だわ。この活劇の面白さ+百姓と武士のドラマは世界のヒトにも通じると思う。
カラーだったら? 美しい青年武士が花畑に誘われるシーンは美しいけど、その他はむさいだろうね。
'54時点でここまで戦国時代をリアルに再現して、時代検証も苦労したことだろう。
三船のダイナミックな野性味あふれる活気ある演技に魅了された。
武士の無用なプライド、百姓の最低層の暮らし。同様に貧しい商人は、百姓より一応身分は上。
同情しつつもあざ笑う、それぞれの階級がハッキリ伝わってくる。
次々と7人が揃っていくいきさつ、村の地理を利用して野武士から守る計画をたてるまでのストーリーも面白い。

「百姓はずる賢い。でも、そんな風にしたのは、お前らが奴らから奪い、女を漁り、田畑を踏み潰してきたからだ、チクショー」
「人を守れる者は自分も守れる。人も守れない者は、自らも滅ぼす。今日から心するように」
「男のくせに花など摘んで」て自分も花枝を持ってるシーンも笑う。ちゃんと笑いのツボも分かってるよね。

<後編>
「また生き残ってしまった。また負け戦だった。勝ったのは百姓で私たちではない」
侍同士を共倒れにさせたという皮肉ながらもどこか爽快なラストがイイ。

死ぬ覚悟で離れの水車に残った長老を連れ戻しに戻った夫婦と子どもの様子を見に行ったFは、
子どもが助かり皆殺しにされたと知って、子どもを泣きながら抱きしめ、「俺も同じだった!」と素性を明かす。
侍に両親を殺され、復讐からか、同じ運命を嫌ってか、自らも侍の道を選んだが、
百姓の心を忘れきれず、両方に引き裂かれていた男の複雑なキャラクターを三船が見事に体現。

村男の妻が野武士に遊ばれ、火がついた家で叫ぶのをやめるシーンも強烈。
夫に不意に再会し、復縁よりプライドを守って火に身を投じるという悲惨なドラマも見所。
天才侍も飛び火には勝てない。戦争の歴史において、銃がより簡単に大量虐殺することに貢献したことがよく分かる。
戦がどれほど無意味で非生産的かということに比べ、農民たちは虐げられながらも高いプライドがあり、
ユーモラスでマヌケなうわべの下に、したたかで強い生命力があって驚いたと同時に嬉しい気がした。
追。後半、なぜ三船はつねにお尻丸出し状態なんだろう??w


『魔界世紀ハリウッド』(1994)
監督:ポール・シュレイダー 出演:デニス・ホッパー、ジュリアン・サンド ほか
荒唐無稽ではあるけど、ハリウッドなら違和感ない。
実際、映画のマジックで今作もまるで現実のように描かれているし、
私たちの目もだんだんそれに慣れてきちゃって、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなってる。


『羅生門』(1950)
 
監督:黒澤明 出演:三船敏郎、森雅之、京マチ子、志村喬、千秋実、加東大介 ほか
今年の年末WOWOWは黒澤シリーズ。ビデオもひと通りそろって海外向けのタイトルまでついて、
原題のローマ字表記でそのまま使っているのはカッコいい。
どの作品も確かに名作。ヒッチコックら他の巨匠に劣らない。
淀川さん他の世代の映画関係者も神と崇めた気持ちが分かる。

1つの殺人事件が真相とは別に、それぞれの関係者の勝手な言い分で複雑化し、どれが本当か分からなくなる。
貧困からくる悪心か? 人が生まれながらに持つといわれる原罪か?
でも、そこにはかすかに良心と情もあることに救いがあるのだと思う。


『アステロイド』(1997)
監督:ブラッドフォード・メイ 出演:マイケル・ビーン、アナベラ・シオラ ほか
本当に見分けがつかない世紀末パニックムーヴィたちだが、それぞれ高収益のヒットになっているのは、
やはり人々の間に徐々に現実問題としての危機感が差し迫ってる表れか?
リアルなパニック映画をたくさん観れば、対策やイメージトレーニングできるかも!?
とりあえず地下シェルターが欲しいぞ。M.ビーンは久々見た。

いつでもヘリを調達できるって、持つべきものは権力あるBFってとこか?
一般市民のAは命はって家族より他人を優先してるのに、パニックで子どもを失った父に撃たれた救助隊員も悲劇。
銃社会のアメリカなら充分起こりうる。災害よりも、いつでも人を殺せる銃などによる人災のほうが怖い。
こーゆー時ってやっぱ女だけじゃ乗り切れないものなのかな?
ここでも主人公は常にアメリカ。まるでアメリカから引力が出ているように全部の隕石がアメリカめがけて落ちてゆくシーンはスゴイ。
ぜひ今作を参考にして隕石本体も破片も落ちてこないように今から備えといてほしい。


