■『21世紀の平和を考えるシリーズ5 エイズ』(ポプラ社)
大貫美佐子/監修 高橋央、広田眞美/文
【内容抜粋メモ】
世界では、毎日約1万4000人があらたにHIVに感染しているといわれる。
6000人が15~24歳、2000人が15歳未満。
エイズが原因で孤児になる「エイズ孤児」は、世界で1000万人以上。
あらたに感染する人の約半分が女性と子どもで、子どもの大部分は母子感染。
HIVの感染は、教育と深くかかわっている。
●エイズとは?
HIVウイルス/HIVウイルスに感染した人のリンパ球
ウイルスが発見されたのは1983年。
感染直後は、風邪で熱が出たような症状になり、その後、大きな症状がないまま何年か過ぎる。
HIVはとくに血液中のリンパ球に入って増える。
リンパ球が壊されると、発熱、下痢、さまざまな感染症に簡単にかかって、とくに肺炎、結核などにかかると死亡しやすい。
エイズになるまでにはHIVに感染してから数年以上かかる。
なにも治療しないと10年で約半分がエイズを発病するといわれる。
●感染経路
・セックスによる感染
避妊具を正しく使えば確率は下がる。ピルでは性行為感染症の予防はできない。
・血液
感染者の血液を輸血したり、感染者の血液でつくった血液製剤を注射する。
麻薬を注射器で回して使う。
・母子感染
感染者の女性のおなかに赤ちゃんがいる時、お産の時、血液を通して感染する。
または母乳を通して感染する。粉ミルクが買えない、清潔な水や容器が手に入らないなどで子どもが亡くなる。
<これは感染しない>
握手、咳、くしゃみ、汗、トイレ、お風呂、プール、蚊、動物など。
●世界の感染者数
HIV感染者の地域分布
UNAIDS(国連合同AIDS計画)によると、HIV感染者数は推定4000万人。(2001年)
1日あたり1万3700人。ほぼ6秒に1人の割合。
日本では、男性同士のセックスによる感染が急激に増えている。
ジンバブエでは、5歳以下の子どもの死亡者70%がエイズによるもの。
●アフリカに多い理由
アフリカ諸国に全体の70%(2810万人)が集中している。
・避妊具が使われないことで、HIV、梅毒、ヘルペスなどにかかりやすい。
・マラリア、肝炎の感染症の原因となる微生物にさらされる機会が多い。
・一夫多妻制のため、感染者が広がりやすい。
・貧困による売春、病気になってもきちんとした治療が受けられず亡くなる。
・栄養不良により抵抗力が弱い。
・充分な教育が受けられず、交通・通信手段も発達していないため、エイズについての情報が伝わらない。
●若い層に感染者数が多い
主な感染経路はセックスと麻薬の注射器の回し打ち。
若い人は「自分はかからない」と楽観的にとらえやすく、せっかく予防方法を知っていても実行しない場合も多い。
●HIV検査
感染しているかどうかは、HIV検査で調べなければ分からない。
「血液検査」は、まずざっと調べる「スクリーニング検査」が行われる。
それで陽性かもしれないと判定された血液には「確定検査」が行われる。
HIV検査には「カウンセリング」がついている。
治療法も年々進歩しているため、早期発見・早期治療、生活習慣の工夫で、エイズが発病するまでの期間を延ばすことができる。
●日本の相談窓口
・エイズ予防財団
・JFAP エイズサポートライン
●エイズが及ぼす影響
・エイズ孤児でストリートチルドレンに
両親をエイズで亡くした姉妹。妹の世話をしながら宿題をする姉。
両親がエイズで働けなくなり、子どもたちは学校を途中でやめて働かざるをえなくなる。
・学校の教師にも感染者が多いため、授業が進まず、教育の質が落ちる。
・新しく人を雇う時に強制的にHIV検査をさせ、感染者を雇わない、解雇する経営者もいる。
・働き手が減り、農産物の生産量が減り、栄養不良、餓死にいたる、暴動、略奪につながるなどの悪循環になる。
・医者にかかりたくても、遠い道を何時間も歩かなくてはならない。
感染しないためには予防することがいちばん重要。また、ほかの国からの強力な援助が必要。
●女性の地位とエイズ問題