『白痴』(1951)

原作:ドストエフスキー 監督:黒澤明
出演:三船敏郎、森雅之、原節子、久我美子、志村喬、東山千栄子、村瀬幸子、千石規子、柳永二郎 ほか

<第1部 愛と苦悩>
「皮肉だが、この世で真に善良であることは白痴に等しい」

なんだか最初から狐につままれたようなフシギな感じ。原作の長い前章でもカットしたのか、
それぞれ主要人物の重要なはずのそれまでのいきさつが描かれないままドラマはどんどん深刻なことになってゆく。
それでまた引きこまれているのかもしれない。

現代劇になるとちょっと様子が違う。でも、この頃の俳優って今よりずっと雲の上の存在でオーラが上品で違う。
噂に聞いていた原節子もE.バーグマンやG.ガルボに負けない艶っぽい美しさ。
皆、表情1つの動きで全てを語れる大物役者ばかり。これが欧米映画ならどうなるだろうと想像してみる。
原作本も気になる。まずは後半観てから。

<第2部 恋と憎悪>
「私たちのほうが白痴なのかもしれない」

ワンクッション置かないと、かなり重いテーマで受け留められるようになるまで容易じゃない。
亀田がまるで占い師か超能力者のように人の心を読み、未来を読むのがフシギ。
一切の欲を捨て、第三の眼でも開いたのか? 結局彼は男の友情を選んだ。死刑を迎えた時、
「なぜ皆にもっと優しくしてやれなかったのか、もし助かったらそうしてあげたい」と言っていた。
彼にとっては最高の幸福だったかもしれない。

白痴=知能がひどく劣っていること。今でいう精神薄弱者のことか?
人の脳はあまり強烈なストレス(恐怖、ショック)に耐えられなくなるとストップしてしまうらしい。
それでこれほどピュアで正直になれるなら、知能はあまり身に着けないほうがいいいようだ。

「ドフトエフスキーは真に純粋な男を描きたかった」
と冒頭のテロップに流れた。私は男が正直なゆえに悲劇に見舞われた話というより、
悲劇によって正直になった男が幸福になった話ととらえたい。

今や黒澤ファミリーとでも言えるおなじみのメンバーによって、これほど違った様々なドラマを観れるのは実に有意義。
男女の愛憎、哲学。世界の名作をシンプルながら劇的な脚本と映像によって再現し、思わず乗り出して観た。
抑えた演技の三船、森も、久我も昨今の俳優にないゴージャスな存在感と演技。


『エンド・オブ・バイオレンス』(1997)

監督:ヴィム・ヴェンダース 出演:ビル・プルマン、アンディ・マクドウェル、ガブリエル・バーン、フレデリック・フォレスト ほか
ヴェンダースが映画の街ハリウッドを舞台に映画プロデューサーの話を撮った。「いかにもハリウッドだ」がキーになるセリフ。
ちょっとブレた緑色の映像は前作『The end of the world』(タイトルも似てる)を思い出させる。
日常にあふれる暴力をひと通り描いて、ラスト静かな海にすべて沈めた、静かで穏やかな感動が広がる。
音楽はトム・ウェイツ他多才。キャストも豪華。

「敵は突然襲ってくると思っていた時、敵は僕自身だった。今、敵ができるとフシギなほど僕は解放された」

時々出てくるグループセラピーみたいなのが学芸会のちょっとした出し物のようで面白い。
父に毎日レイプされる話を歌のように話す女の子。

「本当は敵などいない。おかしいのはこの世の中のほうだ」

セックス、ヴァイオレンス、ガン、これでハリウッド映画は成立している。
本作にもその要素がちゃんと入っていて、ヴェンダースは「もうたくさんだ、未来にまで持ち越すのはやめよう」と終止符をうっている。


『赤ひげ』(1965)

原作:「赤ひげ診療譚」山本周五郎 監督:黒澤明
出演:三船敏郎、保本登、加山雄三、森半太夫、土屋嘉男 ほか
昔は医療技術を人情で補っていた。今は技術は日々向上しても心ない医療が目立つ。
本当に親身になって病人の気持ちになって診てくれる名医を見つけるのは難しくなってしまった。
殿様連中は食べ過ぎと運動不足で病になり、貧困者は栄養失調と苦労から心も体も病となる。
病気は暮らし、しいては時代を映す鏡にもなる。
いまだに発展途上国はこのように知識と薬が乏しく、荒れた生活環境に苦しんでいる。


『ビーン』(1997)
監督:メル・スミス 出演:ローワン・アトキンソン、ピーター・マクニール ほか
一応シリーズ中のウケのよかったギャグを使って、ビーンがアメリカで暴れまくるんだけど、なぜかフシギと笑えない。ヘンだな?
本国を舞台にしたTVシリーズは面白いのに。アトキンソン本人としてはどーなんだろ。
妙にハリウッド映画的なのがビーンらしくないんだな。普通のコメディドラマになってる。
他の俳優にまじってサイレントドタバタ風のビーンが浮いてるし、型にハマらないのが持ち味なのに、
ちゃんと職業もって生活してる姿は不似合い。こんなに笑えないなんて予想外!


『THE X-FILES THE MOVIE』(1998)(劇場にて
監督:ロブ・ボウマン 出演:デイヴィッド・ドゥカブニー、ジリアン・アンダーソン、ミッチ・ピレッジ ほか
TVシリーズを大画面で観ましたってゆーのが正直な感想。
やっぱコレはシリーズ観てるX-FILERじゃなきゃ納得できない特異な世界。
それだけTVシリーズが毎週ものにしては毎回、小道具も凝っててかなり大掛かりに質の高いつくりになってるってことなんだけど。

確かに劇場用にいくつか大掛かりな外ロケでCG合成がある。
これはスペシャルでメイキングを観ちゃったからちょっと驚きが半減。
後に復習会を開かなきゃならないくらい、時々、理解困難に陥るエピソードの時があるけど、今作もそれ。
いくつかの進展はあってもシリーズの性質上、解決する終わり方はあり得ないから、
モルダーらが必死にあがいて自問自答する姿に同情心さえ湧いてくる。

一番ひっかかるのは、なぜ蜂を通して培養などしてたのか? なおさら人類滅亡の原因になるじゃん。
UFOの中の巨大さと後に残った巨大な雪原の穴がスケールでっかくて見所。
2人を大画面でどアップで観るのがちょっとフシギな感じ。


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notes and movies(1998.11~ part4)

2013-10-29 14:21:35 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part3からのつづきで、ピンク色のノートのラスト。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『リーサル・ウェポン』(1987)
監督:リチャード・ドナー 出演:メル・ギブソン、ダニー・グローバー ほか
とことんアメリカン・テイストなノリが体に堪える。
裸で寝て、ホットドックと缶ビールを流し込んで、銃を撃ちまくる。お腹いっぱいって感じ。
兄はともかく、友だちも絶賛おススメなのよね。
世捨て人風だった『マッドマックス』以来のM.ギブソンの当たり役。
けっしてマッチョアクションスタータイプじゃない彼は、愛する者のために戦う役が似合う。
足先までドップリ刑事稼業に浸かってる2人のプロ志向な刑事アクション。

ラストは殺し屋とのもろ泥レスで決着。こんなのってアリ? 法に触れないワケ? 銃や爆発が「クール!」で済まされちゃう。
映画やドラマで暴力に慣れっこになっちゃうって、ほんとはとんでもない影響を及ぼしてるんだろうね。
ベトナム特別部隊帰りの役とあってギブソンがとにかく早く動く!
カンフーまで入って暴れまくり、殺しまくり、1人の人間の死なんて
なんでもないアクションシーンの1カットでしかないのがかえって空恐ろしい。
1作目からシリーズ化を狙ったようなドラマ仕立ての雰囲気。2作目以降もこんな調子なのかな、ひたすら?


『ポネット』(1996)

監督:ジャック・ドワイヨン 出演:ヴィクトワール・ティヴィゾル ほか
『友だちの家はどこ?』の少年が騙されて本当に困っていたのと比べて、
この子が本当に演技としてここまで演じたのなら脱帽だ。
監督が今作を始めから終わりまで子どもの中に入って、子どもの視点で撮り上げたのが見事。
信仰といろんな人の言葉で「死」と「生」を子どもながらに懸命に考え、納得するまでは、大人が見ても実に納得いく結論。
「死ぬまで楽しく生きてゆくこと」が人生そのものの目的であり、意味だと分からせてくれる。