女性が男性より地位が低い国に、女性のHIV感染者、エイズ患者が多い。
年上の男性が若い女性に避妊具を使わないセックスを強要し、複数と性交渉している状況にNOと言えない現状がある。
女の子は学校に行けず、小さい時から家の手伝いをさせられたり、12~13歳で結婚させられるため、
HIVの知識を持たない女性が多い。
******************************HIV感染者を減らす取り組み
人々の意識を変える重要なカギは「教育」。
ザンビアでの保険教育のようす。HIVについて正確な知識をもつことが最大の予防方法。
「世界エイズデー」
毎年12月1日。WHOがエイズの広がりの防止、患者・感染者への差別・偏見の解消を目的につくった。
●抗HIV薬の開発
今では何種類も開発されて、HIVに感染してもエイズを発病しない人が増えてきた。
感染者は、多くの種類の薬をずっと飲み続けなければならず、苦痛を伴い、お金もかかる。
タンザニアのエイズ孤児が、女性カウンセラーに薬の提供を受けているようす
HIV感染者は、病気と闘うことより、周囲の差別のほうがずっと辛いと言う。
●国際協力活動~国際医療ボランティアAMDAの例
ケニアのスラムでは、仕事が少なく、医療設備の不足など多くの問題があり、毎日700人がエイズで亡くなっている。
予防教育、HIV検査、感染者への無料診療、家族計画や栄養学まで幅広い教育などの活動をしている。
カウンセリングでは、安定した精神状態での生活、免疫力を高める食事と薬、清潔な住環境などが大切だと説明している。
ケニアの子どもたちに人形劇でエイズ予防教育を行っているようす。子どもの頃からの教育が偏見をなくす。
●日本の現状
日本では、20歳代の男性が多い。また、若い人の間で性感染症の感染率が高く、10代の妊娠中絶も増加している。
HIV感染者とエイズ患者の報告数の変化
HIV感染者とエイズ患者の年齢別人数
保健所では相談にのったり、休日や夜間も無料でHIV検査を実施している。
「東京都エイズ・ピア・エデュケーション事業」
●薬害エイズ
川田龍平さんは、血友病患者で、実名を公表してHIV訴訟の原告になった。
治療に使用した血液製剤により、多くの血友病患者がHIVに感染した。
厚生省と製薬企業は、血液製剤が危険だと知りつつ、患者の命より企業利益を優先して販売をつづけた結果、
血友病患者5000人のうち約40%の2000人が感染。その半数は18歳未満。
フォト・ジャーナリストの広河隆一さん著「日本のエイズ」を読んで衝撃を受けた。
友だちから「今までどおりつきあうよ。同情しない」と言われた言葉が嬉しかったという。
1994年、国際エイズ会議が横浜で開かれ、海外の被害者が実名で堂々と訴えているのを見て感銘を受けた。
裁判で初めて国や企業の加害責任を認めさせることができたが、そこに謝罪の文字はなかった。
患者の命より企業利益を優先する官僚、企業、政治家、学者の癒着があるかぎり、薬害はなくならない。
エイズだけでなく、ハンセン病、障害者、同性愛者、、アイヌ、沖縄、外国人、女性に対する差別も同様。
●人権に関する国際法規
・「世界保健機関憲章(WHO憲章)」
・「子どもの権利条約」
●HIV/エイズに関するコミットメント宣言
・女性のエンパワーメントは脆弱性の軽減に不可欠である。
・紛争と災害はHIV/エイズの蔓延を助長する。 など
●日本で活動する団体
・国際協力事業団
・シェア=国際保健協力市民の会
・AMDA
・ジョイセフ
●個人でできることの例
・レッドリボンをつける→リボンプロジェクトジャパン
・チャリティーコンサートや写真展などに参加して理解を深める→日本ユニセフ協会
大貫美佐子/監修 高橋央、広田眞美/文
【内容抜粋メモ】
世界では、毎日約1万4000人があらたにHIVに感染しているといわれる。
6000人が15~24歳、2000人が15歳未満。
エイズが原因で孤児になる「エイズ孤児」は、世界で1000万人以上。
あらたに感染する人の約半分が女性と子どもで、子どもの大部分は母子感染。
HIVの感染は、教育と深くかかわっている。
●エイズとは?