2人の会話やキスシーンには、ドキッとする色気があるって友だちが言ってたとおり。
フランスの子はこんなにマセてるのな? 離婚家庭の子も“独身”の意味を一生懸命に考えて自分なりに納得している。
どうにせよ親って責任重大だな。子どもの全世界を支配してるんだもの。
「死んじゃいけないと約束して。大事な物を交換してお守りにしよう」というパパの提案ほか、
子どもに分かるように心を癒すふれあい、言葉が素晴らしい。

「全能の神さま、ママと話をさせてください」

愛する者の死は、誰でも信じがたく、乗り越えるのは時間もかかる苦悩。
ましてや物心ついたばかりの子どもが母を失うというショックは想像を超えるもの。
ポネットを取りまく友だちは、もっとも身近な救済者だ。
純粋に願う子の前に母の霊が現れるシーンもとても自然で感動を呼ぶ。
自分にもこんな無邪気で貴重な時代があったのかと思うと今となっては不思議。


『女優マルキーズ』(1997)

監督:ヴェラ・ベルモント 出演:ソフィー・マルソー、ロシーナ・モンデロ ほか
ソフィの映画なら大体安心してハズレなし。彼女ほど美しくバランスのとれた女優はいない。
中世の演劇は国王の権威下にあり、観客の生きた反応があり、発展途上ゆえに活気と人情に満ちていた頃、
ど田舎の1人の踊り子で売春をさせられていた娘が大女優となり、舞台で死ぬまでの半生、これ自体が立派なドラマ。
無学でも男女や人生の酸いも甘いも熟知した大人の女、役者に魅せられ命も捧げた一生は短くも完結している。
「他の男に抱かれても傷つけたくない」とまで言ったDの愛は超越している。

「役者の願いは舞台に始めから上がり、終わりに死ぬこと。不安と恐怖から逃れても舞台のほかに行く所がない。
 常に不安と恐怖に生き、死ぬしかないのよ」


『ウィンター・ゲスト』(1997)

監督:アラン・リックマン 出演:フィリダ・ロー、エマ・トンプソン ほか
今年1番感動した。この世とあの世の境のように寒くて美しくシンプルなスコットランドの冬を舞台に
寒いからこそ近い人間の心の触れ合いを、母娘、老婦人2人、少年2人、若い男女それぞれの年代を通して
長い人生いつの時代もそれぞれが抱える苦悩を、素晴らしいキャスト、脚本、映像で描きだした。
A.リックマンの初監督と思えない感動の逸品。
脚色を削ぎ落とした人間的なエマの美しさと、哀しいほどソックリな母フィリダの実際の母娘の演技は見応え充分。

「今日撮った写真はいい写真よ」「スタジオを片付けるわ。春になったら・・・」

何気ない出来事で、愛する者の死の苦悩から立ち直れる。なにかきっかけが必要だ。
「時は私の前を過ぎていってしまった。心は17のままなのに。老いた顔を見るのは嫌い」
でも、やっぱり時は過ぎてゆくものだし、私もこんな風に歳をとりたい。
その時、そばに友人か身内か、じゃなきゃ動物の温かささえあればきっと寂しさも、悩みも、死の恐怖も、
こうしてなんとか乗り越えて、次の日も生きる理由が見つけられることだろう。
懐かしい鼻歌なんか口ずさみながら。


『用心棒』(1961)

監督:黒澤明 出演:三船敏郎、仲代達矢、司葉子、山田五十鈴、加東大介、志村喬、夏木陽介、東野英治郎 ほか
やっぱおもしろいわ。時代劇といっても時代設定が昔なだけで、古さや湿っぽい邦画臭さなどどこにもない。
腕はたっても頭で勝負するやり方に推理小説でも読むように成り行きが気になる。
結局大した金もとらず、何の得にもならない町を助けてアッサリと去ってゆく侍。
こんなヒーローでダンディな侍は映画の中だけ?
豪華キャストだろうけど、なにせ昔だし、時代劇で誰が誰だか分からないのが残念。


『バディ』(1997)
監督:フランシス・F.コッポラ 出演:レネ・ルッソ, ロビー・コルトレーン, アラン・カミング ほか
「セサミストリート」で有名なジム・ヘンソンが特殊メイクスタッフ?に加わっている。
よく出来てるんだけど、やっぱ野生の動きじゃないのが気になる。
レネもぬいぐるみ相手に渾身の演技は大変だ。チンパンジー他は本物だし。

「彼らは根っからのパフォーマーである」とはいえ、彼らにも1つ1つの自由意志がある。
ヒトのために芸をさせ、ペットにし、服を着せるのは動物愛護でなく、ヒトのエゴ。
各個体に合わせた自然環境の中、自由な欲望のまま、できるだけヒトと離れて暮らすのが動物の本当の幸福なんだ
と身をもって私たちに教えてくれたこの夫人の経験に基づく今作は貴重な資料にもなりうる。
その後ゴリラの生態もより解明され、彼女とバディの過ごした日々の悦びも悲しみも役立つことだろう。

「夢は全動物の言葉を理解し、支配すること」

夫人はその後、彼を訪ねたんだろうな、おそらく何度も。もう息子のようだもの。
ヒトに飼われた動物は野生には戻れず、ムリに帰せばたちまち死んでしまう。この教訓を覚えるべきだろう。
ゴリラは見かけとは逆に繊細で静かな動物なんだ。
それにしても鍵を開けたり、ローラースケートしたり、豊富な表情で本当にヒトそっくりなチンパンジー君らの愛らしい演技には驚く。
手品を見た時の表情とか、彼らにも個人の感情があるんだ!


『蜘蛛巣城』(1957)

監督:黒澤明 出演:三船敏郎、山田五十鈴、志村喬、久保明、太刀川洋一、千秋実、三好栄子、浪花千栄子 ほか
なんと黒澤さんは洋物を原作に撮るのが好きらしい。『マクベス』はまだ観たことないが常識の通らぬ末法の戦国時代。
もののけの予言を聞いたばかりに権力にとりつかれ、あっという間に全てを失い、自らの身も滅ぼす侍の話。
耳を切り裂くような笛の音、ドロンドロンと太鼓の音も薄気味悪く、不可思議な狐につままれた気分。

予言どおり戦に負けずとも味方にやられるというなんとも悲しく可哀相な武士。自分の妻の野心のためにもともこもない。
予言さえ聞かなければ、もう少し長生きできたものを。でも「野心を抱いてこそ男子」なんて言ってる時代。
そのつもりはなくても内助の功に持ち上げられて賭けをしなきゃならない時代だったのかもしれない。


『東京物語』(1953)

監督:小津安二郎 出演:笠智衆、東山千栄子、原節子、山村、杉村春子、三宅邦子、香川京、東野英治郎、中村伸郎、大坂志郎 ほか
やっぱり今年の1番は今作でしょう。先日の『Tokyo-ga』でヴェンダースが絶賛し、国内外で認められたのも納得。
黒澤作品のダイナミックなエンタテイメント系とは対照的に、昭和の日本の1家族をじっくり撮り、
観た目以上に完璧主義者だったという映像へのこだわりは、一切ムダを省いた貴重な資料にもなる原風景と暮らしの映像。
平凡ながら「家」と「家族」の原点を描き、日本人なら心を揺さぶられずにはいられない。
今では忘れられ、これからも、もしかして戻ってはこない日本人の姿がある。
懐かしくて、哀しくて、でも、どこまでも人間味溢れた小津ワールド。
当時30代だったという笠智衆の驚きの老演技、『白痴』で見せた悪女とは全く逆の姿を見せた原と、まだ幼さが残る香川との共演。

老夫婦が、大人になった子どもたちを訪ねる、『みんな元気』を思わせる話。
夫婦は決して物見遊山が目的ではないのに、仕事と家庭をもち、経済的な余裕も、時間もなく、
心ない子どもたちのはからいにも「有難う」と頭を下げる。

経済発展途上の真っ只中、人々の心にはまだ戦後の傷痕が生々しかった。親子の会話に敬語や礼儀があった時代。
私の親が娘、青年で、祖父母らがまだ少し若かった頃を、タイムトリップして覗いているような感覚。
ここには、今は田舎にかすかに漂っているにすぎない、まだアメリカナイズされる前の秩序、格式、尊厳みたいなものが残っていた。

きっと人々はさらなる発展、便利さを求め、人や家のしがらみを拒み、見ぬフリをして、ここにあるような生活に戻ろうとはしないだろう。
このきょうだいらが面倒がっていたように、親に手紙を書いたり、なんでもない話で電話をかけたりしなくなっている。
こうして次第に離れていくんだろう。そうなることで親も寂しい反面、安心するんだろう。こうして人は何世代もつないできたんだろう。

「私らは幸せなほうだろう」「ええ、ええ、幸せなほうですよ!」と言い合う、長年連れ添った夫婦の会話が重い。
地方のアクセントが入った上品な会話の端々に大切な心が隠れている。
尾道の自然、船がゆっくりいく様子も、モノクロながら美しい。