HIVウイルス/HIVウイルスに感染した人のリンパ球
ウイルスが発見されたのは1983年。
感染直後は、風邪で熱が出たような症状になり、その後、大きな症状がないまま何年か過ぎる。
HIVはとくに血液中のリンパ球に入って増える。
リンパ球が壊されると、発熱、下痢、さまざまな感染症に簡単にかかって、とくに肺炎、結核などにかかると死亡しやすい。
エイズになるまでにはHIVに感染してから数年以上かかる。
なにも治療しないと10年で約半分がエイズを発病するといわれる。
●感染経路
・セックスによる感染
避妊具を正しく使えば確率は下がる。ピルでは性行為感染症の予防はできない。
・血液
感染者の血液を輸血したり、感染者の血液でつくった血液製剤を注射する。
麻薬を注射器で回して使う。
・母子感染
感染者の女性のおなかに赤ちゃんがいる時、お産の時、血液を通して感染する。
または母乳を通して感染する。粉ミルクが買えない、清潔な水や容器が手に入らないなどで子どもが亡くなる。
<これは感染しない>
握手、咳、くしゃみ、汗、トイレ、お風呂、プール、蚊、動物など。
●世界の感染者数
HIV感染者の地域分布
UNAIDS(国連合同AIDS計画)によると、HIV感染者数は推定4000万人。(2001年)
1日あたり1万3700人。ほぼ6秒に1人の割合。
日本では、男性同士のセックスによる感染が急激に増えている。
ジンバブエでは、5歳以下の子どもの死亡者70%がエイズによるもの。
●アフリカに多い理由
アフリカ諸国に全体の70%(2810万人)が集中している。
・避妊具が使われないことで、HIV、梅毒、ヘルペスなどにかかりやすい。
・マラリア、肝炎の感染症の原因となる微生物にさらされる機会が多い。
・一夫多妻制のため、感染者が広がりやすい。
・貧困による売春、病気になってもきちんとした治療が受けられず亡くなる。
・栄養不良により抵抗力が弱い。
・充分な教育が受けられず、交通・通信手段も発達していないため、エイズについての情報が伝わらない。
●若い層に感染者数が多い
主な感染経路はセックスと麻薬の注射器の回し打ち。
若い人は「自分はかからない」と楽観的にとらえやすく、せっかく予防方法を知っていても実行しない場合も多い。
●HIV検査
感染しているかどうかは、HIV検査で調べなければ分からない。
「血液検査」は、まずざっと調べる「スクリーニング検査」が行われる。
それで陽性かもしれないと判定された血液には「確定検査」が行われる。
HIV検査には「カウンセリング」がついている。
治療法も年々進歩しているため、早期発見・早期治療、生活習慣の工夫で、エイズが発病するまでの期間を延ばすことができる。
●日本の相談窓口
・エイズ予防財団
・JFAP エイズサポートライン
●エイズが及ぼす影響
・エイズ孤児でストリートチルドレンに
両親をエイズで亡くした姉妹。妹の世話をしながら宿題をする姉。
両親がエイズで働けなくなり、子どもたちは学校を途中でやめて働かざるをえなくなる。
・学校の教師にも感染者が多いため、授業が進まず、教育の質が落ちる。
・新しく人を雇う時に強制的にHIV検査をさせ、感染者を雇わない、解雇する経営者もいる。
・働き手が減り、農産物の生産量が減り、栄養不良、餓死にいたる、暴動、略奪につながるなどの悪循環になる。
・医者にかかりたくても、遠い道を何時間も歩かなくてはならない。
感染しないためには予防することがいちばん重要。また、ほかの国からの強力な援助が必要。
●女性の地位とエイズ問題
女性が男性より地位が低い国に、女性のHIV感染者、エイズ患者が多い。