『ミスター・ビーン』
●子守は大変
久々のお目見え。映画公開、来日は話題になったけど、かつての熱はもう冷めたか。
ブームは早いが、やっぱこっちのTVシリーズのほうが安心して笑える。
相変わらずギャグはアナーキーだけど。案外、子ども好きなのが判明。

●ミスター・ビーンの日曜大工
ビーンのクリスマスはやったから、今度は大晦日。どーせロクなもんじゃないと思ったが期待は裏切らないセコさ。
一応仕事仲間はいるのか。2人来て、もてなす。新聞での帽子作りは完璧なのに、食事を用意していないアホさ加減がスゴイ。
小枝チョコって向こうにもあるんだ! の代わりに窓から枝を切ってチョコをコーティングしたのを1本と、
シャンペンの代わりに酢に砂糖を入れたやつを自分で飲んでぶっとびそーになる などなど。


『天国と地獄』(1963)

監督:黒澤明 出演:三船敏郎、仲代達矢、香川京子、三橋達也、山崎努、名古屋章 ほか
誘拐に巻き込まれた職人気質な主人の苦悩もさることながら、面白いのは今流行りのプロファイリング。
高い検挙率を誇る日本警察の知恵と汗を合わせた捜査ぶりが順を追って全工程をじっくり見れて、
まるで一緒に犯人を追っているリアルさ。息のつまるサスペンス大作。
当時は新人で今やベテランの俳優陣が豪華。

物的証拠がなきゃ逮捕できない、死刑も稀な日本だとここまでしなきゃダメなのね。
逮捕後の結末がちょっと唐突だが、犯行動機が意外にもシンプルで、
理由もハッキリしない残酷な現代の犯罪と比べると、まだ筋は通っている。


『夜半歌謦』(1995)

監督:ロニー・ユー 出演:レスリー・チャン、ン・シンリン ほか
いまやベテラン大スターのレスリー主演作はいいものばかり。
今作もあの有名な『オペラ座の怪人』を基にしているという触れ込みなしでも充分アレンジが効いてて、
まるで実話のように物語りが出来上がっている。

セット、美術も素晴らしく、舞台となる劇場の壮麗な造りに目を奪われる。お金かかってそう!
ところで人の皮膚って硫酸かけられたらほんとはどうなるの? アメリカ映画みたいに骸骨になっちゃうのか?
レスリーのように甘いマスクは、そのまま表面だけ波形フレディ状態になるのか、これは演出の違い。

こういうロミジュリ系のロマンスに女性は弱い。またレスリーがこういうのにハマってるし。
得意の歌声も披露して、観客は2度美味しいv
今作で他に特筆すべきは、菅野美穂似の奉公娘。身を捧げて主人に尽くして世話をし、
足を折られてひきずってついて歩くシーンにも熱が入ってる好演ぶり。


『虎の尾を踏む男達』(1945)

監督:黒澤明 出演:大河内傳次郎、藤田進、榎本健一、森雅之、志村喬、河野秋武 ほか
黒澤映画にはこんな短編もあるんだな。三船さんがいないのが華に欠けるが、
注目すべきは私が秘かに探してた『白痴』で名演技だった森さんの出演作。
しかも時代劇で脇役。メイクも衣装も喋り口調も変えてるから同じ姿はない。

もう1人、エノケンってこの人なんだ。笑いに命を賭けてたかなり破天荒な人だったらしいけど、よく知らない。
すごい表情豊かな楽しい道化役で、今作の要。盛り上げて、影で支えている。

この時代、TVなんてなかったけど、歌や踊りなどのエンタテイメントには、この通りことかかずに、
侍や百姓らもけっこうハイソな精神と知識を備えていたのかも。
作り方が歌舞伎調。リーダー役の男の顔のメイクや喋りもそんな感じ。



【読書感想メモ】
「ノストラダムスの遺言」高橋良典著
1897年 第一の封印が解かれる。
1999年 第六の封印、
2019年 第七の封印、
2020年ハルマゲドンを迎え、その後は至福の7000年期(弥勒の世)がある。
「日本は'98、'99までに沈没する」エドガー・ケイシー(外れてよかったね

「パンダのan an」小泉今日子著


【イベントメモ】
「ランドマークタワー」@桜木町
「ナンジャタウン」@池袋
アウトレット、中華街@横浜
都庁、アイマックスシアター@新宿

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