年上の男性が若い女性に避妊具を使わないセックスを強要し、複数と性交渉している状況にNOと言えない現状がある。
女の子は学校に行けず、小さい時から家の手伝いをさせられたり、12~13歳で結婚させられるため、
HIVの知識を持たない女性が多い。
******************************HIV感染者を減らす取り組み
人々の意識を変える重要なカギは「教育」。
ザンビアでの保険教育のようす。HIVについて正確な知識をもつことが最大の予防方法。
「世界エイズデー」
毎年12月1日。WHOがエイズの広がりの防止、患者・感染者への差別・偏見の解消を目的につくった。
●抗HIV薬の開発
今では何種類も開発されて、HIVに感染してもエイズを発病しない人が増えてきた。
感染者は、多くの種類の薬をずっと飲み続けなければならず、苦痛を伴い、お金もかかる。
タンザニアのエイズ孤児が、女性カウンセラーに薬の提供を受けているようす
HIV感染者は、病気と闘うことより、周囲の差別のほうがずっと辛いと言う。
●国際協力活動~国際医療ボランティアAMDAの例
ケニアのスラムでは、仕事が少なく、医療設備の不足など多くの問題があり、毎日700人がエイズで亡くなっている。
予防教育、HIV検査、感染者への無料診療、家族計画や栄養学まで幅広い教育などの活動をしている。
カウンセリングでは、安定した精神状態での生活、免疫力を高める食事と薬、清潔な住環境などが大切だと説明している。
ケニアの子どもたちに人形劇でエイズ予防教育を行っているようす。子どもの頃からの教育が偏見をなくす。
●日本の現状
日本では、20歳代の男性が多い。また、若い人の間で性感染症の感染率が高く、10代の妊娠中絶も増加している。
HIV感染者とエイズ患者の報告数の変化
HIV感染者とエイズ患者の年齢別人数
保健所では相談にのったり、休日や夜間も無料でHIV検査を実施している。
「東京都エイズ・ピア・エデュケーション事業」
●薬害エイズ
川田龍平さんは、血友病患者で、実名を公表してHIV訴訟の原告になった。
治療に使用した血液製剤により、多くの血友病患者がHIVに感染した。
厚生省と製薬企業は、血液製剤が危険だと知りつつ、患者の命より企業利益を優先して販売をつづけた結果、
血友病患者5000人のうち約40%の2000人が感染。その半数は18歳未満。
フォト・ジャーナリストの広河隆一さん著「日本のエイズ」を読んで衝撃を受けた。
友だちから「今までどおりつきあうよ。同情しない」と言われた言葉が嬉しかったという。
1994年、国際エイズ会議が横浜で開かれ、海外の被害者が実名で堂々と訴えているのを見て感銘を受けた。
裁判で初めて国や企業の加害責任を認めさせることができたが、そこに謝罪の文字はなかった。
患者の命より企業利益を優先する官僚、企業、政治家、学者の癒着があるかぎり、薬害はなくならない。
エイズだけでなく、ハンセン病、障害者、同性愛者、、アイヌ、沖縄、外国人、女性に対する差別も同様。
●人権に関する国際法規
・「世界保健機関憲章(WHO憲章)」
・「子どもの権利条約」
●HIV/エイズに関するコミットメント宣言
・女性のエンパワーメントは脆弱性の軽減に不可欠である。
・紛争と災害はHIV/エイズの蔓延を助長する。 など
●日本で活動する団体
・国際協力事業団
・シェア=国際保健協力市民の会
・AMDA
・ジョイセフ
●個人でできることの例
・レッドリボンをつける→リボンプロジェクトジャパン
・チャリティーコンサートや写真展などに参加して理解を深める→日本ユニセフ協会